女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

100話 危険な契約



結局、クラウディアの部屋に俺とリグとソフィとベリアストロ全員がやってきた。


「わぁ広い!」
「はしゃがない」


 俺がソフィの肩を抑えていると、リグが話しかけてきた。


「アーガスさん、凄い怒ってるみたいだな」
「あはは……説明せずに勝手に行っちゃったからだろうね」
「クラウディアさん、ベッド二つしかないけど……ってこの小さいドラゴンは?」
「クロ」
「キュー」


 ずっと俺の頭の上に乗っていたのだが、リグは気づかなかったようだ。


「あっ何それ! 可愛い!」
「こう見えても凄いドラゴンなんだからね。それに私の物だから」
「キュッ」
『私はクロア様の物です』


 どうやらクロもドラゴン姿に慣れたようだ。さっきなんて俺の膝の上で気持ちよさそうに寝てたし、頭を撫でれば可愛い鳴き声出すし……もうこんな可愛い生物初めて。


「クロアとクロって似た名前だな」
「じゃあ……二人からクロをとって残ったアと、ノスでアノスっていうのは?」
「アノス……まあクロアが良いならそれでいいんじゃないか?」


 随分と適当だな。これから俺とリグのペットになるんだぞ。


「クロ〜、今から名前アノスでいい?」
「キュ」
『いいですよ』
「いいって」
「言葉まで分かるのか……」


 まあ言葉が分かるのは俺だけだがな。


「よし、お前ら全員のベッドはこれだ」


 クラウディアが、二つのベッドをくっつけていたのが終わった。


「クラウディアはどこで寝るのかしら?」
「ん? 俺はこの真ん中で寝るぞ? 勿論、両脇に美女を寝せてな。ここは俺の部屋だ。俺の指示に従ってもらおう」
「許せる範囲ならね」


 結果、クラウディアの横は俺とソフィになった。そしてソフィの横にベリアストロ。俺の横にリグと、その間にアノスだ。


「わぁ! クラウディア良い匂いする!」
「だろう? おっ……ソフィアも良い匂いするな」
「ほんと?」
「クラウディア。変態ね」
「じゃあ俺の横に来るか?」
「嫌よ」


 試しにベッドに寝てみたが、流石魔王のベッド。フカフカで全身に負担が全くかからない。


「キュ〜……」


 アノスも気持ちよさそうに丸まっている。


「なぁリグ」
「ん?」
「アノス可愛いよな」
「……そうだな。神様とは思えないくらいだ」


 ネクロドラゴン、不死のドラゴンで絶対に死ぬ事は無い。そのせいでクロノスが器に閉じ込められたんだけど……結果可愛いペットが出来た。


「んん〜っ!クロアも良い匂い」
「なっ、なんだよクラウディア……」


 俺の頭の上にクラウディアの頭がやってきた。


「そのドラゴン、自分で大きさ変えられるんだろ?」
「そうだけど?」
「余裕が出来たら、また一緒に空の散歩でもしないか? ポチも仲間がいなくて寂しそうなんだ」


 確かにここにはドラゴンはポチしかいなかった。なるべく早くアノスと会わせてお見合いさせたいな。


「また一緒にって……なんだ? ポチ?」
「あっ、皆には言ってなかったけど、私が精神的に病みそうだった時にポチっていうドラゴンの背中に乗せてもらって、空に浮かぶ国まで遊びに行ったんだ」


 なるべく魔王ルトと謎の契約をした事は伏せておこう。


「空に浮かぶ国というと、昔魔王サハルとルトが作り出した場所ね」
「知ってるのか」
「ええ。200年も生きているのだから、よく知ってるわ」


 それもそうか。
 今思い返してもあの契約は分からないな……。ただ神になるっていう説明と一つの器を作ることだけ。他に何かしらの能力を得られたのかもしれないが、本当にそれだけなのだろうか……契約だし、何かありそうだ。


「あ、ベリアストロに質問があるんだけど」
「何でも答えるわよ」
「命の契約って何? 前に本で読んだんだけど」
「……そう。命の契約というのは、契約した人の命を加護する特別な契約よ。誰かと命の契約をしたら、一度死ぬと特別な能力が与えられて生き返るの」


 特別な能力が……つまり、死なないと目覚めない能力がある、ということか。


「それだけ?」
「その特別な能力が、いままで世界の歴史を変えてきたのよ。本で読んだのでしょう?」
「あ、いや……少し見ただけで詳しくは」
「まあ教えてあげるわ。死んだ者は、一度神の元に魂だけ送られるの」


 ふむ。そこは普通にあるな。


「そして、そこで命の契約によって神が能力を与えて生き返らせてくれるわ」
「それって……」
「誰でもできる訳じゃないわ。そうね……出来るとしたらこの世界の最高神、もしくはゼウスくらいよ」


 この世界の最高神かゼウス……ってことは、あの魔王ルトって人は最高神だったのか。


「ありがとう」
「どういたしまして」


 俺は改めてリグの方へ寝返りを打った。


「な、何してんの?」
「あぁいや……ドラゴンの翼ってどうなってるんだろうって気になって……」
「キュー……」
『落ち着けないです……』


 リグがアノスの翼を掴んで広げていた。


「アノスが困ってるよ」
「ああ悪い……。それでクロア、さっきホットパンツの隙間から──」
「何見てんの!?」


 俺は咄嗟に尻を抑えた。


「あ、いや違う。何か模様が見えたんだが……契約、みたいな」
「え……?」


 まさか命の契約にも契約の証が付くのか? いや、しかしそんな感覚はあの時しなかった。
 それ以外には誰とも契約してないし、そんなのあるはずない。


「気のせいだよ」
「そうか……ただ、後で風呂に入った時確認するといい」
「分かった……」
「クロアの彼氏って、平気で彼女の尻見てたの言うんだな」
「いや! たまたま見えただけであって! パンツちゃんと履いてたから!」
「何色?」
「言うわけないだろ!」


 リグが顔を赤くして別の方向を向いてしまった。


「キュー」
「べ、別に……見たくて見たわけじゃないんだからな……」
「へぇ〜彼女の尻見たくないんだな」
「み、見たいに決まってるだろ!」


 ちょっと焦りすぎて何言ってるか分からないぞリグ。


 俺はなるべく尻を抑えて目を閉じた。そんな簡単に中が見えるような服着てられるか。


ーーーーー


ーーーーー


 一眠りした後に風呂に入ることにした。皆を起こさないようゆっくり起きて、風呂場に向かう。


『証確認するんだね』
『うん。気になるしな』


 服を脱いで、立ち鏡の前に立ち自分の尻を確認する。


「ん……? 下の方に逆さまの十字架っぽいのが……」
『悪魔じゃん』
「ふぁっ!? えっ!? 悪魔っ!?」
「悪魔っ!? どうしたクロア! 大丈夫……か……」
「え……」


 素っ裸でいるところを、リグが突然風呂場に入ってきた。


「あ……その……なんだ…………良い身体してんな」
「いいから出てけっ!!」


 はぁ……油断している時に裸を見られてしまった。


『お前が悪魔なんて言うからだろ!』
『いや、本当にその契約の証は悪魔だよ?』
『いつの間に……』


 まじまじと契約の証を眺める。
 俺が悪魔と契約なんて……そんなの見に覚えないぞ……いや……まさか……。
 俺がアーガスと初めてあった時……。


ーーーーー


「クロア、お前は今日から俺の娘だ。危ない人には近づくなよ」
「っ!」


 尻の下に腕を回されて、そのまま片手で抱えられた。地味にセクハラしてくるけど、筋肉が凄い。


「私が危ない人? 私はクロアさんに愛情を注いだだけよ。ね?」
「あの学園長……それ犯罪を犯す人のセリフです」
「……いいわねアーガスは。あっという間にクロアさんに懐かれちゃって」
「俺も驚いた……普通警戒しそうなんだが……」
「この状況でどちら側に付いたら有利なのか考えただけです」
「はっはっはっ!! 15歳にしては見事な戦術だな!!」


(⚠︎詳しくは36話へ)
ーーーーー


 この時だっ! この時にアーガスが俺に……悪魔と契約を……。


『でもまだ悪魔は目覚めてないね。ただ何かの拍子に目覚めるかも』
「嘘だろ……」
『その悪魔がアーガスが仕掛けたのだとすると、自我を乗っ取られて、そのままアーガスの悪魔の手下にされるかもね』


 まずい……確実にありえる。なんでいままで気づかなかったんだ……いや、普通自分の尻なんて見ない。それも小さい模様だ。
 もしこのままで悪魔が目覚めたら……本当に自我を乗っ取られてしまう。この悪魔がアーガスと契約している神級の悪魔の配下だったら……。


「く、クラウディア! ベリアストロッ!」


 俺はすぐに身体にタオルを巻いて、皆の元に向かった。


「ん……どうしたの……」
「なんだ……って、エロッ……」
「こ、これっ!! 悪魔!!」


 俺は尻についている悪魔との契約の証を見せた。


「……っ!!」
「おいおい……」


 2人は目を見開いた。
 どうしたらいいんだ……。

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