女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

72話 邪神サタナキアとイザナミ



 しばらく部屋でゴロゴロしていたが、全く何も変化が無いため暇になってきた。


 学園長はどこからか本を取り出して読んでるし、リグは毛繕いしている。


「リグ〜……暇〜」
「足バタバタするなホコリが飛ぶ」
「何か面白い事ない?」
「クロアも本を読めばいいじゃないか」


 つまらん男だな。


「彼氏らしく構えよ〜」
「お前が彼女らしくしたらな」
「構ってくれないとおこだよ! ぷんぷん!」
「なん〜……か古臭いな」
「うるせぇ」


 せっかく彼女らしくぶりっ子してみたのに引かれてしまった。彼女らしさって何なんだ……。


「学園長〜邪神サタナキアって何なの?」
「サタナキアはルシファーの配下の1人よ。クロアさんのように、女性と契約して命令してくるの」
「でも命令してくるのってちょっと変態っぽかったんだけど」
「女好きよ。私も昔惚れられたの」
「へぇ! それで?」


 邪神サタナキアと学園長の話、気になるな。


「ボコボコにして消えてもらったわ」
「ボコボコに……神にそんな事するのか」
「私の前では誰も無力よ。アーガス以外はね」


 昔から気になってるけど、学園長の能力でも勝てないアーガスってどういう強さなのだろうか。気になる。


「アーガスの能力は私も知らないから、勝ち目がないの」
「私は能力を知った学園長とジェイスにすら勝ち目ないんだけど」
「クロアさんの能力がどうなるのか、気になるわね」


 そうだな〜俺の能力か……皆みたいに強いの能力が欲しいな。


「はぁ……こうして何かあるのを待ってるのも暇だし、寝るわ」
「おやすみ。夢の中で何かあったら言えよ」
「そうね、もしかすると神様の所にいるのかも」


 その可能性も高いな。よし、寝よう。


「おやすみ」


ーーーーー


ーーーーー


「はぁ!?」
「だから! 僕はクロアと契約したからここにいるんだよ!」
「私とクロアちゃんだけの世界に入ってこないでくれる!?」
「い〜や! 契約すらしてないお前にそれを言う権利は無い!」
「むきぃぃぃい!!!!」


 予想通り。神様と邪神が何やら揉めあっている。


「「クロアッ!」」


 2人が俺に気づいて、すぐに挟まれた。


「ねぇ! 契約したのはいいけど、この空間は2人だけの物よねぇ!?」
「わざわざ僕が魔力消費してまで夢に現れる必要ないよね? お前は魔力消費しなくても中間世界作れるけど、僕は無理なんだ。いいだろう別に」
「力不足の自分を恨め!」
「んだとぉ!?」
「うるせえっ!!」
「「はい」」


 なんなんだこの2人。中間世界の奪い合いか?


「で、サタナキア」
「はい」
「サタナキアは夢の中じゃないと俺と話せないのか?」
「ん〜? 別に起きてても話せるけど、まずはコイツと蹴りつけようと思ってな」
「そんな理由で私の世界に来たの!?」
「はいはい神様も落ち着いて」


 ったく、なんで俺は2人の神の間に入ってるんだ。俺は人間だぞ。


「とにかく、サタナキアはいつでも話せるんだから夢の中に来なくていいだろ」
「そうだよ〜クロアちゃんの言う通り」
「確かにいつでも会えるけど……寝てる時も話したいじゃないか」
「全く……サタナは昔から寂しがり屋なんだから」


 面倒くさいなぁ。


「サタナキアは現実世界で実体化は出来るのか?」
「でも何かに乗り移らないといけないよ。別に憑依しなくても心の中で会話できるけど、声に出して喋れるようになればその方がいいかな」


 なるほど憑依……って……。


「前まで乗り移ってた女の子は!?」
「あぁ大丈夫。何の問題もなく元に戻してるから」
「良かった……」


 とりあえず、何かに憑依しなきゃならないならビリーの人形とかで良さそうだな。


「人形でいいな」
「えぇ〜」
「俺そっくりの人形があるぞ」
「へへへ」
「気持ち悪っ」
「おい神こら舐めてんのか」


 神が二人も揃うとこんなに面倒なんだな。少しは仲良く出来ないのだろうか。


「とりあえず……二人とも仲良く振舞って話をしようか」
「「はい」」


 俺の言うことには素直に聞いてくれる2人だった。


「さて、まずはこの胸元のハートマーク。これは?」
「わおセクシー」
「それは僕との契約の証。予想は当たってるよ」


 なるほど。じゃあバラの茎とハートが合わさったマークは消せないのか。


「次に、サタナキアは私に何をしてくれる?」
「契約してくれたから、僕のお願いを聞いてくれたら何だってするよ。流石に世界規模な事は出来ないけど、コイツを殺せだったり。魔力貸して、だったりね」


 なるほど。魔力を借りれるのは有難い。


「サタナキアの魔力属性は?」
「無と闇」
「……闇は分かるけど、無?」


 無属性魔法なんてあったか? 本でも見たことないぞ。


「無属性は神にしか使えないような魔法だからね」
「そうなのか?」
「サタナの言う通り、神にしか使えないよ。……ねぇ、今更だけど私の名前ずっと神様だよね?」
「神にしか使えないような魔法か……」
「ねえ無視しないで」


 無属性でどういう魔法が使えるのか気になるけど、とりあえず今は神様の話を聞くか。


「名前は何」
「イザナミ。いまクロアちゃん達がいる世界も私が作ったんだよ」


 イザナミ……日本の神話で聞いたことがあるな。


「イザナギは?」
「それは私の兄で今は別の世界を管理してる」


 意外と神話って本当の話だったんだな。こうして本物の神を見ると……そこまで凄い人とは思えない。いや凄いんだけど、雰囲気がゴミ。


「今失礼なこと考えた?」
「サタナキア、無属性っていうのはどういう魔法なんだ?」
「ねぇ」
「無属性ってのは、まあ簡単に言うと物質を無に変える能力だな。重力も操れるし、空気も操れる。ただその分魔力消費が大きいから滅多な事では使わないよ」


 邪神であるサタナキアも滅多な事で使わない魔法か……俺の魔力量だとどのくらいできるのだろうか。


「まあサタナキアは後からでも話せるから、目が覚めたら話しかけてきてくれ」
「はいよ」
「で、イザナミ。私はこれからどうしたらいい」
「ああ迷える子羊よ……私が全て導いてみせよう……。なんて言ったらつまらない人生だよ。自由に生きてみるといい」
「自由に……?」


 いざ自由に生きようとすると、どうしたらいいのか分からなくなった。
 いままで何かしらの目的を持って生きてきたけど、自分で道を決めるとなると何をすれば……。


「難しく考えなくていいよ。大人になるまで先生の仕事を頑張るだったり、騎士として鍛えるだったりね」
「あぁ〜……お願い、何か目的頂戴」


 自分じゃこの先を考える事は出来ない。
 何らかの計画を持っているイザナミなら、俺にちょっとした目的を与えてくれるはずだ。


「仕方ないな〜! じゃあね〜……サタナが満足するような人形開発!」
「人形開発は私には出来ないぞ?」
「友達に事情話せばいいよ」
「どうやって」
「邪神サタナキアが体を求めてるから、持っている技術を最大限使って作ってくれってね」


 んな事俺が言えるかよ。


「ああそれなら、ビリーって奴の近くにいた人形に憑依して頼んできたよ」
「変なことしてないだろうな」
「男に変な事するわけないよ。僕はホモじゃない」


 そっちの変な事じゃないんだよなぁ……。


「とにかく分かった。でも……まずはサタナキアには私の部屋にある人形に憑依してもらった方がいい。そこから私の友人だけに紹介するから、変なことするなよ」
「クロアの命令だ。分かった。じゃあ僕に "汚い豚野郎は人形に引きこもってろ" って言って」
「……なんで?」


 また罵ってほしいとか言うんじゃないだろうな。


「それが命令となって、僕はそれを引き受ける。それでクロアに僕の魔力が与えられていくんだ」
「どういう原理なんだ……」
「契約の効果だよ。主であるクロアが命令すればするほどメリットがある」
「その為に罵れと?」
「僕の趣味なんだけどね〜あはは」
「汚い豚野郎は人形に引きこもってろ」
「あはんっ!」


 サタナキアは変な声を上げて消えていった。その時、俺の身体から何かが抜けたような感覚がした。


「これでよし」
「さっきの言葉に殺意が込められてたよ」
「じゃあ神様……じゃなくてイザナミ。また会おう!」
「やっと2人きりになれたのにもう行くの?」
「いや、寝たい」
「あ、分かった。じゃあね!!」


 イザナミとも別れて、俺はまた夢の世界へと入っていった。

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