女嫌いの俺が女に転生した件。
23話 天才、いきなり先輩を超える
学園に来て初めての授業。リグと一緒に大きな部屋にやってきた。
前では女の先生が資料なんかを整理して、生徒達が集まるのを待機している。
「魔力コントロールの授業だ。クロアは出来るかもしれないけど、今の新入生はほとんど出来ないからな」
「なんで先輩達もここに?」
数人の先輩も、この教室にやってきている。魔力コントロールが出来るのなら、もう来る必要は無いんじゃないのか。
「魔力コントロールが出来る人は応用を習うんだ。魔力にイメージを纏わせて、新しい魔法を生み出す」
「イメージ……ねぇ……」
魔力にイメージを纏わせる、って随分と簡単そうで難しいな。
すると、先生が手を叩いた。
「注目。新入生の人は先輩達と来ていると思うけど、基本的に新入生と先輩は別の内容を受けることになる」
魔力コントロールを新入生。それの応用を先輩達。だな。
「新入生は教室左側に。それ以外は左側に集まれ」
「先生、ちょっといいですか」
「なんだ」
「クロアは魔力コントロールが既に完璧なので、俺と一緒に受けさせてください」
リグが先生にそういうと、俺と先生の目が合った。
「おぉ……君があの天才と呼ばれているクロアちゃんか」
片目が黒い前髪が隠れていてよく分からないが、キラキラとした目を向けられている。
周りの生徒達も俺を見て驚いている。
「じゃあ魔力コントロールを実際に行ってもらって、それから判断しよう」
「クロア、前に出ろ」
「えっ」
リグに背中を押されて、先生の横に立たされた。
な、何をすれば……皆の視線が集まってる……うわぁ……。
「そう緊張するな。クロアちゃんはどんな魔法が使えるんだい? 炎だったり水たったり、風とか?」
「えっと……光魔法です」
「「光!?」」
先生と先輩達が声を揃えて驚いた。そんなに驚く事でもないというのに、そんなに光魔法というは珍しいのだろう。
「じゃ、じゃあちょっといいかな……」
「……?」
先生が俺に右手を出してきた。握手? とりあえずその手を握る。
「そのまま弱い魔力、流せる?」
「流せますけど……」
「お願い」
ティライもこんな事してたな。何か意味があるのだろうか。
弱めに魔力を流し込むと、俺の右手と先生の体がパチパチと音を立て始める。
「んん…………んふ…………」
「「おぉ……」」
先生が気持ち良さそうに身体をくねくねするので、魔力を止めた。
「あ、あと少し……」
「わ、分かりました……」
「んぁ…………ぅ……っっ〜〜」
「「おぉぉぉ!」」
1度全身をビクンとさせた後、先生はしばらく動かなかった。
何なんだ……。
「凄いわね。これで先輩達と同じ内容を受けてもいいわ」
「あの……今のにどんな意味が?」
「魔力コントロールを確かめただけ……後は光魔法は気持ち良いって話を聞いてね」
光魔法は気持ち良いって……何か色々と嫌なんだが。俺の魔力で気持ちよくなられても、こっちは不快になるだけ。
すぐにリグの元に戻ると、先輩達からニコニコとした顔を向けられた。
「それじゃあまずは新入生に色々と教えるから、先輩組はクロアちゃんと一緒にこの前の続きね」
「「は〜い」」
すると、すぐに俺は囲まれてしまった。
リグの後ろに隠れても、背後にも先輩がいるため逃げ場がない。
「クロアは人が苦手だから、囲むのはやめてくれ」
リグの言葉で、数人は俺の前に移動した。
「不良が保護者ヅラしてる」
「可哀想に」
なんてリグを悪く言うような言葉が聞こえたので、ここは1つ何か言わなければならない。
「リグの事を悪く言わないでください」
少し強めに言ってみた。
「可愛いなぁ……」
「抱いて寝たい」
「小ちゃい」
「ほっぺたプクッてしてる」
どうやら先輩達に感情を顕にするのは逆効果のようだ。
「と、とりあえずクロア。魔力にイメージを纏わせる練習をするから、離れるぞ」
変質者集団から逃げるように、距離を置いた。
「こら上級生! 可愛いからってサボるのは許されないよ!」
「ちぇっ」
先生からのお叱りもあり、なんとか平和に勉強できそうだな。
「で、イメージを纏わせるってどうするんだ?」
「まあ簡単な事だ。魔力を相手に送る時と同じように、手の平に剣の形を思い浮かべれば、その形で魔力が集まる」
「なるほど」
ってことは、手の平に光の玉を集めるのもイメージを使ったから出来たのか。
「……じゃあ私、それもう出来るけど」
「は……? な、何かやってみろ」
「えっと……光の玉で」
そういって手の平に拳サイズの光の玉を作ってみせる。
「マジか……そ、そのままにしててくれ。先生!」
驚いたような表情を見せたリグが、すぐに先生を呼んだ。
「ん〜? ……おぉ! なんだ、イメージも完璧じゃないか!」
「「は!?」」
「「嘘だろ!?」」
皆が光の玉を見て驚きの声を上げている。普通にこれくらいできるだろ。
「もう先輩超えちゃったみたいだな!」
「あははは……」
「じゃあ、次のステップに進もうか」
「待ってくれ先生!」
「新入生が俺達より先ってないだろ!」
「そうだ!!」
先輩達が焦ったように講義してくる。
「残念だったな。天才は違うという事がここに証明された。悔しいなら、イメージを完璧に生み出すことだな!」
「くそ〜っ!」
「頑張るぞ!!」
良いやる気を与えれたようで何よりだ。
「新入生達! さっき教えた事を頑張って練習しててくれ!」
「「は〜い」」
先生が俺に向かい合って、ニコニコしている。な、なんだ……個別授業って悪いイメージしかないんだが。
「クロアちゃん凄いなぁ……」
「そうですか……」
「うん……それに可愛いし、将来凄い人になれるよ」
「は、はぁ」
「…………」
「あの、何かしないんですか?」
「はっ! ついつい見惚れてしまっていたよ」
この先生も学園長と似たような匂いがするぞ。いつキスされるか分からないし、常に警戒していよう。
「もう一回光の玉出せる?」
「は、はい」
手の平に弱めの玉を作り出す。
「今度はそれを手の平からもう片方の手に移動させて」
「……あっ」
もう片方の手で触れると、光の玉は空気中に散っていった。
「天才も流石にこれはできなかったか」
「そんなに期待されると悔しいです……」
「ここまで出来ること自体凄いから、悔しがる必要は無いよ」
じゃあ俺に大きい期待を持たないでくれ。前世じゃ無能の引きこもりだったのだから。
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