女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

107話 表と裏がある人



「クロアさんの彼氏さんはどのような人なんですか?」


 言わなきゃいけないのか……まあこの場にリグがいないだけマシか。


「まあ……普段はのんびり昼寝してるような人なんですけど、いざという時には頑張って頼れる男を演じてる……そんな人ですね」
「カッコいい方ですか?」


 ん〜……見た目は普通だけど、前世からの付き合いもあるしな。まあここは普通に。


「中の上くらいですね」
「失礼します。お茶をお持ちしました」


 っと、いつの間にか横にいた人物に気づかなかった。


「……あれ……?」
「……? どうかしましたか?」


 この執事の男性……何か……いや、違うか?


「……?」
「ああいえ……ありがとうございます」


 テーブルに置かれたお茶を一口。


「っ……美味しい……」
「クロア様はお味が分かる方で。この茶は妖精達の住む神聖な森で、特別に許可された茶葉を使用しておりますので、喉通りの良い茶になっております」
「へぇ〜……凄いですね」
「ありがとうございます」


 いままでこんなお茶飲んだことないぞ。これも魔力があるからこそ、ここまでの味が出るのだろう。


「もう行っていいぞ」
「はい。失礼しました」


 もう少し一緒に話せば良かったのに。マローンは冷たいな。


 ティーカップをテーブルの上に置いて、改めてマローンの方を向く。


「……それで何の話でしたっけ……」
「彼氏さんと私、見た目ではどちらが上ですか?」


 ん? そんな話してたか? まあいいや。


「見た目……」


 そこまで悩む必要はないと思うけど、リグの見た目が悪いとも言えないし……。


「比べるなら、マローンさんが上ですね」
「そうですか。良かったです」
「レヴィはリ……」
「……もうお腹いっぱいだよ……むにゃ……」


 さっきから静かに座ってるなと思ったら、寝てたのか。


「あっ、で、ではマローンさん。私達は寝てないので……これで失礼します」
「でしたら部屋をお貸ししますよ」
「良いんですか?」
「二部屋空いてますし、どうぞ」


 ありがたい……これで金を使わずに眠れる。それも城の部屋だろ? きっと寝心地もかなり良いだろう。


ーーーーー


ーーーーー


「おぉ…………」
「常に清潔に保ってありますので、好きなように寛いで良いですよ」


 レヴィは先に隣の部屋に連れていかれている。きっと今頃熟睡してるだろう。


「寝ても……良いですか?」
「どうぞ」


 うっほぉっ! なんて白くてフカフカなベッドなんだ! まるで雲の上に寝てるみたいに気持ち良い!


「ではおやすみなさい」
「おやすみなさい……」


 寝心地の良すぎるベッドのお陰で、俺は一瞬で夢の中へと入っていった。


ーーーーー


ーーー





ーーー


ーーーーー


「リグゥ…………っ! あれ、ここは……あ、そっか。城に泊めてもらってるんだったか」


 起きた瞬間に、フィットする布団の感覚があったから何だと思ったら思い出した。


「どのくらい寝たんだ……」


 疲れもすっかり取れた身体を起こして、窓の外を確認する。
 まだ太陽は真上くらい。つまり昼だ。


 ボサボサの寝癖を整えてしばらく窓の外を眺めていると、部屋のすぐ外から音がした。


「……? あ、マローンさん」
「もしかして起こしてしまいました?」


 振り返ると、ちょうど部屋に入ってきたマローンさんがいた。


「いえ、今起きたところです」


 身体をマローンさんの方に向けて、ベッドの横に座る。


「まだ寝ててもいいですよ」
「いえ、マローンさんが部屋に来てるのに寝てるなんて失礼ですよ」


 それに、このベッドのお陰で眠気も全て取れたからな。


「そうですか。では、座ってもいいですか?」
「どうぞ」


 マローンさんが俺の横に座ってきた。
 良い匂いがするな。香水だろうか……不思議な香りだ。


「クロアさんは悪魔に致命傷を与えたと聞きましたが、それほど強いのですか?」
「ん〜……まあ強いというか……私自身は強くないんですよ」


 俺自身は技術も無いし、そもそも力もない。力は魔力で補えるかもしれないが、技術でいえばサタナに頼るしかない。


「周りの皆がフォローしてくれてお陰で、私に役が回ってくるだけです」
「そうですか。周りに皆が居るという事は、それだけクロアさんが信用出来るということでしょうね」
「あはは……ですかね……」


 あれ……なんかまた眠くなってきたか?
 良い香りも合わさって、頭がボーッとしてきた……それに身体が熱い……。


「あの……マローンさん……なんか身体の調子が……」
「……どうやら効きやすい方みたいですね」
「どういう事……ですか?」


 マローンさんが、俺の肩をゆっくりと押してベッドに寝かされた。


「気づきました? この香りには、女性の性欲を一時的に高める効果があるんです。ついでに、全身の感度も高くなります」
「……え……?」
『クロア、こいつクロアの事犯そうとしてるよ』


 犯そうと……?


「もしも抵抗したりしたら……君を犯罪者に仕立てあげる。ここは城の中、逃げることはできないよ……?」
「……はい……」


 頭がホワホワして気持ち良い……。そしてマローンの声が聞こえる度に耳が気持ち良い。喋るだけで耳が犯される。


「その返事は、私に身体を許したという事ですね……?」
「…ぁ………え? ……」
「どうやら薬が効きすぎて馬鹿になったみたいだ。悪魔に致命傷を与えるほどの女性が、こんなに弱るなんて……興奮してきた」
『僕も……何も考えれなくなってきた…………アノス……起きろ……』


 クロアの身体の中にいるサタナキアも、クロアの感覚を共有している為に何も出来なくなっている。


「んっ……」
「良い筋肉をしているね……腕も……脚……もっ!」
「ぁんっ……はっ……」


 太股を撫でられただけで、まるで全身が性感帯になったかのように快感が走る。
 マローンの息が当たるだけで、くすぐったい。


「私は父に婚約者を作れと言われているんだ。ここで君とすれば、将来結婚する未来は確定する」
「けっ……こん……?」
「そうだよ。前の彼氏なんて忘れて、私と付き合おう」
「あんっ……痛っ……」


 マローンは、クロアの胸を服の上から揉んだ。乱暴に、握るように。


「そうだよ……その顔……苦痛に歪む顔……強い女騎士が苦しむ姿……」
「あぁんっ…んっ」
「服が邪魔だ……少しずつ脱がしていこうか……」


 着ている服を脱がせ、下着も剥いだ。
 クロアは、鍛えられた上半身を全てさらけ出した。


「良いね……」


──ガチャッ
「マローン様、父上がお呼びです」
「……タイミングを考えろ……」
「ぁ…………は……」


 ベッドの上で軽く痙攣を起こしているクロアを置いて、マローンは部屋から出ていった。


「クロア様、気を確かに」
「……うっ……けほっ……あ、あれ? あれ!? な、なんで!?」


 執事に、口元に白いハンカチを当てられて意識が覚醒した。


「ちょっ!?」


 咄嗟に布団で身体を隠す。
 やっべぇっ!? 謎の香りで危うくリグ以外に犯されるところだった! というか、執事がまだいるんだし安全じゃない!


「大丈夫です。先ほどマローン様に伝えた事は嘘ですので、今の内に逃げてください」
「え……?」
「逃げたらこの場所に来てください」


 紙を渡された。


「えっと……」
「服、着せましょうか?」
「い、いえ! 自分で着ますっ!」
「着替えたら隣の部屋にいるレヴィアタン様を連れて逃げてください。失礼します」


 執事はそのまま部屋から出ていった。


「何なんだ……?」


 っと、こうしちゃいられない。あの優しそうな王子の裏側を見てしまった以上、マローンが帰ってくる前に逃げなければ!
 すぐに脱がされた下着と服を着て、寝ているアノスを片手に隣の部屋のレヴィを起こす。


「レヴィ! レヴィ!」
「ん〜? おかわり……?」
「起きて! 逃げるよ!」
「にげ……逃げる?」
『サタナ、とりあえず遠くに転移してくれ』
『了解』


 寝ているレヴィも無理矢理転移させた。


「うぇーっ!? 何?」
「とりあえず、近くの宿に。話はそれから」


 レヴィと一緒に、近くの宿屋へと駆け込んだ。

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