女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

12話 学園探検? そんな事より知識だ!



「クロアちゃん来たよ〜! あ、君がクロアちゃんと一緒に生活するソフィアちゃんだね。こんにちは」
「えっと、ティライ先生こんにちは」
「……」
「クロアちゃんどうしたの?」


 昨日の夜中にソフィとトイレに行ってから目が覚めてしまい、結局一睡も出来なかった。


「寝ていい?」
「学園内探検するんじゃないの? ソフィアちゃんも行く?」
「行きます。クロアも行こ?」


 嘘だろ……お前のせいで寝れてないんだぞ。


 結局ソフィとティライに手を掴まれて、無理矢理外に連れ出された。
 夜中に見た時と雰囲気の違う廊下。他の同年代の子達が走っていたり、先生と話してたりしている。


「じゃあまずは図書室に行こっか」
「図書室?」
「そ、クロアちゃんなら気に入るかもよ」


 ほぉ! 図書室があるのなら早速行って本を読みたいな! この世界について色々と知りたい事もあるし、何なら毎日1人で通ってもいいくらいだ。
 しかし、ソフィはと言うと……。


「あそこで遊びたい」


 と、子供達が積み木で遊んでいる場所を指差してニコニコしている。


「えぇっと……私とクロアちゃんは学園内を探検するんだけど、皆と仲良く出来る?」
「うん!」
「じゃ、じゃあ "一緒に遊ぼう" って声かけて混ぜてもらうんだよ?」
「分かった!」


 そういって走り去っていった。心配だな……あんなに我が儘な性格だし、様子を見ていたいけど……今は図書室が大事だ。


「図書室行こう」
「あれ、元気出てきたね」


 眠いなんて言ってられないからな!


ーーーーー


「ここが図書室。情報塔の1階だね、覚えた?」


 かなり広い図書室だ。天井まで何メートルあるのだろうか……そもそもどうやって作ったのかすら謎だ。情報闘とは何なのだろうか。


「情報塔って?」
「あぁ、この学園は5つの塔で出来ていてね。生徒達が生活する寮塔。先生がいる勉強塔。植物や動物を育てる食料塔。色んな情報を集める情報塔。そして最後に色んな物資を保管する保管塔があるの」


確か、最初に学園に来た時も大きな塔が3つ見えたな。あれでも全部見えてなかったのか。


「本、読む? ちなみに図書室の天井は、学園内の地図になってるの」
「えっ?」


見上げると、確かに地図のように線や文字が描かれていた。大きすぎて気付かなかったな……。


「じゃあ……しばらく図書室に居ていいか? 地図も覚えないといけないし」
「え、覚えれるの?」
「頑張るよ」
「私でも覚えきれてないんだけど……頑張ってね。私一緒に本読もうっと」


出来れば1人でゆっくりして読みたいのだが、変な輩に絡まれない為にも安全確保は大事だな。


広い図書室の中から、いくつか気になった本を持って椅子に座る。
ティライは、何やら先生や生徒達と会話しているようだ。意外に学園内では人気者の方らしい。


ーーーーー


「ふぅ……」パタン


やっと1冊の本を読み終えて、本を閉じた。
気づけばティライも俺の横で本を読んでいる。


「何読んで…………あぁ」
「な、何?」


恋愛小説のようだ。


「へぇ……」
「何よ〜……この気持ちは子供には分からないのよ」


そういって本を遠ざけた。意外と面白そうな内容に見えたけどな。


「クロアちゃんは何読んでるの??」
「いや、もう読み終えたんだけど。『フロンガード大陸の文化』についてね」
「太っ……読むの早いね」


集中できればあっという間に読み終えるレベルの本だ。
読み終えてから休憩しないとキツイけど。


椅子にだらしなく座って天井を見上げる。休憩中に楽な体勢で地図を覚えて、その後にまた本を読む。とりあえずこれをやっていればそれなりに大丈夫だろう。


「こんにちは〜ティライ先生」
「あぁ〜リオンちゃん」
「……?」


誰だ?


「ほら、この子がクロアちゃん」
「えっ!? あの天才って言ってた?」
「そう。ほら挨拶して」


? よく分からないが、挨拶すればいいのか?


「先輩、初めまして」


身長からして俺の年上、つまり先輩だ。


「ねっ! 凄いでしょ!!」
「凄い! 挨拶できるんだ!!」


えぇ……挨拶くらいできるでしょ。逆に他の子達は挨拶すらできないのか。


「ねぇクロアちゃん、何読んでた……の……」


俺の前に置いてある太い本を見て、笑顔が苦笑いに変わった。


「今さっきこの本を読み終わったんだって」
「そ、そうなんだ……すごっ…………」


ほら、5歳の子供がこんな本を読んでいたら流石に引くだろう。


「あ、そ、そうだ。話があってきたんだった。
あの、ティライ先生」
「何〜?」
「あそこの男子達が本でタワー作って遊んでるんですけど……注意しても聞かなくて」


あぁ〜ありゃ見た目からして不良生徒だな。耳にピアスしてる3人組。1人は……狼の獣人族か。


「おいリオン! 俺達に文句でもあるってのか!?」


その内の1人がニヤニヤしてこっちに叫んできた。


「あっ! おい見ろよあれ! ガキが太い本読んで大人ぶってるぜ!! ダッセ!!」
「コラッ!! クロアちゃんを悪くいうな!!」


ティライが子供みたいに両手を上に挙げて怒っている。


「クロア? あ、もしかしてあの天才って言ってた奴か?」
「あんなガキが天才? どうせ蜘蛛の巣に引っかかった虫を逃がした程度だろ」


それは酷いな。そんなんで天才なんて言われたら不登校になるぞ。


「おいガキ!! 調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
「新入生は部屋に引きこもっておねんねしてろ!」


酷い言いようだな。でも、あの黒い獣人族は静かに俺を見つめている。アイツだけちょっと違う雰囲気だ。
しばらく目を合わせていると、ふと口元が笑った気がした。


「図書室で騒いでいるのは誰かしら?」
「やべぇっ! 学園長だ逃げろっ!!」


突如現れたレズ……じゃなくて学園長を見た3人は、その場から凄い勢いで逃げていった。


「こんにちはクロアさん」
「あ、こんにちは学園長」


俺と学園長が挨拶をすると。


「学園長から声をかけに行くって……あの子一体何者なんだ?」
「学園長のお気に入りらしいぞ……」
「そんなに凄い人なのか……」


なんて声が聞こえてきたが、全部外れだ。ただ俺の見た目が学園長のタイプだったってだけで、大きな意味はない。


「もし苛められそうになったら、私の名前を呼ぶのよ」
「わ、分かりました」
「ふふ……元気出して。そんな顔してると、美しい顔が台無しよ。変なことを言われても、間に受けないの」


いや、この顔は苛められて傷ついた顔じゃなくて、ただの寝不足による目付きの悪さだから。俺あれだけで泣かないから。


「学園長さん。どうしてここに?」
「クロアさんが情報塔にいるときいて、様子を見にきたの。こんな本を読み始めた時はビックリしたわ」


そんなに前から俺の事見てたのかよ! それってほぼストーカーに近いぞ!


「クロアって子……何者なんだ……」
「学園長直々に会いに来るなんて……」


ほらほら、変に目立っちゃったじゃないか。俺は平穏な学園生活を送りたいんだよ。

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