幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

86話 精霊の予言書



 ダンジョンの中を進んでいると、1人のハンターが隠し部屋らしき物を見つけたようだ。
 壁を触りながら歩いていると、1ヶ所の壁がボコっと凹んだ。すると壁に小さな道が現れたのだ。


「どうする? 道は狭いから、大勢で行くのは得策ではないと思うんだ」
「俺が行こう」


 この道は大人1人が少し身を小さくしてやっと入れるような道だ。子供の俺が行くと良いだろう。


「子供だから危ないって言いたい所なんだけど、君の実力は凄いって事をこの場にいる全員が分かってるからね……よし、じゃあ行ってきてくれ」


 指揮官役のハンターがシンシアを信用してくれたようだ。


「サラはここの皆を守っててくれ」
「うん。もし何かあったらすぐ帰ってくるんだよ、無茶しないでね」
「大丈夫大丈夫、じゃあ行ってくる」


 シンシアは警戒しつつサラが生み出した光の玉を持って狭い通路の奥へ進んでいった。振り返るとハンター達が心配そうな目で見ている。
 曲がり角を曲がると完全に誰も見えなくなり少し心細くなったが、とりあえず今はこの先に何があるか調べなければならない。


「ジメジメしてるなぁ……」
──チュー
「ひっ!? ……ネズミか……」


 お化けが出てきそうだなと思っていた所で、突然ネズミが脅かしてきやがった。次来たら焼いて食べてやる。


 しばらく進むと少し広い部屋にやってきた。大体宿の部屋と変わらない大きさだ。
 部屋の真ん中には1冊の黒い本、そして壁には逆さまに飾られた十字架。この部屋にいると不安になってくる。
 嫌な予感がしつつも、シンシアは本を手に取ってページを捲った。


「……邪神と……世界の壊滅……? の予言……」


 その本には 『邪神と世界の壊滅の予言』 と書かれていた。
 確か、精霊は未来を予言してそれを作ったダンジョンに隠す事がある、と本で読んだ事がある。そもそものダンジョンを作る目的が宝ではなく予言であるとも言われている。
 大きな予言程、その手掛かりを見つけるのは苦労するらしい。この本だってそうだ。この巨大なダンジョンの壁を全て調べでもしない限りこの隠し通路は見つからなかった。
 たまたま運良く押しただけで、奇跡と言えるだろう。


 シンシアは更にページを捲って本を読んでみた。


「既に邪神は復活しているかもしれない。してないかもしれない。でも世界が滅ぶのは近い。……随分と適当だな」


 なんとも曖昧な表現についツッコミを入れてしまった。


「邪神とはとても強力な神。絶対神ゼウスと対になる存在。近頃から邪神が復活したかのような現象が各地で起きている。
 魔物の活発化、一部地域の魔素濃度が異常的に上がった事による生物の突然変異、犯罪の増加」


 まあ色んな悪い事が起きれば、何かのせいにしたくなるよな。しかしゼウスと対になる存在だとすると、本当に世界の危機のようだ。
 しかし、これは単なる予言だ。当たっているかどうか、それは実際に起こらないと分からない。10年前に見つかった予言の内容がまだ起きていない、という事もある。


 シンシアは一旦本を閉じて、サラ達に届けようと道を引き返した。


◆◇◆◇◆


「あっおかえり! 大丈夫だった?」
「ああ。予言書を見つけた」


 そういって本を指揮官ではなくサラに渡した。


「……これは〜……ふむふむ、確かに可能性は高いね」


 サラまでそう言うという事は、本当に世界の壊滅の危機なのかもしれない。あまり信じたくない物だ。


「予言書……ギルドに届けた方が良いね。君が大事に持っていてくれるかな」
「お、俺が? ……分かった」


 指揮官に言われて仕方なくローブの内ポケットに入れる。


「よし皆! このままボスを倒して予言書をギルドに届けよう!」
「「おぉっ!!」」


 再びダンジョン内の探索を開始した。


◆◇◆◇◆


「地下に続く階段を見つけたぞ! ボスかもしれない!! しっかり準備をしてくれ!」


 いよいよボス手前という雰囲気がやってきて、ハンター達は食事や装備の手入れ、身体のストレッチなんかを始めた。


「楽しみだね〜」
「少しは緊張感を持てよ。もし一斉にオーガに襲われたら全滅だぞ」
「た、確かにそうだけど……神の力使えば助けれるし、それに難易度調整ってされてるんでしょ?」
「ポジティブだなぁ」
「えへへ〜!」


 もしこのままハンター達に神の存在をバラしてしまったら大混乱を呼ぶぞ。特に都市マリーネのギルドマスターには迷惑をかけないようにしないといけない。


「はいシンシアちゃん、お菓子だよ」
「っ! 持ってたのか!!」


 サラが大好物のお菓子を渡してきて、シンシアは一気にそれを食べ始める。




 皆の準備が整って、いよいよ階段を降り始めたシンシア達。戦う準備はできているが、心の準備はまだ出来ていない。
 これだけ巨大なダンジョンだ。それ程のボスが出てくるだろう。


 階段を降り切ると、何も無い広い部屋にやってきた。


「……何も無いな」
「まさかさっきのオーガがボスだったんじゃねぇか?」


 その可能性はある。道中であれだけの強さの魔物が出てくるのはおかしい。


「っ!? く、来るぞっ」


 その時、広い部屋の真ん中に黒いモヤモヤが現れた。ダンジョンの中で魔物が死んだ時に出てくる灰のような物だ。
 それはどんどん大きくなり、形作られていく。


「で……でけぇ」
「ありゃ10mはあるぞ……」
「また手足が長い……気色わりぃ……」


 ついに灰が姿を表した。
 全身真っ赤、10mはある巨体で道中の雑魚と同じ手足が長い。両手には巨大な刀を二本。肩に銃を持ったゴブリンが座っている。


「銃とか……この世界に合わねぇな」
「シンシアちゃん気を付けてね。今度のは威力は低いけど動きが速いから」
「ああ」
「全員戦闘準備!!」


 そうしてシンシア達の長期戦となる厳しい戦いが始まった。

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