女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

49話 勇者サトウの実力はやはり勇者



 どうも勇者サトウです。いきなり異世界に召喚された時はビックリしたけど、よく考えるとこれはチャンスなのでは?
 小説に良くある展開。そう、俺はこの可愛い女性を始め、最高のハーレムを作るんだ! 勇者である俺は、きっと物凄いチートな能力を持ってるんだと思う!


「ステータス」


 なんとなくそう呟いてみると、脳内に沢山の文字が浮かび上がった。


「おぉっ……えっと、何何?」


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職業 : 勇者
称号 : 召喚されし英雄
取得能力 : 【鑑定】【自動翻訳】【全属性魔法】【時間操作】【再生】【全ステータス2倍】【魔力武装】


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 お、おぉ……お!? 時間操作って能力凄そうだぞ!? 鑑定と自動翻訳はよくある能力っぽい……とりあえず時間操作に鑑定を使ってみるか。


 【時間操作】──時を自由に操る事が出来る。止めたり早送りしたり、巻き戻しなんかも。この世界は君の思うがまま!!


 すげぇぇぇえええ!! これがあれば、時間を止めてる間に何でも出来るって事か! もし何かやらかしたら巻き戻して……これは強い。


「んん……」
「っ!」


 ベッドで寝ていた女性がモゾモゾと動き始めた。そろそろ意識を取り戻す頃なのだろう。


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 ここは……ベッドの上か。どのくらい気を失ってたんだ……。


 少しだけ足を伸ばして、顔についていたヨダレを手で拭く。


「……ん?」


 人の気配がして、眠たい目を擦りながら体を起こす。


「はっ、初めましてっ!」
「……君は……?」


 部屋に1人の男がいた。


「ゆ、勇者のサトウです! ……あ、あのっ、パンツ!」
「パンツ? ……あぁ、すまない」


 スカートが完全にめくれていた。
 全く……アルの奴、一方的に俺の魔力使い切って気を失わせるとか酷すぎる。


 っていうか、いまコイツの名前サトウって言わなかったか? ……あ、日本から召喚されたんだから当たり前か。


「私はクロア。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」


 見たところ高校生……若いな。


「…………」
「あの〜……クロア……さん」
「なんだ?」


 まだ意識がはっきりせずにボーッとしていると、サトウが話しかけてきた。


「俺の為に魔力使ってくれて……ありがとうございます」
「あぁいいよ、サトウ君は悪くない。あのクソ王子に無理矢理させられただけだし」
「それは酷いですね……」


 サトウは意外と冷静に状況を把握していた。普通召喚された人は混乱して色んな事を考えたりするんだけど、コイツは人の話に耳を傾けてばかりだ。


「この世界について何か聞きたい事があるなら何でも聞いてくれ。私が知っている範囲で教えてやる」
「あっありがとうございます! じゃあえっと……この世界に魔物は存在しますか?」


 魔物……そういえば俺はいままで1度も見たことがないな。リグは冒険者してたから見たことあるんだろうけど、俺はずっと安全な場所に居たからな。
 ただ、本を読んだ限り魔物というのは存在する。


「ああ。有名なゴブリンやスライムなんかもいる」
「有名な……?」
「他に何か聞きたい事があれば聞くといい」


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ーーーーー


「他に何か聞きたい事があれば聞くといい」


 クロアさんは優しいな。こんな俺にも優しく接してくれる。元の世界では、女の子達に避けられるような存在だったけど……嬉しい。


「じゃあ最後の質問で……俺はこれからどうしたらいいんですかね……?」
「これから……それは王子に聞くといい。私は召喚を手伝っただけだ。それ以外の目的は知らない」


 そうか……。


「じゃ、じゃあ今日はゆっくりする……という事ですかね」
「そうだろうな……ベッド1つしかないし、私は床で寝る」
「え? クロアさんの部屋、無いんですか? 」
「突然ここに呼ばれたんだ。クソ王子が用意してさえいれば勇者に迷惑をかける事はなかったんだけど……」
「あぁっ! いえ!! そのベッドはクロアさんが使ってください! 俺は椅子に座って寝ます!」
「そうか? 悪いな」


 こんな綺麗な女性に床で寝させるなんて許せない。それに俺は勇者だ。人をそんな風に扱う事は出来ない。


「じゃあ私はしばらく眠るけど、サトウは暇じゃないか?」
「暇……といったら暇ですけど、魔法の練習をしてみたいので」
「魔法の練習? なら私が教えてやろう! こう見えても私は先生をしているからな」
「本当ですか!」


 クロアさんが笑った。思わず見惚れてしまいそうになったが、すぐに近づいてきたため真剣な表情を作る。
 ……良い匂いだ。


 それから俺は、クロアさんに魔法について色々と教えてもらった。
 全ての属性の魔法が使える、という事が分かった時には凄く驚いた表情をしていた。そんな顔も美しかった。


 喋る度に心地好い音が耳に入ってくるので、俺は今最高のリラックス空間にいる……。


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「凄いな……魔法使うのは初めてだよな?」
「初めてですけど……映画とかでは見たことあります」
「初めてで完璧に……もう私を超えてる」


 そういってクロアさんが少し落ち込んだ表情をした。


「やっぱり勇者というのは……凄いんだな」
「そっ、そんな事ありませんよ! 俺なんてダメ男で、友達いないし……全然モテないし……」
「そうか? 私からはサトウは悪くないと思うんだけど」
「えっ……」


 そういって首を傾げるクロアさんに、俺は思わず顔を隠してしまった。もしかして俺……クロアさんとワンチャンある?


「よし、今度は全身の魔力に意識を集中させてみてくれ。属性は自由でいい」
「……あっ、じゃあクロアさんと同じ光魔法で……」


 いままで教わったコツを活かして、全身に流れる魔力に集中する。


──バチッ


 ん? 何か周りが眩しく……。


「ってえぇっ!? 体が全部電気になってる!?」
「嘘だろ!? いきなりっ……っていうか……100%!?」


 これにはクロアさんも口を大きく開けて動揺している。


「こっ、これはっ!」
「とりあえず魔力を落ち着けよう!」
「はいっ! ……ふぅ……」


 まるで海賊漫画に出てくる【神なり人間】のように、全身が青い電気になった。


「ビックリした……」


 バクバクと鳴る心臓を抑える。


「……えっと……勇者様。いままで無礼……申し訳ありませんでした……」
「ええっそんなっ! 頭を上げてくださいっ!!」


 突然クロアさんが土下座するもんだから、更に寿命が縮まった。


 あぁ……このくらいのチートでこんなに驚かれるなんて……。

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