女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

14話 犯人は分からない……お化け?

 俺とソフィは先生達が会議を行う部屋に連れられた。
 俺が話しやすいように、ティライが色々と質問をしてくれるそうだ。他の先生達はメモを取ろうとしている。


「質問する前に一ついいですか?」
「どうぞ」


 先生達の前なので、お互いに敬語を使う。


「リグリフさんが傷だらけで見つかった事に心当たりはありますか?」
「傷だらけ……?」


 リグリフが……傷だらけ? リグリフは俺達を監禁した張本人だぞ? ソイツが傷だらけって……。


「どういう事ですか?」
「詳しい事は分からないのだけど、リグリフさんは大きな傷を負って、今も意識が戻らないの。今は医療室で休ませてる」
「……リグリフさんが傷だらけになった事には……何も分かりません」


 もしリグリフを傷だらけにした人物が俺達の味方だった場合、真っ先に俺達を助けに来るはずだ。しかし助けに来なかった……一体誰なんだ……?


「では次に。クロアちゃ……さんや、ソフィアさんを武器庫に閉じ込めた犯人。分かりますか?」
「リグリフです」


 正直に答えた。


「私がソフィアさんを探している時に、リグリフさんが手伝ってくれると言って、武器庫まで一緒に来たんです。その後、後頭部を何かで殴られて気絶しました」
「おぉ……」
「ふむ……」


 5歳とは思えない説明に、先生達もつい唸った。


「つまり……リグリフさんが2人を閉じ込めた。その後にリグリフさんが傷だらけになったと……そういう事になりますね」
「失礼、質問してもいいだろうか」


 1人。羊のような顔をして細い眼鏡を掛けた先生が手を挙げた。それに対しティライは「どうぞ」 と返し、質問が始まった。


「クロアさんとリグリフさんに、以前から何らかの関係はあったのか聞きたい」
「1度図書室で目を合わせた程度です」
「……なるほど。失礼した」


 これに感じては俺もサッパリ分からない。何故リグリフは俺とソフィアを監禁したのか。そして、リグリフを傷付けた犯人が誰で、何故ソフィアも武器庫にいたのか。


「……あ」
「何か分かりましたか?」
「あぁはい。もしかすると、ソフィアさんが武器庫に監禁されたのは私を誘き寄せる為の罠だった可能性があります」
「そう考えた根拠は?」
「そもそも、ソフィアが行方不明にならなければ、私がリグリフと武器庫に行くという条件は満たされなかったはず」
「……つまり。クロアさんを武器庫に監禁した上で、リグリフには何らかの目的があった、と考えれるな」


 羊眼鏡の先生が考察している。
 リグリフが俺を監禁しないければいけない理由……監禁か……、もしかするとそれはちょっと違うのかもしれない。


「リグリフは、私を監禁したのではなく安全な場所に入れた。という事は考えられるでしょうか」
「ふむ……確かに保管塔は重要な物もある為、それなりに安全ではある」


 赤髪で体育系の肉体をした先生が、保管塔についての資料を眺めながらそういった。
 つまり……リグリフは俺を何者かから守ったという事なのか……? 魔法を使うと位置がバレる……だから武器庫が爆発すると事前に伝えて……。


「……ここから先はリグリフさんが目を覚まさないと分かりませんね」
「そうですね。……流石クロアちゃん、頭の回転が早いね」


 小さくティライが褒めてきた。しかし、この頭の回転が早いのは白ワンピースの神様に貰った能力だからな。俺自身の力ではない。


「感謝する」
「無事で何よりだった」


 大勢の先生達から感謝の言葉や、俺の心配をするような事を言ってもらえた。


ーーーーー


 今日は休め、と先生達から言われたので、部屋に戻ってベッドに入ったのだが……。


「ソフィ……なんで私のベッドにいるんだ?」
「んふふ……クロアちゃん好きっ……」


 何故かソフィに懐かれてしまったようだ。


「カッコよかったよ……クロアちゃん……」
「そ、そうか……」


 段々と俺を抱きしめる力が強くなる。


「……クロアちゃんにくっついてると安心する……」
「そ、それは良かったな……。そろそろ寝ないか?」
「ここで寝ていい?」


 布団の中から上目遣いで頼んでくるソフィ。


「ソフィのベッドは奥の方だろ?」
「嫌っ……クロアちゃんのベッドが私のベッド」
「あっちのベッドは?」
「…………荷物置き場」


 おいおい……なんで俺は学園長といいソフィアといい……女に好かれてしまうんだ。
 俺は恋愛する気はないし、キスしたりイチャイチャしたりする気もない。俺はただ男との友情が欲しいだけだ。


「ソフィ……私の事を好きな気持ちは分かったから。あっちのベッドで寝てくれるか?」
「……私はクロアちゃんの荷物なの?」
「はぁ……分かった……分かったから……。とにかくお漏らしだけはしないでくれ」
「しないもん、子供じゃあるまいし」


 お前は十分子供だよ! 俺もだけど。


「おやすみ」
「おやすみクロアちゃん……」


ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー



ーー
ーーー


「ーーん! クロアちゃん!!」
「な、何だよ……」
「お化け!!」
「はぁ? お化け……?」


コーン……コーン……コーン……


 耳を済ますと、部屋のすぐ外の廊下から足音が聞こえる。
 それも、まるでヒールで歩いているような音だ。


「見回りだよ……」
「違うって! さっきね! あっち側まで足音が行ったの!」


 そういって左の方を指指す。部屋の中で指されても分からないな。


「でね! 急に音がなくなったと思ったら、今度はまたあっちから足音が来てるの!!」


 そういって逆方向へ指を向けた。


コーン……コーン……


 確かに、段々と足音が近づいてきている。


「……見回りが二人いるんだよ。昨日の件もあるし、先生達警戒してるんだよ」
「嫌だ! 怖いもん!!」
「ぐぇっ……」


 そういって俺の身体をギュッと抱きしめてきた。
 はぁ……面倒臭いな。


「じゃあちょっと見てくるから、待ってて」
「う、うん。気をつけて!」


 眠い目を擦りながら、扉を開けて廊下の外を見る。


「……何もいないじゃないか」


 はぁ……無駄足だったな。


コーン……コーン……コーン……


「……」


 何もいない筈の廊下の先から、足音が確実にこちらへと近づいてきている。


「……」


コーン……コーン……コーン……


 確実に、見える範囲内に足音がある。それなのにそこには何も無い。
 恐怖で身体が動かない。


コーン……コーン……
「っ……!」


 来るっ!!
 咄嗟に目を閉じた。


コーン……コーン……コーン……コーン……


「はっ…………はっ……はぁ……はぁ……」


 足音が俺の後ろへと行き、段々と離れていく。


「クロアちゃん大丈夫!?」
「ソフィ……」


 緊張して呼吸を止めていて、今は必死に酸素を吸っている。


「……」


 とりあえず俺はベッドに戻った。


「な、何だったの……?」
「お化け……あれはお化けだ……」
「クロアちゃんでもこんなに怯えてるっ……ね、眠れなくなったから、起きよ? 寝たらお化け来ちゃうよ!」
「そ、そうだな……」


 眠気が一気に無くなり、それと同時に寒気が全身を襲っている。今はソフィと楽しい事を考えて夜を過ごさなければ……。
 きっと俺は疲れてるんだ……そうだ。


「何話そうか」
「えっと……えっと……クロアちゃんの好きなところ!」
「それはソフィ限定でしか話せない話題だよ……」


 その日の夜、俺とソフィは外が明るくなるまで、布団の中で話した。
 話した内容のほとんどが俺についてだったのは気にしない。

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