女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

18話 目立ちまくりの歓迎会



 ソフィがあんまりにも構ってほしいと行ってくるので、仕方なく学園長室から出た。
 学園長にグラウンドまで連れていってもらって、一緒に芸を見て回る。


「あっ! あれ可愛いっ!」


 ソフィが指を指したのは、先輩達が作ったステージの上で可愛い衣装を着て踊る女子生徒達の姿。
 前世とは違う世界の顔の作りの為、本物のアイドルのように綺麗だ。でも、ああいう綺麗な顔の人こそ性格ゴミだって言うしな。


「って学園長さん。皆の芸より学園長さんに目線集まってますよ?」
「目の前の頑張りよりも、地位のある方を見る。夜の理ね」
「何言ってるんですか……」


 このままだとステージの上で緊張して踊ってる人達が可哀想だ。


「離れますよ」


学園長とソフィの手を引いて、なるべく人がいない場所に移動した。
 結局芸を見ようとしてもまともに見ることが出来ない。学園長がいるからだ。


「……歓迎会なんだから、もっと歓迎されるような事ないんですか? 学園長がいるから何も出来ないじゃないですか」
「悲しいわ……」


 学園長には悪いけど、ここは1度帰ってもらうしかないか。


「クロアちゃん、怖い人達きた」
「ん?」


 ソフィが見ている方向に、いかにも『オラオラ系』な男集団が集まっていた。ポケットに手を入れて、チェーンを腰に付け、武器を常に持ち、鋭い視線を周りに浴びせている。


「あっ」


 目が合った。


「なぁ、おい、アイツじゃねぇか?」
「あぁ? お、いるじゃねぇか」
「でも学園長までいるぞ」


 ん、ん? 何だ? 俺に何か用があるのだろうか。


「こんにちは〜」


 ヤンキー集団達が丁寧な口調で俺達の元にやってきた。学園長がいるからだろう。


「君、クロアちゃんだよね? 天才って言われてる」
「えぇまあ……そうですけど」
「だな」
「よし」
「おう」


 集団は何かを確かめ合うように目を合わせて頷いた。何なんだ……?


「実は、俺達クロアちゃんと仲良くなりたい訳」
「こんな怖い格好してるけど、優しいんだよ」
「友達にならない?」
「友達っ…………!」
「そう」


 ついに……ついに男友達が出来るのか!?


「えっと、友達になろうと思った理由というのは……?」
「あぁ〜……ちょっと学園長の前じゃ言いにくいな」
「そう? じゃあ私は少し離れているわね」


 そういうと、俺の背中をポンと押してどこかへと去っていった。


「ソフィはどうする?」
「クロアちゃんといる」
「で、友達になりたい理由というのは?」
「実はね、クロアちゃんって頭良いんだよね?」
「はい」
「守護七戦士って知ってる?」


 それは確か学園長に教えてもらったから知ってるな。
 コクンと頷く。


「俺らさ、そいつらとは反対勢力みたいな? 敵みたいな関係な訳」
「はぁ、そうですか」
「それでさ、天才なクロアちゃんがそいつら側にいったら俺達困るんだよ……なぁ」
「あぁ」
「まじで困る」


 なるほどねぇ……例えると生徒会と不良組、どちらに入るかって事だな。生徒会は規制が多いけど印象は良い。不良組は自由だけど印象が悪い……か。


「ちなみに聞きますけど、リグリフ君はどっち側で?」
「俺達のリーダーだ。あの事件がある前に、クロアは特別だ。とかなんとか言って手を出すなって言われててよ」


 はぇ〜……じゃあ俺は既に目をつけられていたのか。何が特別なのかは知らないけど、とりあえず俺という存在の奪い合いみたいな物か。
 ……でも確か、守護七戦士達って地位を守る為に俺と敵対しようとしてるんじゃ……あ、それは学園長の適当な作り話か。


「頼む!」
「この際、先輩後輩なんて関係ねぇ! お願いします!」
「「お願いします!!」」
「えっ! ちょっ!?」


 ヤンキー集団達が俺の目の前に膝をついて頭を下げた。それも5歳児に。
 嘘だろ……やめてくれ……目立ってるじゃないか。


「と、とりあえず頭を上げて……」
「俺達側に入ってくれるまでずっとこうする!」
「頼む!!」
「わ、分かったから! 分かったから頭上げて!」
「じゃあいいんすか!」
「いいから!」


 このまま目立ってると変な被害を受けそうだ。とにかくこの場を収める為にも、そして男友達を作る為にも……リグリフの目的を知る為にもコイツら側に入るしかない。


「よっしゃぁっ!! リグリフさんに褒められるぞ!」
「っしゃっ!」
「俺達すげぇんじゃね!?」


 優秀な後輩を味方につけれて嬉しいか。


「クロアちゃん……私……」
「あ! ソフィアちゃんだっけ? クロアちゃんの友達でしょ。いいよ、俺等の中に入りなよ」
「やったっ! クロアちゃんと一緒!」
「と、とりあえず場所移動しよう? 目立ってるから」
「あ、俺達はもう用事済んだんで! まだ会おうな! クロア!」


 そうして嵐は去っていった。


「……」
「お疲れ様」


 学園長がニコニコとやってきた。


「一応防護魔法を付与していたのだけれど、問題なかったようね」
「は、はい。なんか友達になったみたいです」
「クロアさんは良かったの?」
「……? 何がですか?」
「不良と友達になって」


 不良と友達になって……?


「不良といっても、根は優しい人達なんですよ? 仲間思いで、気遣いができて、皆と楽しむ事が好きな良い人達じゃないですか」


 女集団なんかよりマシだ。


「ふふ、クロアさんは人を平等に見てるのね」
「……?」
「何でもないわ。これからどうするのかしら?」


 これから……学園長がいる限り目立つ事に変わりはないしなぁ……。


「リグリフさん、意識が戻ったらしいわ」
「っ!? じゃあすぐに行く!!」
「? ……私もっ!」


 ソフィはよく分かってないようだが、この前の事件はリグリフが起こした物だ。元凶は最も大きな何かがあるっぽいんだけど、それを確かめる為にリグリフと会わなければならない。


「分かったわ。じゃあ、しっかり捕まるのよ」


ーーーーー


「っ! ……」


 突然現れた俺達に一瞬ビックリして、目をそらしたリグリフ。ベッドに座っている。
 学園長に背中をポンと押された。話してこい、という事だろう。


「リグ……体調は大丈夫か?」
「……大丈夫だ。それで、何の用だ」
「この前は助けてくれてありがとう」
「っ……何の事だ」


 白を着るつもりか。


「私を……何かから守る為に、あえてバレないような所に閉じ込めたんだろ? その後、リグリフは私のために戦った。獣人族のリグリフだから、そのまま私達を助けに来ることが出来た。でも、負けてしまったから助けにこれなかった」
「…………」
「本当は長時間監禁するつもりはなかったんだろ」
「……本当にお前は頭が良いな……まるでアイツみたいだ」
「アイツ?」


 リグリフは、窓の外を見て何かを懐かしむように "アイツ" といった。


「なぁクロア。お前、アイツらと会ったか?」
「アイツら……? あのオラオラ系の集団達の事?」
「そうだ。そいつらと話してどうなった」
「友達になったよ。仲間にもなった」
「そうか……ありがとう……」


 ……まだ俺に何も話してくれないのか。リグリフは何と戦って、何を守って、どんな目的を持っているのか。


「……話してくれないか」
「何をだ」
「まるで昔の友人だったように言った、アイツの話」
「……あまり話したくない」
「頼む」
「…………アイツというのは前世の話だ」


 前世……!?

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