女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

115話 19歳の記念すべき日に



 あれから、俺達の部屋に転移者達が来るようになった。
 皆でテーブルを囲むように座って話す。


「2人はどうやって出会ったんですか!?」
「学園でたまたまかな」
「お互いにどのくらい愛してるんですか?」
「俺は何度生まれ変わっても愛し続けるつもりだ」
「「きゃーっ!!」」


 こんな感じで、俺とリグの話を聞きに来たりする。
 話している時は楽しいから眠気なんていうのが気にならない。ただたまに気分が悪くなったり、頭痛がする事がある。


「クロアさん、初体験はどんな感じでした?」
「えっ!? い、いや男の子達がいるからダメだよ……」
「お願い! 女子にだけでいいから!」
「う、うぅん……」
「ほらほら、後でこっそりクロアの反応を詳しく聞かせてやるから、今はやめとけ」
「「やったぁ!」」
「本人の前で言ったらこっそりって言わないだろ……」


 気分が悪いから良いツッコミが出来ないけど、リグは笑って謝った。


 転移者達には、俺とリグが元日本人という事は伝えていない。その為、日本について色んな話を聞く。
 どうやら、俺が日本にいた頃からかなり時代が進んでいるらしく、地震に備えてシェルター大きなシェルターだったり頑丈な家の建設が進んできているらしい。


 他にも、フルダイブ型VRバーチャルリアリティゲーム。コンタクトレンズ型のモニター。埋め込み型でBluetoothの搭載されたイヤホンがある。


 ただ俺達はゲームやモニター、イヤホンなんて全く知らない設定なので、1から長々と話してくれる。
 これでクラウディアに伝えれば、作ってくれそうだな。


「ほらお前ら、もうすぐ訓練が始まる時間だ。行くぞ」
「「はい」」
「クロア、ちゃんと休めよ」
「うん。皆訓練頑張って」
「頑張る!」
「俺も!」
「っしゃあ! 負けねぇぞ!」


 男子達が気合を入れて部屋から出て言った。


「……ふぅ……」


 解放されて一気に疲れがやってきた俺は、その場に横になって寝ることにした。


「キュー」
『風邪ひきますよ?』
「んん大丈夫……休ませて」
「キュッ」
『布団掛けます』


 アノスが布団を俺にかけてくれたので、そのまま眠りについた。


ーーーーー


ーーーーー


 そんな毎日が続いて、お腹もかなり膨れてきた。


「あっ、蹴った」
「私の方も動いてる〜!」


 俺とソフィはお腹の中にいる子供が動く度に、興奮して笑ったりしている。
 この生活が始まってから変わったことといえば、胸が少し膨らんで腰骨も大きくなってきている事。他には、寝ている時に聞こえる鳥の音なんかを気にする程余裕が出てきた。


「最近ワタルは何してるんだ?」
「えっとね〜……人助けして国からお金もらってるって」
「じゃあリグ、お前も金稼がないとな」
「うっ……頑張るか」


 横で一緒に寝ているリグを見ると、苦しそうな顔をしていた。
 俺の子供が今お腹の中にいるって考えると、不思議と愛着が湧いてきた。


「私の誕生日が来る前には仕事探してもらおうか」
「そうか、もうすぐだな」


 俺ももうすぐで19歳。大人になって色んな事を経験したけど、まだ人生はこれからだ。子供が産まれたら、俺とリグで育てながら金を稼がないといけない。
 親にはベリアストロが報告してくれたようだ。


「なんか最近で一気に周り変わったよな」
「リグがそんな事言うなんて珍しい」
「周りの人が皆強すぎてさ、俺なんかがクロアと一緒にいていいのかって考えるんだ」


 周りの人が強いと言っても、俺が一番頼りにしてるのはリグだしな。強さなんて関係なく、俺はリグが好きなんだし。


「私と一緒に居られるのはリグの特権だろ?」
「……いつからそんなに可愛い事言えるようになったんだ?」
「は? 別に可愛くないし。私は私だから、何も変わってない」
「はいはい。女らしくない奴だよお前は」
「ありがとう、男らしくないリグ。おやすみ」


 こういうのを痴話喧嘩っていうのだろうか。俺の人生で初めての痴話喧嘩、喧嘩なのにこんなにも幸せを感じられるなんて不思議な物だな。


『クロア〜明日誕生日だね〜おめでとう』
『今言わなくていい……おやすみ』


ーーーーー


ーーーーー


 次の日の朝、サタナが言っていた通り誕生日がやってきた。


「クロアさん19歳おめでとう」
「「おめでとう」」


 ベリアストロとリグとソフィが祝ってくれて、アノスは頭の上で羽ばたいている。


「ありがとう。リグ、プレゼントは?」
「そういうと思って……」


 冗談で言ったつもりだったのだが、本当にプレゼントを用意していたようだ。


「はい。結婚指輪」
「えっ……結婚……もう?」
「ああ、子供が産まれる前に結婚しよう。今日、ここで式を挙げる」
「……マジ?」


 あまりの衝撃に目眩がしてきた。


「……」バタッ


 と思ったら、目の前が真っ白になって気を失ってしまった。


「驚きすぎじゃないかしらね……」
「ははは、この日の為にこっそり稼いでたんだ。クロア起きろ」
「いいわよ寝させときましょう。急ぐことはないわ」


ーーーーー


ーーーーー


 ベッドの上で目を覚ました俺が見たのは、白いティアラを持って黒いタキシードを着ているリグ。
 そして、部屋の真ん中に大きなケーキ。それを囲むようにベリアストロ、クラウディア、ソフィ、レヴィ、転移者、その他大勢の知り合いが集まっていた。


「クロア!」
「おめでとうっ!」
「お、お父さんお母さん……」


 ミリスとバルジが隣にいた。


「眠そうな顔してるところ悪いけど、起きて」


 どうやら俺が寝ている間に式の準備が完了していて、俺が起きた瞬間に式が始まったようだ。

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