獣少女と共同生活!?

【夕立】

第四十話 不思議な力

その出来事は、平和な日常に突如訪れた。
買い出しに来た俺は、ルナさんと一緒に近くのデパートまで来ていた。
風華の方は別件があるとの事で、別行動。ルナさんは予定がなかったようなので、買い物ついでに案内することにした。
昨日、秋風さんに貰ったプラモデルを組み立てる為の道具を買うのと、ルナさんと風華の使う食器を買うのが今回の目的なのだが、買い物だけではつまらないだろう。少し、のんびりしていくとしよう。
そうして、デパートでの買い物が終わり、喫茶店へと向かおうとしていた道中で、その出来事は起きた。
交差点での信号待ち。その時、トラックがバランスを崩し、そのまま歩道へと突っ込んできた。
俺は勿論だが、他に信号待ちをしていた人達も逃げる事は出来ず、死を覚悟した。
しかし、ルナさんは自らトラックへと走り、他の人々よりトラックに近付くと、片手を地面につけた。
瞬間、謎の青いドームのようなもので人々の周りを覆うと、トラックはそのドームへと突っ込んだ。
しかし、そのトラックはドームにぶつかると同時に止まった。
トラックは無傷。歩道にいた人々も無傷。それを確認したルナさんは、ホッとした表情で地面から手を離した。
それと同時にそのドームは消え、何事も無かったかのような空間に戻った。
誰もが理解出来ず、立ち尽くしていた所、ルナさんは俺の手を引いた。

「あまり騒ぎになると大変ですので、早急に退散しましょう」

そう言って、俺たちは家へと戻っていった。


家に着いた俺は、あの出来事について聞くことにした。

「ルナさん、あの不思議な出来事はあなたが……?」
「えぇ。簡単に言えば、防御障壁ですね。空間と空間の間にドーム状の膜を作り、外側からの行動全てを遮断するというものです。内側からも何も出来ませんし、中と外を出入り出来ないので、不便な事もありますけれど」

平然と話すが、十分すぎる能力だ。
しかし、いきなり非現実的な出来事を目の当たりにした俺は、イマイチまだ実感出来ていなかった。
それが顔に出ていたのか、ルナさんは苦笑いしながら、俺に話した。

「出来ればあまり使いたい能力ではないのです。ここの人々に知られれば、私は要注意人物となりますし、何より研究対象になります。ですので、出来る限りこの件は内密にしてもらえれば……」
「分かった。他の人には言わないよ」

それと同時に、俺はこれ以上聞くのを止めた。本人が語りたくない事を、無理に聞くのは悪いしな……。
しかし、少しだけ感じた事もあった。出会った頃に、「実力を身につけてきた」と言っていたのは、もしかするとこの事なのではないか……と。
こうして、俺は事故に出会う事なく、いつも通りの日常を過ごし始めた。

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