女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

2話 赤ちゃん生活(超速で過ぎ去る時間)



その後、フワフワしたベッドの上に寝かされて、女性はいなくなった。


「ぁう……」


声が出しにくいな……まだ生まれて間もないのだろう。
 というか眠い。かなり眠い。
 その眠気に抗うことなど出来ず、俺は眠った。


ーーーーー


そして目を覚ますと、またオパイの時間。
 現実のオパイってのはこんなに柔らかい物なのか。


「クロアは泣かないねぇ……」
「ぁ……?」
「ふふふ」


この人が俺の母親なのだろう。俺が顔を見ると、笑いながら無理矢理胸を口に入れてきた。飲めっていうのか。


「ん…………ふ……」


本能的に飲んでしまう。チューチューと吸う度に、母親がエロい声を出す。


「ケプッ」


ゲップをした後、母親の子守唄を聴きながら眠った。


ーーーーー


ーーーーー


そんな生活が続いたある日、ついに俺は外の景色を見ることが出来た。
母親に抱っこされて窓際にやってくると、外は中世的な造りの建物が並んでいて、そんな景色の中を動物のような姿をした人等が歩いていた。


「あぅあ〜?」
「外が気になるの?」
「ぁ〜」
「ふふっ」


なにわろてんねん。


ーーーーー


ほとんど寝てばっかりの生活なので、時間の経過が早く感じられる。
 最近は生活リズムも整ってきて。なんとか自分で寝返りを打てるようになった。


夜中に起きたら、自分で寝返りをうって寝やすい体勢になる。寝返りがうてるって凄い便利。


 他にも、木の机の上に座って母親と遊んだりしている。といっても、ただ積み木を重ねるだけの単純な作業。それでも、これをする度に脳が刺激されているのが分かる。


「クロア……これはダメよ」


積み木を卑猥な形に重ねると、母親はそっと積み木を崩した。


「……? ぅあ〜?」


俺は部屋の壁に飾ってある剣に気づいた。
 指を指して、母親に興味の対象を伝える。


「アレは危ないから触っちゃダメよ。お父さんの仕事道具なの」


仕事……道具? あんな凶器を仕事って……。ケモ耳人間がいる時点でウスウス感じていたが、まさかここは『剣と魔法の世界』とかいうアレだろう。
 確か神様が言っていたな。貴族の娘って……つまり俺は貴族なのか。


 窓の外を歩いている人達よりは豪華な服を着ているなぁとは思ったが、なるほどね。


ーーーーー


段々と食事も変わっていき、離乳食となった。
母親が噛んだ物を食べるのには抵抗があったが、拒絶すると悲しそうな顔をするので仕方なく食べた。


「まんま」
「ま……ママ……ママ!? 今喋った!?」


いや、頑張って味わっていたら声が漏れただけなのだが。でも、そろそろ喋っても良いのか?


「まんま」
「はぁ〜っクロア……そうよ……私がママ……」


同じ言葉を二連続で発音するのは難しいな。


ーーーーー


それからまた時は立ち。俺は自分でハイハイができるようになった。
最初はバランスを取ったり、体を動かすのに苦労した。しかし慣れてくると意外に動ける物だ。


ーーーーー


ーーーーー


ーーーーー


「クロア誕生日おめでとう!」
「おめでとうクロア」


椅子に座らされて、向かいには母親と知らない男の人がいた。


「今日はクロアの誕生日だからって、仕事休んできたのよ」


という事は……父親か。


「ぱっぱ?」


すると、筋肉質な父親が泣きながら喜んでいた。


「ほら、美味しいわよ」


いつもとは違う食べ物が口の前に運ばれてきた。美味しそうな匂いだ。すぐに口の中に入れてモグモグ。


「ぁぁぁぁ、クロアは可愛いなぁ……」
「そうねぇ……」


一生懸命噛んでいると、母親と父親は幸せそうに見つめてきた。
 そんなに見つめられると恥ずかしいんだが。


ーーーーー


 食事も美味しい物に変わってきて、段々と身体も動かせるようになってきた。
 そしてなんと、ついに立って歩くことができるようになったのだ!!


「クロア! ママのところへおいで」


右足、左足、とバランスを崩さないようにゆっくり歩いていく。


「あと少しよ! 頑張って! ……凄いわぁっ!!」


まだもう少し距離があったのだが、母親はフライングで俺を抱き抱えた。……苦しい。そして煩い。


ーーーーー


「ママ、おあか空いた」
「今作ってるから待っててね〜」


最近は少しずつ喋れるようになってきた。ママと呼んでいるのは、言葉に出しやすいからだ。これでコミュニケーションも取りやすくなったな。
 ついでにトイレも自分1人でするようになり、改めて自分が女になった事を知って絶望した。
 それから数日間は泣きっぱなしだったという。


「いただきます」
「お行儀よくして食べてね」
「はい」
「……ほんと、クロアって天才よね……」
「そんなことないよ」
「……」


マズい……1歳数ヶ月とは思えない会話をして怪しまれてるか……?


「私とバルジの娘だから当たり前よね〜」
「ばるじ?」


知らない言葉が出てきた。


「お父さんの名前よ。私はミリス」
「みりす……みりすおかあさん」
「凄いっ! もっと言って!!」
「……食べていい?」
「あ、そうだったわね。しっかりと食べるのよ」


どうやらテンションが上がると知能が低下する母親のようだ。ミリスか……やはりラノベのような世界と見て間違いないな。


 食事を終えて、眠くなってきたところでミリスにお願いをする。


「本よみたい」
「本? 何がいいかしら……」


棚には知らない文字で書かれた本がズラリと並んでいる。この世界の事を知るために、1度1人で本を読んだのだかサッパリだった。そこでミリスに読んでもらうのだ。


「お姫様の話と……魔法使いの話、どっちがいい?」
「ほかには?」
「他に……難しい本しかないわよ? ジスミン大陸の国の話とか……」
「それ読みたい」
「……難しいわよ?」
「よむ!」


俺が強くいえば、ミリスは仕方ないといった表情で本を持って、俺を連れてベッドへ向かった。


「じゃあ、今から読んでいくからね?」
「うん」


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いつの間にか寝ていたようだ。すまんなミリス。

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