女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

45話 本心を打ち明け、認め合う2人

「クロア先生〜! あの先生は?」
「今日はクロア先生だけ〜?」
「今日からしばらく、私一人で授業をする事になった。前までいた先生はもう来ないけど、大丈夫かな?」


 今俺は生徒達の前に立ち、前の先生がいなくなった事を伝えている。


「やったぁ! あの先生苦手!」
「僕もあの先生嫌いだった!」
「クロア先生だけでいいよ〜!」


 子供はなんて素直なんだろう。


「先輩達も良いですか?」
「「おう!」」
「俺達はクロアちゃんに教えてもらいたいんだよ」


 俺の先輩達も認めてくれたようだ。
 しかし、俺1人で先生をするとなると……資料を書く役割が俺になってしまう。なるべく早めに新しい先生が欲しいな。


「じゃあ魔力コントロールが完璧にできるようになった人には、手伝ってもらいますからね」
「頑張る〜!」
「っしゃ! 頑張るぞっ!!」


 後輩も先輩もやる気を出してくれたみたいだ。


「じゃあ今日もどんどん練習していきましょう」


ーーーーー


──「「クロア先生お疲れ様!」」
「お疲れ様」


 今日も無事に、何の成長も見られないまま授業が終わった。俺の教え方が悪いのだろうか……それとも、これが普通なのだろうか。
 もっと先生らしくしていきたいな。


 前の先生が書いていた資料を片付け始めると、教室に誰かが入ってきた。


「よっ」
「リッ、リグ。ああっ!」
「手伝うよ」


 リグにビックリして資料を落としてしまったが、全て拾ってくれた。


「はい」
「あ……ありがとう」


 ドキドキしたよく分からない感情を抑えながら礼を言う。


「最近大変そうだな」
「そう……かな」
「たまにはゆっくり休んだらどうだ? 一緒に話さないか」
「でも、この資料書かないといけないし……」


 リグの目線が俺から資料へと移る。


「じゃあそれ書き終わったら一緒に息抜きしようぜ。いいだろ?」
「ダメじゃないけど……分かった」


 目が合う度に、俺の心臓が強く飛び跳ねる。この感情の正体が分からない。いや……分かっているのかもしれないが、それを認めるのが怖い。
 俺は……リグの事が恋愛的な意味で好きだ。


 リグと並んでA-975号室へと向かう。このシチュエーションが、先生に襲われそうになった時を思い出し、ついリグでそういう妄想をしてしまった。


「どうした?」
「なっ、何でもない!」


 リグに、恋愛的な意味で好きになってしまった。なんて言ったらどう思われるだろうか。前世からの付き合いで、俺が元男だと知っているのはリグだけ。もし告白してしまったら、俺はホモだと思われてしまう。
 そうなると……最悪今の関係が崩れてしまうかもしれない。


 もしかすると、身体が変わって本能的な部分までも変わってしまったのだろうか。ホルモンバランスて性格は変わるという。なら、女性ホルモンによって男が好きになる事もありえるんじゃないか。
 それを理由にすれば……。


「リグ……」
「なんだ」
「部屋に着いたら、まず相談したい事があるんだけどいいかな」
「相談? あぁ俺に出来ることなら何でも協力するよ」
「ありがとう」


 部屋に到着するまで、俺は心の準備をした。


ーーーーー


 この時間帯はソフィもティライもいない。2人だけの空間だ。


「適当に座って」
「分かった」


 荷物置きのベッドに資料を置いて、俺はリグと向かい合って座る。


「……相談なんだけど……」
「ああ」
「驚かないで聞いてほしい」
「分かった」
「……俺の身体が女になったせいで、リグの事を恋愛的に好きになってしまった……かもしれない」


 それを言った瞬間、自分の顔が熱くなった。顔を隠したくなる衝動を抑えて、グッと堪える。


「知ってる」


 帰ってきたのは、意外な言葉だった。


「それを知ってて、俺はずっとクロアの傍にいた」
「知っててって……私自身が今まで分からなかったのに?」
「分かりやすいんだよ。俺と合う度に顔を赤くしてモジモジして……いつクロアにそう言われるかこっちがドキドキしてた」


 ずっと知られてた……じゃあ返事……。


「リグは……私の事をどう思ってるんだ?」
「俺も一緒。恋愛対象として、俺はクロアが好きだ」
「っっ……!」


 ついに恥ずかしさに耐えることが出来ず、顔を両手で覆った。そして、あまりの嬉しさに目から涙を流した。
 俺のことを認めてくれた。前世の事を知っていながら、俺を認めた上で好きになってくれた。


「嬉しい…………」
「俺も、クロアの口からその言葉が聞けて嬉しいよ」
「え?」
「いままで、俺達に感情を表したこと少なかったよな。ずっと強がってた。でも今やっと、俺に本心を打ち明けてくれた。嬉しいよ」
「私の方が……もっと嬉しいって……」
「……クロアッ……」
「っ!」


 突然、リグに押し倒された。


「……あんまり可愛く泣くから……理性が吹っ飛びそうだ……」
「…………いい……リグになら……」
「……許してくれ……」


 その日、俺の初めてをリグに捧げた。


ーーーーー


──事後。俺はベッドの上で放心状態になっていた。


 勢いでしてしまったとはいえ、俺は初めての経験をしたんだ。最初こそ痛かったものの、リグを思う気持ちが強くなるほど快感へと変わっていった。
 でも、23歳のリグが未成年に手を出した事がバレたら犯罪になる。なんとかバレないようにしなければならない。


「この事は……2人だけの秘密だな」
「っ……その顔で言われるとまた罪を重ねそうだ」


 横で寝ているリグが、少し笑いながら目を逸らした。


「なぁクロア」
「……ん?」
「俺のこと好きか?」
「言わせるなよ……好きに決まってるだろ」
「俺も好きだ」
「っ……うるさい」
「笑ってるじゃねぇか」


 改めて愛を確かめてくるリグに、俺照れ隠しのつもりでそっけない対応をしたのだが、感情はバレバレのようだ。


「まるで犬みたいだな」
「ワン」
「はっはっはっ」


ーーーーー


 次の日、俺は昨日の出来事を思い出しては恥ずかしさで悶えていた。

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