幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

26話 素晴らしい女性



「団子、買いますか?」
「いえいえ私達がお金出すので大丈夫ですよ」


 クラリスさんがお金を出そうとしていたので、サラがすぐに止めて金を出した。サラはお金沢山持ってるしな。ズルい方法で、ね。


「シンシアちゃんとアイリちゃんとアデル君、お団子食べる?」
「私は欲しいです」
「俺も〜」


 俺はどうしようか。大してお腹は空いていないが、団子というのを久しぶりに見た。どんな味だったか思い出す為にも食べてみるか?


「ん〜……」
「悩んだら買っちゃえ!」
「あっ」


 結局俺が答えを出す前にサラは全員分の団子を買った。シンプルな三色団子というやつだ。
 仕方なく持ってこられた団子を食べると、まさに予想通りの懐かしい味がした。これは食べて正解だったかもしれない。


「クラリスさんってこの後も暇ですか?」
「えぇ、いくらでも付き合うわよ」
「もし良かったらシンシアちゃんに着せる服、一緒に選びませんか?」


 またサラは何を言ってるんだか。そんなのクラリスさんがOK出すわけ──


「喜んで。シンシアちゃんならなんでも似合いそうね」


 出すんかい。
 2人とも俺の方を見てどんな服にしようかとニコニコしてやがる。出来ればクラリスさんと2人きりで服を選びたい。サラは似合う服ならなんでも買うから家に溜まってしまう。


「皆食べたら行こっか!」


 ……もっとゆっくり食べてたら良かった。


◆◇◆◇◆


「シンシアちゃん、これ似合うんじゃないかしら」
「クラリスさんのファッションって一貫性があって良いですね」


 アイリが指摘したのは、クラリスさんは基本的に肌を多めに隠すような服。そして暗い色の服を選ぶという事。


「昔からこういう服しか着ないのよ」
「あっ、じゃあ私達でクラリスさんも可愛くしてみましょうか! これとか!」


 サラが持ってきたのは、黒とは真逆の白いロングスカートのワンピース。


「ワ、ワンピース……」
「クラリスさんが困ってるだろ。ファッションは無理に着せる物じゃない」
「似合いそうなのにな〜」
「シンシアちゃんありがとう」


 へへっ、褒められてしまった。でも正直クラリスさんのワンピース姿は見てみたいな。さっきローブの下に見えた肌は白くて綺麗だったし、絶対に似合うと思う。


「じゃあシンシアちゃんに何着せよっかな〜」


 っと、そういえば俺はまだ危機から逃れられていなかった。とりあえず言われるがままに着替えて、さっさと買い物を終わらせよう。無駄な抵抗は時間を無駄にするだけだ。


◆◇◆◇◆


「沢山買ったね〜」


 店を出たのは外が若干赤くなってきた頃だった。一体何時間着替え続けていたのだろうか。人生の大事な1日を無駄にした気がする。


「あ、もう夕方だ。それでは私達はそろそろ旅館に帰ります。ありがとうございました、クラリスさん」
「こちらこそ、皆さんとお話出来て楽しかったわ」
「また会いましょうね!」
「ええ、必ず」


 クラリスさんは俺の方を見てニコニコしている。俺だってクラリスさんと別れたくない。こんな綺麗で性格も良くて、何にでも付き合ってくれる素晴らしい女性がどこにいるだろうか。こんな人が俺の保護者だったら……お風呂、添い寝……きっと俺の人生は最高の日々を送っていた事だろう。
 それに対して、サラと来たら見た目は可愛いものの俺の事を好きすぎて考えが一直線になっている。普段は頭が良くて真面目なのに、俺の事になるとバカになるんだ。


「それじゃあシンシアちゃん、またね」
「っ──」


 クラリスさんが俺の目線までしゃがんで、頭を撫でてくれた。


「また会えますよね?」
「ええ、会いに来るわ」


 無意識に会えるか聞くと、会いに来ると返してくれた。良かった。


「それでは皆さんお元気で」
「お元気で〜!」


 俺は離れていくクラリスさんに姿が見えなくなるまで手を振っていた。


「旅館に帰ろっか」
「ああ」


 どことなく切ない気分になって、しばらくの間テンションが上がることはなかった。


◆◇◆◇◆


 旅館に帰ってきた俺達は、先生から銭湯に行っても良いと言われた。


「私とシンシアちゃんとアイリちゃんは人がいないとこに入るからね!」
「楽しみですね」


 俺はサラに抱っこされたまま銭湯へ向かっている。俺は今日、初めてアイリと一緒にお風呂に入るのだが、正直不安しかない。

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