獣少女と共同生活!?

【夕立】

第三十七話 どうしてこうなった?

「──朝倉 誠!いざ尋常に勝負だッ!」

その言葉を聞いて、初めは理解が追いつかなかった。
謎の怪奇現象が起きたと思ったら、窓から人が入ってきて、いきなり宣戦布告されたのだ。誰でも聞き返すレベルだ。
しかも、顔を確認したくても逆光になってしまっていて見えない。いや、確認したところで恐らく面識はないと思う。
そんな事を考えていると、その人物はいきなり飛びかかってきた。
隣にはみぞれもいる。関係のないみぞれを傷つける訳にもいかない……。いや、俺も関係はないと思うんだがな。
俺は、飛びかかってきた人物の腕だけを掴み、そのまま床に拘束。落下したダメージもあるのか、抵抗はあまりなかった。

「くっ……!離せよっ!」
「こらこら、あまり暴れるんじゃない。そもそも、俺は君が誰かすら分かっていないんだぞ?」
「何っ……!?」

どうやら、逆光になっていた事に気づいていなかったらしい。プチパニック状態だったのもあるけど、声も聞き覚えがない……はず。
そもそも、俺は人の事を覚えるのはあまり得意ではない。顔と名前が一致しないことなんて多いし、何度間違えたか数えきれない。
そして、暴れるのを辞めた事を確認し、拘束を俺は解いて立ち上がった。
声は女性寄りだが、声の高めな男の人もいる。口調に関しては男っぽかったし、男性であってほしい。女性に暴力を振るったみたいで、なんか悪い気持ちになってしまうし……。
そして、その人はゆっくりと立ち上がり、顔をこちらに向けた。
そして、俺はハッキリと確認した。
──その、大きな胸を。

「え、女性……だったのか……?」
「俺が誰か忘れちまったのか……。まぁ、結構前の事だから、仕方ないか……」

目に見えてしょんぼりとしてしまう彼女。俺がオロオロとしていると、みぞれが話に加わってきた。

「失礼ですが、あなたは……?」
「俺か?俺は風華ふうか。訳あってコイツにリベンジしにきた!」

得意げに言ってるが、思い切りねじ伏せられたよな……コイツ。
しかし、風華……か。特徴的な名前だから、記憶には残っていそうなんだが、全く心当たりがない。
頑張って記憶を辿っていると、窓をノックして入ってくる人物がもう1人。いや、玄関から来て欲しいんだが……。

「すいません、うちの風華がご迷惑をお掛けしました」
「んだよ!お前だって協力してたじゃねぇか!」

そう言うと、言い争いが始まってしまった。
知らない人がいきなり来て、いきなり襲ってきて、最後には目の前で喧嘩……。どうなってんだ……?
取り敢えず、色々状況を説明してもらいたいのもあるし、この2人を落ち着かせよう。うん。

「お2人さん。取り敢えず、話を聞かせてもらってもいいかな?お茶くらいなら出すから……」
「俺はお前にリベンジ出来ればそれでっ──」
「すいません、では、お言葉に甘えさせて頂きます」

風華の言葉を遮り、俺の提案を飲んでくれた彼女。こっちは比較的に常識人か……。
そうして、俺とみぞれと来客2人で話し合う事になった。
……平和って、なんだっけな。

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