幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

50話 オリジナル魔法作りまスゥゥ



 白魔術の授業を終えたシンシア達は、教室に戻って簡単で危なくない魔法を一緒に覚える事にした。
 シンシア、アイリ、イヴ、アデルの4人。近くには使い魔も集まっている。


「なぁ、例えば"風よ"って単語の後に火属性の詠唱を唱えたらどうなるんだ?」
「アデルはバカなの? 本の最初に相性の悪い詠唱を唱えると失敗扱いとなり爆発するって書いてあるでしょ」


 そんな感じで色んな魔法を試行錯誤しながら、それぞれ実用的な詠唱を覚えるという勉強なのだが、いくつもある単語の中の一つを覚えるだけでも結構大変かもしれない。


 その日、シンシア達は放課後まで皆と白魔術の練習を続けた。


◆◇◆◇◆


 外も暗くなり、イヴと一緒に家に帰ってきたシンシアがクラリスの部屋に呼ばれた。


「シンシアちゃん、そういえばオリジナルの魔法を作りたいって言ってたわよね」
「あぁ確かに言ってましたね。もしかして教えてくれるんですか?」


 するとクラリスさんは棚から1冊の本を取り出した。


「ここに魔法陣に書かれる文字が載っているわ。これを見ながら一緒に勉強しましょうか」
「一緒に……良いんですか!?」


 クラリスさんと一緒に魔法を作れるなんて最高じゃないか。そもそもクラリスさんの部屋に2人きりでいられるだけで最高だっていうのに……んん〜良い匂い。ローブの隙間から見える白い足がセクシー。
 落ち着け俺。そもそも俺の目的は自分の姿を大人になる魔法を作る事。黒魔術がダメだから白魔術に来たわけで、目的は一緒なんだ。


「魔法陣には色んな可能性が秘めてあるから、まだ誰も知らない魔法が作れるかもしれないわ」
「一緒に作りましょう!」
「じゃあここに座って」
「っ!」


 なんとクラリスは自分の膝をポンポンと叩いて座れと言った。シンシアは本当に座っていいのか目で聞き返すが、クラリスは微笑んでいる。つまりは膝の上に座っていいという事だ。


「し、失礼します」
「やっぱりシンシアちゃんは軽いわね。授業中あんなに食べていたのに」
「多分その栄養は全部魔力に使われてるんですよ」


 魔力は少しずつ奪われていくらしいし、1度沢山食べればその後はあんまり気にしなくていい。それにお菓子を沢山食べたからなのかは分からないが、夕食もいつも通りの量で問題なかった。
 今後、間食無しで朝昼晩と食べるならもっと沢山の量が必要になりそうではある。


「それじゃあまずは魔法陣を作るに必要な文字を覚えていきましょう」
「よろしくお願いします」
「この本の2ページから──」


 あっ……クラリスさんが本を開くために前のめりになったから胸が背中に当たって、お尻にはクラリスさんふとももの感触。そして耳元にクラリスさんの声。
 俺は明日死ぬんだな。そう確信した。


◆◇◆◇◆


「結構覚えたわね」
「あいうえお順だから覚えやすいですね。ただ後は単語として並んだ時にどうなるかです……頭痛い」


 1度に沢山の情報を脳に入れたことで頭痛がやってきた。前世での頭痛は空気の入れ替え、チョコなんかを食べる事で収まったりしていたのだが、この頭痛は単純に頭の使いすぎによる頭痛なので効果はないだろう。


「休む?」
「い、いえっ、頑張ります」
「無理しなくても明日学園でも教えてあげるわよ」


 しかし今はクラリスと2人きりの状況を楽しんでいたいという気持ちが強い。学園に行ったらクラリスさんを独り占めできなくなるのではないか。そう思うシンシアは、この夜が頑張り所だと考えている。


「クラリスさんが疲れるまで頑張りますよ」
「そんなに魔法を作りたいのね。なら私も頑張って教えるわ」


 違うんです。クラリスさんと一緒にいたいから頑張ってるんです。


 それからシンシアは、必死に眠気と頭痛に耐えてクラリスの声を聞き続けた。その声が子守唄の役割になっていることなど知らず、耳だけに意識を向けて最終的に眠ってしまっていた。


◆◇◆◇◆


 次の日、なんとか起きることができたシンシアは学園でもクラリスに魔法の作り方を教わるべく、ベネディにクラリス匂いを探してもらって声をかけた。


「時間ありますか?」
「ええ。上の空いてる部屋で勉強しましょうか」


 上の階にある和室に2人きりで入り、昨日に続いて魔法の作り方を教わる。


「シンシアちゃんが今作りたい魔法はありますか?」
「大人になる魔法です。黒魔術で可能なら、白魔術でも作れるんじゃないかと思ってます」


 即答でそう答えた。それを聞いたクラリスは、少し何かを考えるような仕草をしてこちらを向いた。


「不可能ではないと思うわ。では、魔法陣でそれを可能にするにはどうしたらいいか一緒に考えましょう」
「はいっ!」


 クラリスさんは持ってきた紙と羽ペンをテーブルに置くと、座っていた足を崩して楽な姿勢になった。


「まず、魔法陣に書く単語。そしてそれらの単語を繋ぎ合わせる魔法陣の中にある円の形状を考えないといけないわ」
「単語ってそれぞれを繋いだ文章にした方が効果としては良いですよね」
「ええ。単純な魔法陣だと単語一つで完成できるけれど、複雑になってくると文章ね。でもまずは単語だけで作ってみましょう」


 そうしてシンシアとクラリスの魔法陣制作が始まった。シンシアの目標の魔法をどうしたら白魔術で可能にするのか。お互いの思考をフル回転させている。


「あ、そうそう」


 突然クラリスが自分のバッグの中を見だした。


「シンシアちゃんの為に食べ物沢山持ってきたわ」
「ありがとうございます」


 きっと長い戦いになることだろう。


◆◇◆◇◆


「あれ? シンシアちゃんどこ〜?」


 サラは1人で教室に来て、シンシアがいない事に気づいた。


「シンシアちゃんならクラリス先生と一緒にどこかに行きましたよ」
「ありがとうアイリちゃん。行ってくる!」


◆◇◆◇◆


──ガララッ
「シンシアちゃん来たよ〜!!」
「っ!」
「っ!」


 集中して魔法陣を考えていた所に、ハイテンションなサラが来てシンシアとクラリスはビックリしてサラを睨んだ。


「あ、あれ……怒ってますか……?」
「サラ先生にも手伝ってもらいましょうか」
「そうですね。サラ先生、俺の食べ物とか飲み物持ってきてくれますか?」
「任せてっ! シンシアちゃんの為ならすぐに行ってくる!」


 これでシンシアの作業効率が捗る。


「シンシアちゃん、どうします? サラ先生も一緒に作りますか?」
「サラはああ見えて意外と真面目だし、頼んだら助けになると思う」
「では次来たら一緒に考えてみますか」


◆◇◆◇◆


「何これ〜……よく分かんない」
「この文字とこの文字を繋ぐのがこの円です」
「これ文字なの? えっと〜……うぅ〜ん」
「すみません。出ていってもらっていいですか? 集中してるので」
「力になれなくてごめんなさい……頑張ってね」


 サラってもしかして真面目なのは真面目だけど、本当に頭が悪いのだろうか。女神だから魔法陣の作り方は上手だと思ったのだが、文字が分からないとなると、サラに1から教えていくよりも俺とクラリスさんで作った方が早い。


 2人は再び集中モードに入った。


◆◇◆◇◆


「あ、サラ先生どうでした?」
「2人とも凄く集中してた……」
「なんかさっきとテンション違いますね……」

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