獣少女と共同生活!?

【夕立】

第四十三話 いざ、動物の世界へ

翌日。俺は約束通り、巫狐さんと会っていた。
どうやら、華さんだと思われる人物は、みぞれ達が居る動物の世界で管理されているらしい。
本来であれば、関係者以外立ち入り禁止なのだが、巫狐さんが話を回してくれているらしい。
そして、俺は改めて家にある異世界へのゲートを見る。
異世界へのゲートって、大体は大きすぎるくらいのイメージがあるが、このゲートは残念と思うくらい普通の扉だった。どこの家にもありそうな……変哲も無い扉。
しかし、扉を開けてみると俺の感想はガラッと変わった。
扉の向こうには、明らかにこちらの世界とは違った風景。メルヘンチック……と言えば伝わりやすいのだろうか?
全体的にパステルカラーの色合いの世界。木々の色や街の色、人々の様子も俺の住んでいる世界とは全くもって違っていた。

「準備はよいか?戻ることも出来なくはないが、暫くの間はこちらの世界に居ることになるぞ?」
「……分かってます。俺にも、やらなきゃいけない事があるんです。俺が……やらなきゃいけないんです」
「……そうか。なら、行くぞ!」
「はい!」

そして、俺と巫狐さんは異世界に入っていった……。


本来なら、感想の一言や観光をしようと思うのであろう。
しかし、一刻も争う事態だ。俺の頭の中には、そんな悠長な考えは微塵もなかった。
早く、華さんかどうか確認したい。もし別人なのであれば、華さん本人に俺の考えを言える機会があるという事。もう、チャンスがあるかだって分からないのだ。
そうして案内されたのは、大きな木の下。その木には、そこそこ大きな扉。ここに華さんが……。
そして、その扉を開けた先には沢山の獣人けものびとが行き交っていた。
周りを見渡し、少しだけ整理してみた感じだと……市役所みたいな所だろう。窓口みたいな所とか、待っている様子の獣人とかも居るし。
しかし、俺が案内されたのは一番奥のエレベーター。中に入り、巫狐さんがカードをかざすとエレベーターは地下へと向かった。
俺と巫狐さんを乗せたエレベーターは、そこそこ長い時間降下し、ようやく降りたと思えば長い廊下。どれだけ厳重にされている区域なのかがとても分かりやすかった。

「すまぬな。長い間歩いて疲れたじゃろ?」
「長かったのは確かですけど、俺にはやらなきゃいけない役目の為に来ていますから。この位、どうって事ないですよ」
「そうか。……お主、変わったな」
「そうですか?」
「うむ。最初に会った頃より、心構えが違っておる。……お主には色々迷惑をかけたが、それがお主自身を変えさせたのかもしれぬな」

そう言われれば確かに、みぞれ達と出会ってから色々な事があった。そして、俺も色々な関わり方をした。
確かに、そう考えれば俺は変わったのかもしれない。けど、俺はまだ変わりたい自分に変われていない。
なら、もっと努力しなきゃいけない。今回の出来事は、その一歩なのだ。

「それでは……行くぞ!」

そして、俺はとうとう華さんが居る部屋のドアを開けた──。

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