幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
101話 初めての
「うぐっ……負けた……」
大きく積まれた皿の前で、シンシアはガックリと膝を付いていた。
夕食の時間になり、大食い自慢のシンシアとセシリャが勝負をしていたのだ。
場所は特別な個室。そこでシンシアとセシリャ、そして皿の枚数を数えるセシリータさんがいて、椅子に座ったままのセシリャは未だに食べ続けている。食材が次々と皿の上から消えていくのを見て、シンシアは絶対に勝てないと悟った。
最初から最後まで食べるペースが落ちないのだ。
食べていた料理はハンバーグとポテトサラダ。こっちの世界に来て初めてのポテトサラダはかなり美味しかった。
懐かしい味に涙しつつガツガツと食べていったシンシアだったが、セシリャには負けてしまった。
「その小さな身体でここまで戦えた事には驚いたわ」
「いや……まだ俺には秘策が残っている……!」
「秘策?」
その秘策とは、身体を大人にして魔力消費量を急激に増やすことで無限に胃袋に入れる事ができる裏技だ。
「次戦う時は秘策を使って勝つ!」
「ふふふ、楽しみね」
しかしこの秘策は魔力の激しい増減と体力の消耗が大きい為、下手したら命を削る可能性もある。重ねた皿の数で競って短期決戦だ。
「うぅっ……苦しい……」
「シンシアちゃ〜ん! お待たせ〜!」
シンシアが倒れた頃にサラがやってきた。
「あ、サラ……と……コリンさん!? なんでここに!?」
旅の途中で行方不明になったコリンさんが、何故かサラと一緒にシンシアの元にやってきた。
「私もここに呼ばれたんです。お久しぶりですシンシアさん」
「あ、ああ……無事で良かったよ」
シンシアはとりあえずお辞儀をしてサラの方を向いた。
「ごめんね。ちょっと色々と話したり仕事したりしてたら遅くなっちゃって」
「仕事……?」
「うん。実は私、ここの管理職を任されたの」
管理職……サラが?
シンシアは腹を抑えたまま、ゆっくり身体を起こしてサラを見る。
「誰に頼まれたんだ?」
「ここのお偉いさん。というか、知り合いだね」
サラの知り合い? んん? どういう事だ?
「俺以外にも……親しい人がいたのか?」
「それは勿論、女神だもん」
……そうか、そうだよな。サラだっていつも俺に構っている訳じゃない。友人の1人や2人、出来て当然だ。
なのになんでこんなに悔しいのだろう。
「どうしたの?」
「い、いや何でもない。じゃあセシリャさん、ありがとうございました」
「いえいえ。しっかり部屋で休むのよ」
◆◇◆◇◆
「……なんでサラも俺の部屋に?」
「ん? ダメかな?」
「ちょっと1人にさせてくれ……今日は疲れた」
といってもさっきの大食いでしか疲れていないのだけれども、なんとなく1人になりたい気分だった。
「じゃあもし何かあったら2階の奥にある管理室に来てね! そこに私の部屋があるから!」
「ああ。また明日」
サラが部屋から出ていって、シンシアは服を脱ぎ始めた。
「風呂入ってゆっくりするか……」
◆◇◆◇◆
「いいな。シャワーの音が聞こえたら部屋に忍び込むぞ」
「おうっ、そして風呂上がりに部屋に戻ってきた所を取り押さえて顔をカメラで撮るぞ」
「これで怪しい行動を取れなくなり、俺達はこの施設の平和を守る……くぅぅ〜! かっこいい!」
キラキラと光る金色の髪をしたリーダー、そしてその後ろに少年達が6人。7人の少年達はシンシアの部屋の中の音に耳を澄ましていた。
「……シャワーの音が聞こえましたリーダー」
「よし、こっそり持ってきた合鍵で開けろ」
「はいっ」
「セシリータの奴、寝てるから簡単に盗めたぜ……」
そのまま少年達は電気の消えたターゲットの部屋の中へ侵入した。
風呂場からはターゲットの鼻歌、そしてベッドの上にはシンシアの服と仮面が脱ぎ捨てられていた。
「よし、俺が仮面を持って取り引きしよう。全員隠れろ」
ベッドの下、クローゼットの中、風呂場から出てすぐの死角。全員がターゲットを挟み撃ちにして押さえつける事を考えた完璧な配置に付いた。
──ガラララッ
風呂場の扉が開けられて、髪を拭きながら部屋に帰ってくるターゲットの足音が聞こえる。
「〜♪」
「呑気に歌いやがって……」
飛びかかる合図は部屋の電気が付いた瞬間だ。
「寒っ」
──カチッ
「「今だっ!!」」
電気が付けられた瞬間、クローゼットの中等に隠れていた少年達が一斉に飛び出しターゲットを押し倒した。
「えっ!? きゃっ……なっ、なんだお前らっ!? 」
「この仮面を返してほし……けれ…………!?」
リーダーは見てしまった。目の前に全裸の可愛い女の子が大の字に抑え受けられて、その下半身にある綺麗で真っ直ぐな線を。
「おん…………な……」
その場にいた全員の少年達は、初めて見る女の子の身体に衝撃を受けて気絶してしまった。
「…………」
全裸を見られてしまったシンシアは、あまりの恥ずかしさに全身が沸騰しそうな程熱くなって、倒れた少年達を見て思考停止していた。
突然大勢の男に押し倒された時は、危うく女のような悲鳴が出そうになった事など含めて、シンシアはどうしたら良いのか分からなくなっていた。
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