女嫌いの俺が女に転生した件。
76話 ラノベみたいに軽い展開で進むと思った
「今日はこの部屋で大人しくしてろクソ豚」
「ぶひぃ、頑張って身体に慣れます」
サタナの扱いも慣れてきて、俺は平和な学園生活を送れてる気がする。
能力も目覚めて、もうすぐ18歳になる。卒業まで後僅かだ。
──「クロア先生お疲れ様でした!」
「「お疲れ様でした!!」」
今日も授業が終わって、寄り道することなく部屋に帰る。
部屋に帰ると必ずリグがいる。そこから俺とリグは色んな事を話して時間を潰すんだ、が。サタナも居るためイチャイチャする事が出来ない。
最近は2人きりという時間が無いからな。
「サタナ〜私とサタナの関係って何なの?」
「主従関係だよ? 今の場合僕が主なんだけど、僕はクロアが主の方が興奮するから」
「ってことは本来はサタナに私が忠実じゃないとダメなんだ」
「そっ、信仰心だね。でも最近は平和教からの信仰心が多くて問題ないよ」
神っていうのは信仰心を魔力に変えているのか。
つまり、今と俺とサタナキアは本来あるべき関係の反対の姿をしている訳だな。俺が主で、サタナキアが従者。俺の方が偉い訳だ。
「サタナは私にしてほしい事とかある?」
「そうだね〜裸足で僕の顔を踏んでほしいかな。僕が床に寝た状態でね。その時に見えるパンツに興奮するんだ〜」
「やっぱやめた……」
「え〜」
サタナの願いを聞いてあげる代わりに、しばらく2人きりにさせてくれという願いは言えなくなった。
「サタナはずっと私と一緒にいるのか?」
「たま〜に中間世界に戻ったりするよ」
「よかった」
リグと2人きりの時間は無くなってはいないようだ。
ーーーーー
その後もしばらく3人で話していると、学園長がやってきた。
「突然だけれど、フロンガード王国南側から魔王軍が攻めてきたわ」
「はい……?」
「魔王軍?」
本当に突然の話に、俺とリグは間抜けな返事をした。
「魔王軍っていうのは、魔物の王が集めた魔物の事だね。アイツ、僕がここにいることも知らずに間抜けだなぁ」
「街の冒険者達や傭兵が戦っているのだけど、負傷者が沢山出ているの。王国騎士団が出た方が良さそうなのだけれど、クロアさんはどうする?」
これは行くしかない。魔物と戦った事は全くないが、王国騎士団として戦いたい。それに、サタナキアもいるし大丈夫だろう。
「行く、けどリグはどうする?」
「クロア1人じゃ心配だ。俺も冒険者として念の為に行こう」
「僕はクロアの中に戻った方が良さそうだね〜」
緊張感の無い会話だ。
「クロアさんは魔物を見るのは初めてよね?」
「ま、まあ。本でなら少しは」
「魔物の中でも魔王軍はかなりの実力を持った魔物が集まっているのよ。王国騎士団でも少し苦戦しそうだから、いくら皆がいるからといって安全が確保されている訳じゃない。
王国騎士団として話を持ちかけたけれど、私としてはクロアさんには残ってほしいわ」
「っ……」
学園長は心配しているようだ。
「……そんなに……重い話なのか?」
「もしかすると、今頃何百人もの死人が出ているかもね」
「だったら尚更、少しでも戦力を上げた方がいい」
「……そうね、クロアさんは戦いを知らないから無理もないわ」
俺でも昔は天才と言われた程の実力は持っている。それに今の能力があれば……。
「やっぱりクロアさんに戦わせる訳にはいかないわ。まだ未成年だもの……リグリフさんと、サタナ。来てくれる」
「……分かった」
「ぼ、僕も?」
「私はっ!?」
「……クロアさんにはまだ早いわ」
「そんな……」
俺にはまだ早いと言われて、学園長はリグとサタナを連れてどこかへ転移していった。
急に魔王軍が攻めてきたって言われて……急にリグとサタナもいなくなって、俺は1人何をしたらいいんだ……?
このままソフィの帰りを待つ……? 王国騎士団の俺が、のんびり部屋で過ごしていろと?
「私は…………」
俺はそんなに足手まといなのだろうか。戦闘経験が無いからって、こんな緊急時にのんびりしていられるかよ……。
すぐに千里眼でリグ達の様子を見ることにした。
ーーーーー
「酷いな……これが魔王軍」
「リグリフさん、あまり前線には出ない方がいいわ。命の危険もある」
「あ、ああ……」
1人の冒険者として魔物から国を守る義務がある。しかし、目の前の光景を見て、俺は動けないでいた。
「ぎゃぁぁぁあああああ!!」
「助けてっ! 助けでぐれぇぇっ……」
一つ目の巨人──サイクロプスが……ざっと数えて8体。胴体だけで一つの建物以上はある巨体から繰り出される一撃で、大地が震え、空気は振動し、頑丈である建物が次々と破壊されていく。
「ベリアストロ! 住民の安全を確保しつつ、1番近くにいる奴を無力化してくれ!」
「分かったアーガス!」
それなりに戦闘経験は積んできた俺だが、王国騎士団のように即座に戦況を把握して行動する事が出来ない。
「リグリフ〜? 君はクロアの彼氏なんでしょ? 僕が守るから、戦ってきなよ」
「サタナキア……俺は……俺に何が出来ると思う」
剣を片手に、ただ振り回していても魔物を倒すのは難しい。
魔力で体を強化して、飛び立っている王国騎士団とは違って俺は魔力はそんなに無い。
「何も出来ないと思うね。でも戦う義務があるでしょ? 君は何の為に戦うのか、そこに理由なんてない」
「クロアを守る為に戦う、でもダメなのか」
「学園まで到達する程の被害は及ばないよ。まだ魔王軍の雑魚兵達だけだから、被害はここらへんで済む」
雑魚兵……? 見たこともないような魔物がドンドン侵略してきているのに、雑魚?
それなのに俺は無力なのか。
「サタナ、俺に何か出来ることを……」
「強くしてくれとでもいいたいのかい?」
「……俺はここでラノベのモブのように死んでいいのか? 俺は……主人公だ。戦える」
「何を言っているのか分からないけど、僕は君を守るだけ。君に唯一出来る事といったら、住民を安全な場所に連れていくことくらいだね」
それだ、俺には転移がある。逃げ遅れている人達を離れた場所に送るだけでも、被害は防げるはずだ。
「……しっかり守ってくれ」
「任せて」
ーーーーー
ーーーーー
なんだこれ……こんな魔物が攻めてきているのか? そんなところで、リグは戦っている?
「くそっ……」
何も出来ない自分がもどかしい。ただ部屋に座っているだけの俺に、何ができることを探せ。
サタナがいるから、リグの安全は確保されているだろう。今の俺に出来ることは……。
「たっだいま〜! さっき勇者様がクロアちゃん探してたよ〜」
「それだっ! 勇者はどこにいる!?」
「えっと、この階にいるはず」
すぐに部屋から出て勇者の姿を探した。
「あっクロアさん!」
「勇者様!」
どうやら勇者も緊急事態に気づいているようだ。
「た、大変なんです!」
「うん……何が起きているのか教えてくれ」
「魔王軍が国の南側に攻めてきていて、リグがっ……」
「魔王軍が!? 俺は……勇者なのに呼ばれてない」
「未成年で戦闘経験が無いから危ないって……だから私……なんとか出来ることを探さないとって……」
ーーーーー
ーーーーー
「そっか……クロアさんは王国騎士団で……」
未成年だから連れていかないなんて間違ってる……僕は紹介された勇者、チート能力を持ってる。必要な戦力を連れていかないなんて……被害が大きくなるだけだ!
「すぐに転移する! クロアさんは……っ……行こう!」
「お願いっ!」
こんなに焦ってるクロアさんを、また1人置いていくわけにはいかない。クロアさんの好きな人が戦場に出ているんだ。待っている方が辛い。
「大体ここらへんだ……転移!」
まだ南側に行ったことは無い。でも、クロアさんの彼氏の姿を思い浮かべて転移した。
「ク、クロア!? と、、勇者!?」
「クロアさんと勇者さん! なんで来たんですか!?」
学園長と彼氏さんが叫んでいる声が聞こえ──
「うわぁっ!?」
「ゆ、勇者様っ……立って!」
「ひっ……」
目の前に、大きな怪物が俺に棍棒を振り下ろそうと……あっ、死ぬ。
「危ないっ!!」
時間がゆっくりと流れている。鎧を着たクロアさんが僕を庇うように前に出ている。
──ガンッ
「あっ……えっ……あ、そうだ。能力……!」
「クロア逃げろ!!」
クロアさんの前に、黄色い壁が出来ている。それによって棍棒が防がれた。
が……。
「っ! やばい割れる!」
棍棒を塞いでいた壁にヒビが入り、今にも割れそうな状況となった。
「勇者! 転移で連れて帰れ!!」
「え…………」
「動けよっ!! くそっ……サタナ!」
「一時的に君を守る結界が無くなるけど大丈夫だね?」
「とにかく今は2人を!!」
サタナが俺とクロアの元にやってきた。
「ったく、なんで連れてくるかなぁ」
「っっリグリフさん危ないっっ!!」
ーーーーー
ーーーーー
必死に割れそうな盾を持ちこたえさせていると、サタナが愚痴りながらやってきた。
「っっリグリフさん危ないっっ!!」
その声で、俺は咄嗟にリグの方を見た。
リグの前方から、大きな棍棒が飛んできている。魔物が投げたのだろう。
──バリンッ!!
気を取られた瞬間、盾が割れた。
あ……死ぬ……
「やばっ!!」
サタナが焦ったような表情をして、気づいたらA-975号室、部屋に戻っていた。
「あ……ぁぁ…………」
「大変だ……大変だ……」
最後に見た光景、リグに棍棒が飛んでいくのを最後に……どうなったのだろうか。
俺は恐怖のあまり失禁してしまっていた。
「私が……行くべきじゃなかったんだ……」
「大変だぁ……」
俺はもっとラノベのように、簡単に魔物を倒せるものだと思っていた。が、現実は違った。
魔物の一つ一つの動きで、建物がオモチャのように崩れていく。
俺は自分の力を過信しすぎていた。俺は無力だ。
「あれクロアちゃん帰っ……なんで漏らしてってなんで泣いてって……えぇぇ!?」
帰ってきたソフィを、泣きながら抱きしめた。
「ごめん……私が……わ゛だしが……悪いんだっ…………」
涙や鼻水が止まらない。怖かった、ただそれだけだった。
「ぶひぃ、頑張って身体に慣れます」
サタナの扱いも慣れてきて、俺は平和な学園生活を送れてる気がする。
能力も目覚めて、もうすぐ18歳になる。卒業まで後僅かだ。
──「クロア先生お疲れ様でした!」
「「お疲れ様でした!!」」
今日も授業が終わって、寄り道することなく部屋に帰る。
部屋に帰ると必ずリグがいる。そこから俺とリグは色んな事を話して時間を潰すんだ、が。サタナも居るためイチャイチャする事が出来ない。
最近は2人きりという時間が無いからな。
「サタナ〜私とサタナの関係って何なの?」
「主従関係だよ? 今の場合僕が主なんだけど、僕はクロアが主の方が興奮するから」
「ってことは本来はサタナに私が忠実じゃないとダメなんだ」
「そっ、信仰心だね。でも最近は平和教からの信仰心が多くて問題ないよ」
神っていうのは信仰心を魔力に変えているのか。
つまり、今と俺とサタナキアは本来あるべき関係の反対の姿をしている訳だな。俺が主で、サタナキアが従者。俺の方が偉い訳だ。
「サタナは私にしてほしい事とかある?」
「そうだね〜裸足で僕の顔を踏んでほしいかな。僕が床に寝た状態でね。その時に見えるパンツに興奮するんだ〜」
「やっぱやめた……」
「え〜」
サタナの願いを聞いてあげる代わりに、しばらく2人きりにさせてくれという願いは言えなくなった。
「サタナはずっと私と一緒にいるのか?」
「たま〜に中間世界に戻ったりするよ」
「よかった」
リグと2人きりの時間は無くなってはいないようだ。
ーーーーー
その後もしばらく3人で話していると、学園長がやってきた。
「突然だけれど、フロンガード王国南側から魔王軍が攻めてきたわ」
「はい……?」
「魔王軍?」
本当に突然の話に、俺とリグは間抜けな返事をした。
「魔王軍っていうのは、魔物の王が集めた魔物の事だね。アイツ、僕がここにいることも知らずに間抜けだなぁ」
「街の冒険者達や傭兵が戦っているのだけど、負傷者が沢山出ているの。王国騎士団が出た方が良さそうなのだけれど、クロアさんはどうする?」
これは行くしかない。魔物と戦った事は全くないが、王国騎士団として戦いたい。それに、サタナキアもいるし大丈夫だろう。
「行く、けどリグはどうする?」
「クロア1人じゃ心配だ。俺も冒険者として念の為に行こう」
「僕はクロアの中に戻った方が良さそうだね〜」
緊張感の無い会話だ。
「クロアさんは魔物を見るのは初めてよね?」
「ま、まあ。本でなら少しは」
「魔物の中でも魔王軍はかなりの実力を持った魔物が集まっているのよ。王国騎士団でも少し苦戦しそうだから、いくら皆がいるからといって安全が確保されている訳じゃない。
王国騎士団として話を持ちかけたけれど、私としてはクロアさんには残ってほしいわ」
「っ……」
学園長は心配しているようだ。
「……そんなに……重い話なのか?」
「もしかすると、今頃何百人もの死人が出ているかもね」
「だったら尚更、少しでも戦力を上げた方がいい」
「……そうね、クロアさんは戦いを知らないから無理もないわ」
俺でも昔は天才と言われた程の実力は持っている。それに今の能力があれば……。
「やっぱりクロアさんに戦わせる訳にはいかないわ。まだ未成年だもの……リグリフさんと、サタナ。来てくれる」
「……分かった」
「ぼ、僕も?」
「私はっ!?」
「……クロアさんにはまだ早いわ」
「そんな……」
俺にはまだ早いと言われて、学園長はリグとサタナを連れてどこかへ転移していった。
急に魔王軍が攻めてきたって言われて……急にリグとサタナもいなくなって、俺は1人何をしたらいいんだ……?
このままソフィの帰りを待つ……? 王国騎士団の俺が、のんびり部屋で過ごしていろと?
「私は…………」
俺はそんなに足手まといなのだろうか。戦闘経験が無いからって、こんな緊急時にのんびりしていられるかよ……。
すぐに千里眼でリグ達の様子を見ることにした。
ーーーーー
「酷いな……これが魔王軍」
「リグリフさん、あまり前線には出ない方がいいわ。命の危険もある」
「あ、ああ……」
1人の冒険者として魔物から国を守る義務がある。しかし、目の前の光景を見て、俺は動けないでいた。
「ぎゃぁぁぁあああああ!!」
「助けてっ! 助けでぐれぇぇっ……」
一つ目の巨人──サイクロプスが……ざっと数えて8体。胴体だけで一つの建物以上はある巨体から繰り出される一撃で、大地が震え、空気は振動し、頑丈である建物が次々と破壊されていく。
「ベリアストロ! 住民の安全を確保しつつ、1番近くにいる奴を無力化してくれ!」
「分かったアーガス!」
それなりに戦闘経験は積んできた俺だが、王国騎士団のように即座に戦況を把握して行動する事が出来ない。
「リグリフ〜? 君はクロアの彼氏なんでしょ? 僕が守るから、戦ってきなよ」
「サタナキア……俺は……俺に何が出来ると思う」
剣を片手に、ただ振り回していても魔物を倒すのは難しい。
魔力で体を強化して、飛び立っている王国騎士団とは違って俺は魔力はそんなに無い。
「何も出来ないと思うね。でも戦う義務があるでしょ? 君は何の為に戦うのか、そこに理由なんてない」
「クロアを守る為に戦う、でもダメなのか」
「学園まで到達する程の被害は及ばないよ。まだ魔王軍の雑魚兵達だけだから、被害はここらへんで済む」
雑魚兵……? 見たこともないような魔物がドンドン侵略してきているのに、雑魚?
それなのに俺は無力なのか。
「サタナ、俺に何か出来ることを……」
「強くしてくれとでもいいたいのかい?」
「……俺はここでラノベのモブのように死んでいいのか? 俺は……主人公だ。戦える」
「何を言っているのか分からないけど、僕は君を守るだけ。君に唯一出来る事といったら、住民を安全な場所に連れていくことくらいだね」
それだ、俺には転移がある。逃げ遅れている人達を離れた場所に送るだけでも、被害は防げるはずだ。
「……しっかり守ってくれ」
「任せて」
ーーーーー
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なんだこれ……こんな魔物が攻めてきているのか? そんなところで、リグは戦っている?
「くそっ……」
何も出来ない自分がもどかしい。ただ部屋に座っているだけの俺に、何ができることを探せ。
サタナがいるから、リグの安全は確保されているだろう。今の俺に出来ることは……。
「たっだいま〜! さっき勇者様がクロアちゃん探してたよ〜」
「それだっ! 勇者はどこにいる!?」
「えっと、この階にいるはず」
すぐに部屋から出て勇者の姿を探した。
「あっクロアさん!」
「勇者様!」
どうやら勇者も緊急事態に気づいているようだ。
「た、大変なんです!」
「うん……何が起きているのか教えてくれ」
「魔王軍が国の南側に攻めてきていて、リグがっ……」
「魔王軍が!? 俺は……勇者なのに呼ばれてない」
「未成年で戦闘経験が無いから危ないって……だから私……なんとか出来ることを探さないとって……」
ーーーーー
ーーーーー
「そっか……クロアさんは王国騎士団で……」
未成年だから連れていかないなんて間違ってる……僕は紹介された勇者、チート能力を持ってる。必要な戦力を連れていかないなんて……被害が大きくなるだけだ!
「すぐに転移する! クロアさんは……っ……行こう!」
「お願いっ!」
こんなに焦ってるクロアさんを、また1人置いていくわけにはいかない。クロアさんの好きな人が戦場に出ているんだ。待っている方が辛い。
「大体ここらへんだ……転移!」
まだ南側に行ったことは無い。でも、クロアさんの彼氏の姿を思い浮かべて転移した。
「ク、クロア!? と、、勇者!?」
「クロアさんと勇者さん! なんで来たんですか!?」
学園長と彼氏さんが叫んでいる声が聞こえ──
「うわぁっ!?」
「ゆ、勇者様っ……立って!」
「ひっ……」
目の前に、大きな怪物が俺に棍棒を振り下ろそうと……あっ、死ぬ。
「危ないっ!!」
時間がゆっくりと流れている。鎧を着たクロアさんが僕を庇うように前に出ている。
──ガンッ
「あっ……えっ……あ、そうだ。能力……!」
「クロア逃げろ!!」
クロアさんの前に、黄色い壁が出来ている。それによって棍棒が防がれた。
が……。
「っ! やばい割れる!」
棍棒を塞いでいた壁にヒビが入り、今にも割れそうな状況となった。
「勇者! 転移で連れて帰れ!!」
「え…………」
「動けよっ!! くそっ……サタナ!」
「一時的に君を守る結界が無くなるけど大丈夫だね?」
「とにかく今は2人を!!」
サタナが俺とクロアの元にやってきた。
「ったく、なんで連れてくるかなぁ」
「っっリグリフさん危ないっっ!!」
ーーーーー
ーーーーー
必死に割れそうな盾を持ちこたえさせていると、サタナが愚痴りながらやってきた。
「っっリグリフさん危ないっっ!!」
その声で、俺は咄嗟にリグの方を見た。
リグの前方から、大きな棍棒が飛んできている。魔物が投げたのだろう。
──バリンッ!!
気を取られた瞬間、盾が割れた。
あ……死ぬ……
「やばっ!!」
サタナが焦ったような表情をして、気づいたらA-975号室、部屋に戻っていた。
「あ……ぁぁ…………」
「大変だ……大変だ……」
最後に見た光景、リグに棍棒が飛んでいくのを最後に……どうなったのだろうか。
俺は恐怖のあまり失禁してしまっていた。
「私が……行くべきじゃなかったんだ……」
「大変だぁ……」
俺はもっとラノベのように、簡単に魔物を倒せるものだと思っていた。が、現実は違った。
魔物の一つ一つの動きで、建物がオモチャのように崩れていく。
俺は自分の力を過信しすぎていた。俺は無力だ。
「あれクロアちゃん帰っ……なんで漏らしてってなんで泣いてって……えぇぇ!?」
帰ってきたソフィを、泣きながら抱きしめた。
「ごめん……私が……わ゛だしが……悪いんだっ…………」
涙や鼻水が止まらない。怖かった、ただそれだけだった。
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