幼女に転生した俺の保護者が女神な件。

フーミン

19話 注意だけしにきた



「アイリ〜入っていいぞ〜」
「は〜い」


 俺達が風呂から上がると、アイリは読んでいた本を閉じて風呂場へ向かった。


「てっきりシンシアちゃんと一緒に入ると思ったのに、どうしたんだろうね?」
「ま、俺はそれで助かったけどな」


 ようやく慣れてきた風呂に、更に別の女の子が入ってきたらいよいよ俺はおかしくなってしまう。元男としては1人で入りたいものだ。


「この後どうする? 寝る?」
「俺は起きててもいいけど、する事ないなら寝るぞ」


 明日も学校があることだし、早めに寝た方が良い。


「やっぱりアイリが来てから決めるか」
「そうだね」


◆◇◆◇◆


「お、アイリおかえり〜」
「綺麗なお風呂だったね」


 満足そうな顔で、濡れた綺麗な髪をタオルで拭きながらソファに座った。風呂上がりだからなのか首元に色気がある。


「アイリちゃん何かしたい事とかある?」


 サラが今からどうするかアイリに聞いた。


「あ、じゃあサラ先生。強化旅行の時に私達はどうしたらいいのかとか、説明お願いします」
「シンシアちゃんも聞く?」
「強化旅行だし聞いた方がいいよな。うん」


 俺とアイリは強化旅行の時、特別クラスがどういう動きをすればいいのか等の説明を聞いた。
 こういう時は真面目な顔をするんだよな、サラ、


◆◇◆◇◆


「あれ、シンシアちゃん寝ちゃってる」
「疲れてるんだと思いますよ」
「じゃあ3人で一緒に寝よっか」
「いいんですか?」
「勿論! シンシアちゃん起こさないように運ぼう」


◆◇◆◇◆


 窓から差し込む眩しい光で目を覚ますと、俺はいつの間にかベッドで眠っていた。


「……いつ寝たっけ……」


 まだ眠気が取れないし、それに外の明るさからしてかなり早い時間帯だ。
 二度寝するのが良いだろうと思い、右に寝返りをする。


「……」


 右にはいつものサラの無防備な胸があった。少し覗き込めば見えてしまうじゃないかという程の谷間が俺を圧迫する。
 仕方なく左に寝返りをすると、今度はアイリの小さくもなく大きくもなくの胸と、可愛い寝顔から聞こえる甘い寝息が俺の心拍数を上げる。


 落ち着かない。
 人に囲まれて寝るとリラックスができない。1人で寝たい。1人部屋が欲しい。


 でも頑張って寝るしかなく、俺はうつ伏せになって2人に寝顔を見られないようにして再び眠りについた。
 下半身に物が付いていないとうつ伏せってしやすいんだな。




 それから少し時間が経って、サラが目を覚ます。


「シンシアちゃん起きて〜! 朝だよ」
「……知ってるよ」


 またいつものように一日が始まる。


◆◇◆◇◆


「今日は2人とも私が転移で送るからね」
「ありがとうございます」


 アイリも目を覚まして朝食を済ませている。今は立ち鏡の前で寝癖を整えているようで、俺はそんな姿を見て女子は大変だな〜と呟いた。


「シンシアちゃんいつも寝癖凄いよね」
「……いや、これ元々こういう髪型なんだよ」


 天然パーマって奴とはちょっと違うと思うけど、所々が跳ねてるんだよな。


「えっ!? それ治らないの!?」
「何その反応……こう見えても結構気にしてるんだからな」
「そ、そうなんだ。可愛いよ」
「そうかい……」


 変な髪型でも人が可愛ければ何でも許される。前世でいう可愛いは正義というのは本当らしいな。


「あっごめん。また可愛いって言っちゃった」
「いいよ。俺が変わらないといけないから」
「二人とも準備できた〜?」


 朝からアイリがいるという新鮮な感覚で、今日は朝から気分よく学園に行けそうだな。


「よし、行くか」
「そうね」


◆◇◆◇◆


 学園に到着した俺達はすぐに教室にやってきた。


「おっ、おはよう」


 そして教室には学園長のゼウスが……なぜここにいる。


「あ、貴女は?」
「学園長だよ」


 学園長の姿を見たことがないアイリが質問すると、サラがすぐに答えてくれた。


「クロア様今日はどうしたんですか? 珍しいですね」
「いや、最近な。魔王が復活して魔物達の動きが活発になってるんだ」


 魔王復活……まさにRPGだな。


「……」
「アイリ? 気分でも悪いのか?」
「う、ううん。何でもないよ」


 ふとアイリを見ると苦しそうな表情をしていた。


「……ただまあ、復活したばかりの魔王は力が完全に回復している訳ではない。でもとりあえず気をつけてくれとだけ伝えに来た。魔王ならこの周りの結界は突破できるからな」
「やはり結界は弱いですからね」


 女神が貼った結界でも簡単に破られるのか。魔王が強いというより、単純に結界が弱いと捉えると良いのだろう。


「私はそういうのに手出しできない存在だから、注意だけをしにきた」
「なんで……あぁ、分かりました」


 何故手出しできないのか聞こうとしたが、ゼウスだという事を考えたらそれは当然の事だろう。神が直接手を出せば世界は混乱する。下手したら大惨事が起こる可能性もあるだろう。


「それとアイリーン、何か悩み事があるだろ」
「えっ……」


 ん? 悩み事?


「背中見せてくれるか?」
「……す、すみません。何を言ってるのか──」
「私ならそれを治せるぞ」
「っ……本当……なんですか?」


 ん? ん? 何の話をしているのか分からないぞ?


「見られたくないだろうし、来てくれ。サラティーナとシンシアは待っててくれ」
「は、はい」


 ゼウスはアイリを連れて教室から出ていった。
 一体急にどうしたというのだろうか。


「アイリ何かあったのか?」
「う〜ん……分かんない。背中がどうとか言ってたね」


 気になるけど、アイリは知られたくないようだし聞かない方が良いのだろうか。

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