幼女に転生した俺の保護者が女神な件。
28話 明日の為に寝る
部屋に帰ってくると、美味しそうな料理が用意してあった。
何の魚なのかは分からないが刺身があったり、天ぷらやお肉。こんな豪華な食事を全生徒分に出してるのかと思うと、あまり食べたくなくなる。俺じゃなくもっと大事な人に食べさせた方が良いのではないか。
「まあ……食うか」
一応脱衣所に置いてあった着物を着ている為、汚さないように気をつけて食べた方が良い。
「いただきます」
──ガタッ
「……?」
箸を持って早速食べようと手を合わせた時、部屋の外で物音がした。サラ? アイリ? 誰かは分からないが、俺は気づかれないように部屋の扉に手をかけ、一気に開く。
「うわっ! す、すみません!!」
「……?」
そこにいたのは同じような着物を着た男3人組。
「た、たまたまシンシアを見かけて、こいつが尾行よしようって……」
「はっ!? ち、違ぇし!」
「早く謝ろうよ」
俺の名前を知っている、という事は同じ学園の一般生徒か。
「盗み聞きでもしようと思ったか?」
「すみませんでした!」
「「すみませんでした!」」
こんな幼女の独り言なんて聞いて何になるんだ。変な趣味した奴もいるんだな。
「まあいい。分かったなら自分達の部屋に帰りな」
そういうと、男3人組は顔を上げてキョトンとした顔をしていた。
「どうした?」
「い、いえっ……思ったより優しっ……あ、ありがとうございます」
「なんだ俺が思ったより優しいって?」
「すみません……」
なんで謝るんだろうか。特別クラスが怖いと思われてる事は事実だし、それで優しいと思われたのなら嬉しい事じゃないか。
「ありがとな。じゃ、気をつけて帰れよ」
「……っは、はい!」
「「はい!」」
3人に手を振って扉を占めて、今度は俺の方から盗み聞きしてやった。
遠くに離れていく足音、そして嬉しそうな話し声。
「あの子優しかったな〜」
「あれならカズヤが友達になったってのも頷ける」
「可愛かったし、俺達も今度友達になってもらおうよ」
「いいなそれ! 何か喜びそうな物持ってったらいいかな」
「熊のぬいぐるみとか?」
「いやいや、あの子なら兎だろ」
なんだろう。凄く子供扱いされてる気がしてスッキリしない。
まあそんな事はどうでもいい。とりあえず飯食うか。
◆◇◆◇◆
「う〜いただ〜いま〜、あれ? シンシアだけ?」
「ああ。飯ももう食った」
寝癖の無くなったアデルが着物姿で帰ってきて、俺は横になっていた身体を起こす。
「似合ってんな〜!」
「どうも」
可愛い服を着てる時よりも、こういう何でもない服を着てる時に似合ってると言われるのは嬉しい。
自然と笑みがこぼれる。
「なんでアイリいねぇんだ? サラ先生と一緒に風呂入ってたんだろ?」
「俺だけ先に帰ってきたんだよ」
「ああ、あの2人胸でかいからな。気まずいのか」
「後でアイリに言っておくよ」
「やめてくれ」
アデルが正面に座って飯を食べ始めたので、俺はベッドで横になる。このまま起きてても暇だし、館内を散歩するにしてもほとんどが一般クラスか他人。それなら早めに寝て明日に備えた方が良い。
「食ってすぐ寝ると牛になるぞ」
「右向いて起きてりゃいいんだよ」
といいつつ目を瞑って寝る準備に入る。
今日はかなり動いたから眠いんだ。眠い時は寝る。前世ではスマホとかがあったから夜更かししていたが、こっちの世界では暇潰しがない為に眠くなったら寝た方が一番良いのだ。
しばらく横になって、程よく眠れそうな感じになってきた所で部屋にアイリとサラが入ってくる音が聞こえた。しかし眠くてボンヤリしている為、そこまで気にする程の音ではない。
「今シンシア寝てるから静かにな」
「分かった」
「疲れてるんだね」
3人は気を使ってくれてるようだ。
「サラ先生自分の部屋に行かないのか?」
「う〜ん、シンシアちゃんと夜更かししてから部屋に戻ろうって思ってたんだけど、寝ちゃってるからね」
今のサラは珍しく真面目モードだ。というより馬鹿になるのは俺の前の時だけであって、基本的に俺が見ていない場所では真面目である。
「でもしばらくこの部屋でゆっくりしてていいかな? アイリちゃんとアデル君とは仲良いしね」
「いいですよ」
「アデル男1人だけど大丈夫なの?」
「出ていく訳にもいかねぇだろ」
それからどのくらい話を聞いていたのかは分からないが、寝返りをする前には深い眠りに入っていた。
◆◇◆◇◆
「……トイレ……」
皆が寝静まった頃、トイレで目を覚ました俺は眠い目を擦りながらベッドから降りる。
「シンシア……ちゃん……」
「っ……なんだサラか……」
って、なんでサラが俺のベッドに入ってるんだ? 自分の部屋に帰るはずじゃ……って、酒臭い。
「はぁ、トイレトイ……」
サラに布団を被せてから部屋の外に出ようとすると、部屋の外に何者かの気配を感じた。
こんな深夜帯に誰だ?
「……いない」
扉を開けて確認するとそこには誰もいなかった。
まあ気配だし、気のせいって事もあるよな。
そう思いながらトイレへ向かおうと廊下へ出ると、突き当たりの階段辺りに走って消える白い足が見えた。
「っ……幽霊……?」
足音もせず、こんな暗闇なのに白く見えるあの足。
招待不明の幽霊らしき存在に、俺は恥ずかしながら怖いと感じてしまった。
子供じゃあるまいし幽霊が怖いなんて……きっと気のせいだ。
とにかく疲れから来た勘違い。幻覚だと思い込んで、さっさとトイレを済ませて眠りについた。
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