女嫌いの俺が女に転生した件。
110話 イザナミの仕事をお手伝い
夜になり、俺とレヴィはローブを着て城まで向かった。
この時間帯まで、街の中は兵士達が歩いていたりする。なるべく見つからないように城門まで着くと、ケイがいた。
「誰だ」
「私たちです」
「……驚かせないでください」
ローブで顔を隠したまま近づいたから驚いちゃったみたいだ。まあケイは戦力的に弱そうだし、襲われたら逃げ道が無いもんな。
「馬車は大丈夫?」
「はい。マローン様も既に寝ているので、後は馬車を国の外まで運ぶだけです」
それが1番大変そうだな。
「とりあえず馬車の所に行きましょう」
「ケイは馬車操縦できるの〜?」
「出来ますよ」
ケイに操縦してもらって、俺達は後ろの荷物の方に隠れてた方が良いだろう。
馬車の元までやってくると、こちらに気づいた馬が立ち上がった。
「では、二人共後ろに乗ってください」
荷物などを入れる場所。カーテン状の布に囲まれていて、周りからは見えない。
「わぁ〜! 狭い空間ドキドキする!」
「荷物は隅の方に置いた方が良いな。どこに座る?」
「クロアちゃんの横」
「じゃあ荷物の横に座ろう」
座り心地は悪いが、しっかりと馬車を持って帰らないといけない為仕方のない事だ。我慢するしかない。
「二人共準備は出来ましたか?」
前の布から顔を出したケイさん。
「はい、大丈夫です」
「では出発します」
馬車が動き出し城の外へ出ていく。
国を出た後はレヴィと交代で休憩しながら進んだ方が良さそうだ。
しばらく進んでいると、突然馬車が止まった。
「マローン様の執事のケイでございます。重要な荷物が入っているので、少しでも早く届かなければならないのですが」
「そ、そうでしたか。分かりました」
そんな会話から少しして、ミシミシと音がしだした。どうやら無事に国の外に出る門が開いたようだな。
後は俺達の国に帰るだけだ。
「レヴィ、道案内だったり途中で交代だったりしてやってくれ」
「分かった〜」
「私は寝る」
「良いな〜」
アノスを抱き抱えて、荷物を枕に横になる。この為に荷物の横に座ったんだ。
「キュ〜〜……」
『クロア様……私は今幸せです』
小さな抱き枕となっているアノスが嬉しそうに鳴き声をあげた。
「おやすみ」
「キュッ」
ーーーーー
ーーー
ー
「……」
気がつけば、あの場所に来ていた。神様の場所だ。
「ねぇ〜……助けて〜……」
イザナミが目の前で倒れている。
「どうした?」
「どうしたって……サタナキアに聞いたでしょ? イザナギ呼んでくれないなら、これくらい手伝ってよぉ〜……神様になったんでしょ〜」
神様になったからって他の神様の仕事手伝うとか面倒くさすぎる。
まあ手伝ってやらないって事は無いけど。
「はぁ……何したらいいんだ?」
「環境を整える仕事は終わったから、後は人が来る度に対応しなきゃならないの……」
「対応……? それ普通、分身とかが対応するのがテンプレじゃないのか?」
よくラノベであったよな。『私は本人ではない』みたいに言う導き者。
「神が分身なんてしたらチートだよ。それでね、今からクロアちゃんに色んな人の対応をしてもらおうと思ってるんだけど……はいこれ」
「……何これ」
渡されたのはノート1冊。
──転生者の対応の仕方
「マニュアル通りに会話すれば、その人に能力だったりの希望を答えさせる画面が出てくるから。その人に自由にさせて」
「ちょっと待て。これを私1人でしろと?」
「手伝ってもらうだけ。私も他の人の対応するからさ」
まあ……マニュアルを読んだ限りでは、単純な会話だな。
──もしもチートを求めてきたら。
──ウザい人が現れたら。
──神を誘惑してきたら。
必要なさそうなところまで、詳しく説明が書かれている。
「仕事の報酬は?」
「無いよ? お兄ちゃんに会わせてくれない代わりに頼んだ仕事だもん」
「お前…………クソだな」
タダ働きか……なんで夢の中でも働かなきゃならないんだ。
「じゃあ私は行くね!」
「あっちょっ!」
イザナミがどこかへ消えると、背後で何かが光出した。
「ぅ……ん……あれ? 俺死んだ?」
日本人だ……。
「は、初めまして」
「そうか、ここに女神がいるという事は天国に行けたんだな」
「今から貴女には新たな人生を歩んでいただきます」
全てマニュアル通りの言葉を、延々と喋り続けた。
ー
ーーー
ーーーーー
「……疲れた……」
「起きて最初の一言が疲れた、ですか」
目を覚ませば、向かい側にケイが座っていた。
「あれ、もう明るい……?」
隙間から差し込む光に気づき、外を見る。
「眩しっ……」
「もうすぐ到着するみたいです。かなりの時間眠ってましたね」
「ああうん……」
イザナミの仕事をタダ働きで手伝わされたからな。
「クロアちゃ〜ん、もうすぐ到着するよ」
「分かった」
1度背伸びをして荷物をまとめる。
「マローン様がクロア様をお好きになる理由、分かった気がします」
「え? 急にどうしたんです?」
ケイが俺を見て何か言っている。
「クロア様は不思議な魅力を持っています。とても美しい女性なのに、親しみやすい性格で信頼も出来ます。私のようにあまりガツガツと前に行けない人からすると、クロア様のような人にリードしてもらいたいですね」
「あ、クロアちゃん。ケイさん私の恋バナ聞かせたらそのまま深夜テンションで変な感じになっちゃった」
何してんだレヴィは……。
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