幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

23話 豪華旅館



「シンシアちゃん来たよ〜っ!」


 アイリと話して歩いてると、先頭にいたはずのサラが最後尾の俺達の元までやってきた。


「先頭居なくていいのか?」
「他の先生に任せてるし、それにもうすぐ目的地に到着だよ!」


 もう到着するのか。思っていたより早く着いたな。


「何事も無く到着して良かったね〜」
「そうだな。到着したらまず何するんだ?」


 到着してから何をするのか説明されていない。明日ダンジョンに行くという事は知っているのだが、今日はまだまだ時間あるし色々と観光できそうだが。


「旅館で班ごとに部屋予約してあるから、1度部屋でゆっくりしてて。その後で収集かけるから」
「分かった。班って俺はどこの班なんだ?」


 そもそも班の説明もされていなかったのだが、俺は誰と同じ班になるのだろうか。


「アイリちゃんとアデル君と同じ班だよ」
「ん? もう1人のシェフィは? アデルの下っ端みたいなの」
「あの子意外と友達多いの。別の班でも問題ないんだって」


 なるほど。じゃあアイリとアデルは俺と一緒の部屋……アデル男一人だけど大丈夫なのだろうか。


「あっ! 門が見えた!」


 サラがピョンと跳ねて遠くを指差したが今の場所からじゃ見えない。しかし、もうすぐ到着するようだ。
 俺は少しだけ気を緩めた。


◆◇◆◇◆


 門を潜った先には、今まで住んでいた国とは違って建築技術がかなり進歩しているようだ。前世の建物とまではいかないが、綺麗な木材やらコンクリートやらで随分としっかりした作り方だ。


「これを見ると日本の建築技術って凄いよね」
「地震とかに耐えれる為だろうからな。ん? 地震?」
「どうしたの?」


 地震……何か忘れている気がする。気がするだけで本当に忘れているのか知らないけど……。


「ほらシンシアちゃん、旅館見えてきたよ」
「んっ、おぉ! 大きいな」


 忘れる程どうでもいい事だったんだろう。考えていても仕方ない。


 かなり大きな和風の旅館に到着した俺達は、ゾロゾロと中に入っていった。
 旅行というより巨大屋敷と言った方が正しいのではないだろうか。800人近くの生徒を1度に泊められる程広大な敷地を持っているこの屋敷、入り口から入ってすぐ目の前には巨大な中庭が見える。
 池があって木が生えていて、これが敷地の中というのが凄い。


「ジリアン君! ギンジ君!!」


 先生達がホールで生徒達を班毎に並べているようだ。


「アイリ、同じ班のアデル探そう」
「そうね」
「おっ見つけたぞお前ら。俺達の班の部屋の鍵貰いに行こうぜ」


 探しに行こうと思ったらあっさりと現れてくれた。
 1人だけ男だというのに、気にした様子もなく鍵を貰いに行こうとするアデルを見て少し心配になる。アデルは本当に考えて行動しているのだろうか。




「よっしゃ行くか〜! 2階の奥、薔薇って名前の部屋だな」
「そうだな」


 俺とアイリはウキウキで進むアデルの様子を後ろから見て笑いながら、仕方なく着いて行った。


「アデル君テンション高いね」
「だな。多分部屋に到着して男1人っていう事実に気づいたらもっと上がるんじゃないか」


 この旅館では靴を脱ぐ。白い靴下で綺麗な廊下を歩くとスベスベしていて気持ち良い。
 実は俺もテンションが高いのだが、アイリに俺のクールな所を見せたいが為に冷静を装っているのだ。


「ほらアデル〜! 部屋通り過ぎてるよ!」
「へっ? あぁそこにあったのか」


 部屋が多いし、その一つ一つが大きいからすぐ分からなくなりそうだ。


 部屋に入った俺達は、充実した設備に感動を覚えた。


「これが……旅館の部屋……!」


 綺麗なベッドはしっかり三つ分。茶色でフワフワな布団がとても寝心地が良さそうだ。
 部屋の温度を調節する魔道具、と説明が書かれた紙が壁についた四角い物体の下に貼られてあり、詳しく使い方まで書かれてあったり。
 クローゼット、荷物置き、立ち鏡、キッチン、リビング、寝室。旅館の一室とは思えない程に充実しており、この部屋だけで生活ができそうにも思える。


「ひゃっほぉ〜い!!」


 アデルが勢いよくベッドの上に飛び乗ってしばらく暴れた後、突然静かになってこちらを向いた。


「なんで男1人なんだ?」
「今更かよ」


 いやん、とか言い出して布団で身体を包んだアデル。テンションが高すぎて頭が馬鹿になっているのかもしれない。


「変な事したらタダじゃ済まさないからね?」
「う、うっす」


 アイリの鋭い目つきで睨まれたアデルは、捨てられた子犬のように小さくなった。


「収集かかるまで部屋で寛いでて良いんだよな」
「そうね。一緒に寝よっか、一緒に」


 三人分のベッドがあるんだから有効活用してほしい……。


「ちゃんと自分のベッドの横に荷物置いて。俺結構眠いの我慢してたから仮眠する。先生来たら起こして」
「は〜い。私は寝てるシンシアちゃんにアデルが変な事しないか監視してるね」
「よろしく。じゃあおやすみ2人とも」


 多分前世ですらこんなに寝心地の良いベッドで寝たことはない。布団の中に潜ると、あっという間に身体がポカポカしてきて眠気と気持ち良さが全身を包み込んだ。
 布団のフワフワの部分を顔に下に入れて目を瞑る。すると頭がボーッとしてきて、何も考えれなくなりそのまま眠りについた。

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コメント

  • 澤丸

    収集では無く招集では?

    0
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