女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

84話 肝試し中の異変

「それじゃあ1組目から進むからな。ちゃんとそれに書いてある通りに進むんだぞ」
「「はい」」
「そんじゃ〜、1番目」
「は〜い」


 こうして、2人1組で肝試しに向かっていった。


「始まったな〜……」
「もしかすると先生達が面白い事をしてくれるかもな」
「怖いことな……」


 絶対道順に進んでいる時に何か出てくる。それが本物の幽霊なのか、先生なのか。そしてどうやって脅かしに来るのか、予め予想してないと漏らしそうだ。


「うぅ〜トイレ行けばよかった……」
「あ、じゃあ進む途中でトイレあるから、そこですればいいじゃん」
「えぇ〜あの怖い話聞いた後に?」
「どうせ作り話だって」


 作り話だっていうのは分かるけど、怖い話を聞いた後はどうしても恐怖が残ってるんだよ。そもそもあの怖い話謎が多いし、分からない事だらけだ。


「あの先生」
「ん?」
「さっきの怖い話って本当なんですか?」


 俺は念の為聞いておいた。


「あぁ〜あれ、今はいないんだけど前に先生してた人から聞いた話でな、嘘か本当は分からない。でもその話に出てくるトイレは寮塔1階にあるぞ」
「ここじゃないですかぁ!」
「なんだトイレに行きたいのか? 女子トイレは大丈夫だろう」


 そういう問題じゃないんだよっ! トイレに出るっていうイメージが出てるから怖いんだよ! 例えばマンションの怖い話があって、ここは自分の家だから大丈夫とかいう認識できる人そうそういないし!


「あぁ〜っ! 我慢するしかない!」
「漏らすなよ〜」
「刺激が無ければね……」


 やばい時はちょっとお腹を刺激しただけで危ないからな〜……でも我慢すると少しだけ気持ち良い。
 って何考えてんだ!


「ふぅ……よし、頑張ろう」
「次はお前達だぞ」
「あっはい! リグ行こう」
「うい」


 俺とリグは立ち上がって、玄関から左側の通路に進んでいく。
 1組ずつ配られたマップだと、ここから一番奥の階段まで行って上に登る。どこかの教室にある墓に、渡された花を置いて玄関に戻る。これだけだ。
 だが、絶対にこれだけじゃ終わらないのは確かだ。


「そんなにビビるか?」
「当たり前じゃん……」
「でも上の階静かだぞ」
「とりあえず、階段登ろう」


 お化け屋敷の時のように、リグと逸れないようにしっかり手を繋いで進む。


「クロア手冷たいな」
「心が暖かい証拠」


 そんな事を話して2階に到着。そこから上に行こうとすると、塞がれていて階段はそれ以上登れないようになっていた。
 ここから教室を探しながら奥の階段まで行けってことか。


「んじゃあ行こ……なんかいる」
「お?」


 早速教室を調べようと進むと、廊下の奥から明かりが近づいてきているのが分かった。


「ん〜? 生徒じゃないな。先生か」
「よく見えるな」
「いや、ただ服が真っ黒だからな。あっ、もしかすると先生がお化け役で、見つからないように探索しろって事だな」


 なるほどね。じゃあリグの得意なステルス行動で簡単に探索できそうだ。


「ルールに従って探索するぞ」
「えぇ〜……」


 仕方なく、前からやってくるライトに照らされる前に教室の中に入っていく。


「墓はない」
「んじゃ、お化けが通り過ぎて言ってから隣の教室に移動な」


──キャーーーーーー!!


「うおわっ!」ガンッ


 上の階から悲鳴がして、つい骨盤を机の角にぶつけてしまった。


「いった……」
「ビビりすぎだ。行こう」
「へい」


 なんで骨にクリーンヒットするかなぁ……。


 このまま順調に教室の中にある墓を探して、いよいよ上の階だ。


「まあ上から悲鳴が聞こえたって事は下の階に墓は無いわけで」
「そもそもそんな簡単には終わらないね。教室に隠れながらさっさと上の階まで進んだ方がいい」


 ここの階段も、そのまま上の階には行けないようになっている。


「っつーか、生徒全然いなくないか?」
「まあそういう風に間隔あけて進ませてるんじゃない?」


 生徒がぞろぞろと廊下歩いてたら怖くないしな。


「じゃあ行くか」


ーーーーー


ーーーーー


 こうしてクロアと手を繋いで俺がリードしているっていうのは嬉しい事だ。ちょっとした事で可愛い反応をするクロアを見ているだけで、俺は神に感謝している。


「くっそ〜……先生の数多くてなかなか進めないな」
「でもあの明かり、本当の火を使ってるから照らす距離が短い。少し離れたところならバレないだろう。行くぞ」


 クロアの細くて綺麗な手を楽しみながら、順調に隣の教室へと移動していく。たまに照らされても、走って追いかけてくるくらいで特に問題は無い。


 そして最後の教室。


「無いな」
「じゃあ次の階、行こう」
「待て待て。後ろの棚に何か置いてある」


 クロアはさっさと終わらせたいようだ。たまにお腹を抑えて深呼吸している。


「リグ、見てきて」
「分かった」


 どうやら黒い箱が置いてあるようで、中に札があった。


──お化けに見つかったらこれを渡せ。見逃してくれる。


「ふっ」


 なんとも御丁寧な説明につい笑ってしまった。


「何かあったか?」
「いや何もない。行こう」
「ったく……早く!」


 ちょっと不機嫌なクロアも、おしっこを一生懸命我慢してるって思うと可愛く見えてくる。……俺変態?


 そのまま次の階へと進むと、今度は少しだけ違う雰囲気だ。


「教室の中に先生?」


 いままでは廊下だけを動いていたお化け役が、ついに教室の中まで入ってきた。
 これだと小さな机に隠れながら墓を探さないといけない。


「しゃがめるか?」
「無理」
「だろうな……トイレは……」
「我慢する。私は教室の外で待機するから、中は任せた」
「見つかるなよ」
「大丈夫」


 廊下もお化けが歩いているからな。もし見つかって追いかけられたら大変な事になる。


「んじゃすぐ見てくる」
「うん」


 教室の中には2人。なるべく死角に隠れて一つ一つのテーブルの中などを探す。
 ちょっと手がはみ出てしまっても、見逃してくれるようだ。


 結局この教室にも何もなく、クロアの元に戻る。


「……大丈夫か?」
「大丈夫」


 しゃがんで苦しそうにしてたクロアをゆっくり起こす。


「あんまり我慢すると身体に悪いぞ」
「……じゃあ次のトイレに着いたら行く」
「急ぐか」


 でもトイレを我慢している為、ゆっくり歩かないといけない。もしもの時はお化けから見逃してもらう為の御札を使えばいい。
 お化けに近づいたら教室の中に。しかし教室にもお化けがいるので、タイミングが難しい。


 ようやく階段横のトイレまで来た。


「行ってこい」
「えっ……」
「……なんだよ」


 服の裾を掴んで必死な目で俺を見てくる。


「そんなに暗いトイレが怖いか?」
「っ!っ!」


 頭をコクコク。


「中まで来いと?」
「っ!」
「はぁ……お前がいいならいいけど……」


 仕方なくクロアがトイレの個室に入るまで着いてきてやって、待つことになった。


──じょぼぼぼぼぼぼ


「……」


 これクロアの方が恥ずかしいだろ。


 しばらくして、顔を赤くしたクロアがトイレから出てきた。


「大丈夫だな」
「う、うん……」


 手を洗って、いよいよ次の階。と思ったら階段が上に進めなくなっている。


「ん? どういう事だ?」
「墓ないな」


 ただ下に降りる階段はあるが……その下は行き止まりのはず。


「リグ、男子トイレ」
「はぁっ?」
「しっ! 気づかれたらどうすんの」


 いやでも、男子トイレに墓があるとしたら女子二人組はどうするんだって話で……。


「下に行くしかない」
「踊り場にあるのか」


 俺とクロアは、ゆっくりと階段を降りていった。


「……あれ? 行き止まりじゃない?」
「どういう事だ?」


 何故か塞がれていたはずの通路が開いている。


「ちょっと待ってろ」
「あっ……」


 廊下を見に行くと、誰もいなかった。


「誰もいない……」
「どういう事?」
「分からない……窓の外を見てみろ」
「ん? あれ、地面が見える」


 クロアも気づいたようだ。
 ここは上の階のはず。それなのに、なぜか窓からは地面が見える。


「……リグ、サタナに心当たりがあるらしい」
「心当たり?」
「これと似たような事を起こす人物」
「何?」


 花子さん?


「クロノス」
「クロノス?」


ーーーーー


ーーーーー


『で、そのクロノスっていうのは何なんだ?』
『時空を操る神なんだけど、今クロア達は誰もいない空間に連れてこられたみたいだ』


 誰もいない空間に……。目的は恐らく俺なのだろうけど、なぜそんな事を……。


『僕がクロノスを呼んでくるよ』
『あ、呼べるなら早くしてくれ』


 さっさとそのクロノスとやらと話をして、元の場所に返してほしいものだ。


 なんて思っていると、突然周りが暗くなった。


「えっ!? り、リグどこ?」
「ここにいる」
「うわぁっ! あっリグ……」


 何も見えない中で肩を触られたからビックリした。
 そうだ。リグは暗闇でも目が利くんだったな。


『来るよ』
『分かった』


 段々と周りが明るくなっていき。真っ白な空間に俺とリグは立っていた。


「初めまして」


 いつの間にか前に立っていた男。全身が黒いローブで覆われていて、パッと見死神にしか見えない。


「……初めまして」
「あっ、初めまして」
「初めまして」


 とりあえず二人共挨拶をする。

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