女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

67話 リグからクロアへ大事な話



 皆で飾った食堂を元の状態に戻していく。
 なんだか寂しい感じもするが、これで騎士カフェは終わりだ。ケジメをつけて元の状態に戻すまでが大事。


ーーーーー


 準備は長かったのに、片付けるのはあっという間だった。


「お疲れ様。今日は自分の部屋に戻るの?」
「ああ、勇者の件については……まだ学園長に頼りたいって気もあるけど、とりあえずは部屋で過ごすよ」


 学園長にそんな事を話していると、ソフィとリグがやってきた。


「あの二人寂しそうにしてたものね。じゃあ、もう帰ってゆっくりしていていいわ」
「ありがとう。二人とも、行こう」
「学園長さん、お疲れ様でした」
「お疲れ様でしたっ!」


 二人とも学園長に挨拶してから、A-975号室に帰ってきた。


「あぁ〜懐かしい……」


 いつもの部屋。いつも感じない部屋の臭いを嗅ぎながらベッドに倒れる。
 それに合わせてソフィも横に倒れてきた。


「クロア。早速だけど話がある」
「あぁそんな事言ってたな。言って」
「……クロアは後1年で18歳。成人だよな」


 言いづらそうに喋っていく。


「そうだけど」
「私も!!」


 ソフィは成人になっても中身が未成年だな。


「18歳になったら……結婚してくれないか」
「結婚……?」
「これ……」
「……っ!!」


 リグが俺に渡してきたのは、綺麗な指輪だった。
 2匹の竜がグルグルと巻きついて指輪の形になっていて、2匹は口で一つの透明な宝石を加えていた。


「い……いいの……か? 結婚……?」
「ああ。18歳になったらすぐに結婚しよう」
「わぁ〜……理想の夫婦〜」


 俺がリグと結婚……二人の家庭を築いて、家族を持って……死ぬまで一緒に……。


「騎士カフェが終わったら、言おうと思っててな。そんなに喜んでくれると俺も嬉しいよ」
「ありがとう……でも私……女らしい事できないし、家事もできないし……」
「大丈夫。誰だって最初はそうだ」
「リグにはたまに悪い事するし……」
「可愛い方だ」
「本当に……私なんかと結婚してくれるのか……?」
「ああ。俺はそんなクロアが大好きだ」


 俺は嬉しかった。嬉しくて恥ずかしくて、リグの癖に俺にこんな思いをさせやがって、なんて思って。ただ目から流れる涙を拭いて抱きついた。


「リグだけだからな……私の唯一の好きな人」
「嬉しいな。俺も唯一の好きな人はクロアなんだ」


 男と付き合うなんて、って最初は大きなモヤモヤが胸の中にあった。でも、前世の親友でもあるリグと一緒にいる内に、俺が本当にリグを好きになってしまった事に気づいた。
 それから恋愛に発展するまで、あっという間だったな。二人ともイチャイチャして、まるで前世と変わらない親友のように話して。そしてついに結婚。
 俺が女にならなければできなかった結婚だ。


「良かった……生まれてきて……」
「そこからかよ」
「ふふっ……」


 もしかすると、いつの間にか俺の中身まで女になってしまったのではないだろうか。そんな心配も浮かんできたが、今はこの喜びを噛み締めたい。


 それなりの時間抱き合って、今日1日の疲れもあり寝ることにした。
 ソフィもリグも同じベッドで。まるで夫婦と子供のように……こんな幸せな未来が待っているのかと思うと、ドキドキが止まらない。


ーーーーー


ーーーーー


 次に目を覚ましたのは外が暗くなってからだった。
 リグも、早く寝たせいで起きてしまっている。ソフィは気持ちよさそうに熟睡してるけど。


「寝れないか?」
「ああ。リグも?」
「俺もだ」


 ソフィを起こさないよう、隣のベッドに移って小声で話をする。


「リグ……甘えてもいいか……?」
「珍しいな」


 深夜テンションと結婚の喜びが合わさって、俺は自分でも気づかなかった本心が漏れだしてきた。
 リグに抱きついて、顔を押し付けて匂いを嗅ぐ。


 すると、リグも両手で俺を抱きしめてきた。


「あと1年は我慢しようって思ってたけど……やっぱり無理だ」
「……好きなだけしていいよ」
「ありがとう」


 リグはゆっくりと俺の制服を脱がしていき、俺は下着姿になった。
 もう俺はリグに何をされたっていい、むしろ滅茶苦茶にしてほしいくらい。そんなテンションにいる。


ーーーーー


ーーーーー


 疲れきって眠った俺とリグが起きたのは、丁度次の日の朝だった。


「……おはよう」
「おはようクロア」
「んん〜……二人とも早いよぉ〜……」
「ソフィは寝てていいよ」


 俺とリグの間には、何か大きな物で繋がっているような、そんな感じがした。
 少しだけリグに微笑んで、すぐに下着と制服を着る。


 昨日が歓迎会だった為、今日は授業も何も無い休み。1日自由だ。


「ちょっと学園長のとこに行く」


 まだハッキリしない目を擦りながらリグにそう言う。


「送ってやるから、寝癖整えろ」
「は〜い」


 学園長には2つ話が残っているからな。平和教とディライ。邪神については話すことはなさそうだけど、平和教の時に何かありそうだ。


 手櫛で寝癖を整えて、立ち上がる。


「よろしく」
「行ってらっしゃい」


 リグに学園長室まで送ってもらった。


「あらクロアさんおはよう」
「やっぱり朝早い……」


 俺達よりも早起きしている。真面目アピールなのだろうけど、アピールする以前に本当に真面目なんじゃないかと疑いが出ている。


「平和教とティライの話、どうなった?」
「平和教については王国騎士団でなんとかするわ。問題はティライ」


 問題があるのか。


「捜索に行ったノアとダンテが帰ってこないの」
「えっ!?」


 あの仲の良いコンビが帰ってこない? 王国騎士団なんだから何か問題が起きるような事は無さそうだけど。


「だから今度、ジェイスに捜索に行ってもらうことにするわ」


 ああジェイスさんなら自分の存在を透明に出来るし大丈夫そうだ。学園長のような能力無効化系の能力を相手が持ってなければの話だけど。


「あまり気にしないで。私達でなんとかする」
「分かった。他に何か話があったら聞かせてくれ」
「昨日の夜は楽しかった?」
「帰らせてくれ」


 すぐに学園長に転移で部屋まで送ってもらい、今日一日の予定は何もなくなった。


「クロアちゃんおかえり〜」
「ただいま」


 ソフィもリグも、暇そうにしてるし今日は何をしようかな。

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