没作品「透明な僕と彼女。」
没作品「透明な僕と彼女。」
それは何気ない一日を過ごしていただけの僕のもとに訪れた、あまりにも非日常的で誰にでも訪れる危険性のある事件だった。
空き巣を狙った泥棒。しかし引きこもりだった僕の家に泥棒が来るなんて信じられなかった。金目のものもない、あるのはゲーム機くらい。売れば多少の金にはなるだろうが、わざわざ泥棒になるなんてリスクを犯して取りに来るはずがない。じゃあなんで僕は殺されたのだろう。それは今から3年前に遡る。
いつもの暑い夏の夕方頃。
————「あぁ~あ……今日も詰まんねぇなぁ」
そう独り言をつぶやきながら、ミサイルについて話していたうるさいテレビを消した。ここまでは普段通りの生活だった。
もっと面白みのある生活になってほしいとは思っていたさ、でもそんなことが簡単にできていれば今頃人類は皆電脳世界にいるだろうな。
冷蔵庫からコーラを取り出すために台所に向かった時、僕はやっと異変に気付いた。
窓の隙間から腕が伸び、玄関の鍵を開けようとする何者かの存在を目視した。しかし、いざこういう場面に直撃したとき人は思考回路を止めてしまう。だが、それではだめだと思い、即座に部屋に戻りスマホを持ち出した。
今思えば、この判断がダメだったのだろうと思う。スマホで110番通報をしながら、近くにあった立ち鑑の裏に隠れた。引きこもりでも身だしなみには気を使うのだ。
そのまま泥棒は家の中に入ってきてしまい、僕は逃げ場を失った。そこでやっと自分の置かれた立場に気が付いた。このままでは身の危険が迫ってくる。だから僕は極力小さな声で警察に現状を伝え続けた。そして——見つかってしまった。
「「あっ……」」
僕と泥棒の間に一瞬の沈黙が走る。しかし、進行形で犯行を行っている泥棒の判断は早かった。
立ち鑑ごと蹴られて、その場に押し倒されるように僕は横になった。
身動きの取れない僕は、そのまま泥棒が持っていたであろう刃物で体を何か所も刺されて、死んだ。
それはあっけなく、僕にとっては相応しい死に方だったと思える。でも、せめて彼女くらいは欲しかったな、なんて未練を残しながら意識を手放した。
それから僕は3年間、何故か誰もいない一室で幽霊となった。
疑問も多いし、沢山質問したいのは僕のほうだ。なんで幽霊? なんでだれも住んでいない? 答えは当然、僕がこの部屋で死んだからだ。
それから彼女に気付いたのが3年後。どうやら僕が気付く数週間前からこの部屋に住み始めたらしいのだが、僕はそのことに気付かずいつもテレビを見ていた場所で横になっていた。
この家から出ることが出来ない為この人の名前が分からなかったのだが、近所の人の声を聴く限りだと、いさわさんというらしい。漢字は分からない。
「こんにちは~」
もちろん話しかけても僕は幽霊だから気付かれることはない。着替えなんかは除き放題だが、顔が地味すぎて見る気になれない。前髪で顔が隠れていて分からないせいなのかもしれないが、顔を見ても何の印象も抱かない。
幽霊になったから人間の本能を忘れてしまったのだろうか。なんて当時は思っていた。
それからどの位たった頃だろうか。彼女は突然家に現れなくなった。
今まで暇潰し相手として扱っていたいさわさんが急に姿を見せなくなると、幽霊の僕としても寂しい。
数日ほどして帰ってきたいさわさんは、ありえないほどにやせ細っていた。
「だ、大丈夫!?……って、聞こえないか……」
この時、人と喋れないという寂しさを知った。
「……え?」
幽霊というのは孤ど、く……え?
「聞こえてる?」
いさわさんが僕の声に反応した。そう思い、聞いてみた。
「だっ、誰……?」
やっぱり聞こえている。しかし、姿は見えないようだ。
その日から、僕と彼女の不思議な生活が始まった。
空き巣を狙った泥棒。しかし引きこもりだった僕の家に泥棒が来るなんて信じられなかった。金目のものもない、あるのはゲーム機くらい。売れば多少の金にはなるだろうが、わざわざ泥棒になるなんてリスクを犯して取りに来るはずがない。じゃあなんで僕は殺されたのだろう。それは今から3年前に遡る。
いつもの暑い夏の夕方頃。
————「あぁ~あ……今日も詰まんねぇなぁ」
そう独り言をつぶやきながら、ミサイルについて話していたうるさいテレビを消した。ここまでは普段通りの生活だった。
もっと面白みのある生活になってほしいとは思っていたさ、でもそんなことが簡単にできていれば今頃人類は皆電脳世界にいるだろうな。
冷蔵庫からコーラを取り出すために台所に向かった時、僕はやっと異変に気付いた。
窓の隙間から腕が伸び、玄関の鍵を開けようとする何者かの存在を目視した。しかし、いざこういう場面に直撃したとき人は思考回路を止めてしまう。だが、それではだめだと思い、即座に部屋に戻りスマホを持ち出した。
今思えば、この判断がダメだったのだろうと思う。スマホで110番通報をしながら、近くにあった立ち鑑の裏に隠れた。引きこもりでも身だしなみには気を使うのだ。
そのまま泥棒は家の中に入ってきてしまい、僕は逃げ場を失った。そこでやっと自分の置かれた立場に気が付いた。このままでは身の危険が迫ってくる。だから僕は極力小さな声で警察に現状を伝え続けた。そして——見つかってしまった。
「「あっ……」」
僕と泥棒の間に一瞬の沈黙が走る。しかし、進行形で犯行を行っている泥棒の判断は早かった。
立ち鑑ごと蹴られて、その場に押し倒されるように僕は横になった。
身動きの取れない僕は、そのまま泥棒が持っていたであろう刃物で体を何か所も刺されて、死んだ。
それはあっけなく、僕にとっては相応しい死に方だったと思える。でも、せめて彼女くらいは欲しかったな、なんて未練を残しながら意識を手放した。
それから僕は3年間、何故か誰もいない一室で幽霊となった。
疑問も多いし、沢山質問したいのは僕のほうだ。なんで幽霊? なんでだれも住んでいない? 答えは当然、僕がこの部屋で死んだからだ。
それから彼女に気付いたのが3年後。どうやら僕が気付く数週間前からこの部屋に住み始めたらしいのだが、僕はそのことに気付かずいつもテレビを見ていた場所で横になっていた。
この家から出ることが出来ない為この人の名前が分からなかったのだが、近所の人の声を聴く限りだと、いさわさんというらしい。漢字は分からない。
「こんにちは~」
もちろん話しかけても僕は幽霊だから気付かれることはない。着替えなんかは除き放題だが、顔が地味すぎて見る気になれない。前髪で顔が隠れていて分からないせいなのかもしれないが、顔を見ても何の印象も抱かない。
幽霊になったから人間の本能を忘れてしまったのだろうか。なんて当時は思っていた。
それからどの位たった頃だろうか。彼女は突然家に現れなくなった。
今まで暇潰し相手として扱っていたいさわさんが急に姿を見せなくなると、幽霊の僕としても寂しい。
数日ほどして帰ってきたいさわさんは、ありえないほどにやせ細っていた。
「だ、大丈夫!?……って、聞こえないか……」
この時、人と喋れないという寂しさを知った。
「……え?」
幽霊というのは孤ど、く……え?
「聞こえてる?」
いさわさんが僕の声に反応した。そう思い、聞いてみた。
「だっ、誰……?」
やっぱり聞こえている。しかし、姿は見えないようだ。
その日から、僕と彼女の不思議な生活が始まった。
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