獣少女と共同生活!?

【夕立】

第二十六話 嫌な予感

「ふぅ。仕込みはこんな感じですかね」

夕飯をロールキャベツにしようと考えた私は、日中の間に仕込みだけしておくことに。
今日は、誠さんがお引越しのお手伝いに行っている。多分、沢山動くから疲れて帰ってくると思う。夕飯とお風呂、どちらが先でもいいように準備しておかなくちゃ。
秋風さんも今日はお休みで、リビングのソファーに座りながら編み物を編んでいる。
その編み物の完成度は高く、ネットのフリーマーケットに出品したところ、10点用意した編み物が1時間で完売。夏場だというのに、こんなに売れるのは凄いと思う。
何か工夫をしているのかと聞いたところ、コストが安いのでなるべく低額で、名前を編み物に付けてくれるというサービスも行なっているらしい。
その結果、春後半という売れにくそうなシーズンに完売出来たいう。
今では注文も受注しており、予約も多いらしい。どれだけ人気か、ネットなどに疎い私でもよく分かる。
しかし、秋風さんも仕事があるのでずっと編んでいる訳にもいかない。休んだりする時間だって欲しいと思う。
だが、秋風さんは「趣味でやっている事なので、あまり疲れたりとかは感じないですよ。寧ろ、色々な人の役に立ててると思うととても嬉しいです」と言っていた。
私は、これといった趣味がないからやれる家事をやっているけれど、たまに秋風さんが羨ましく感じる。
何かに全力で集中して、周りの人の役にも立っている。趣味ではないけれど、誠さんだって同じ。
けれど、私はそんな趣味がない。
家事をやっているのも、お世話になっているからやらなくちゃって使命感から始めたが、今では私の仕事と思っている。
何か見つけようともしたけれど、私に合うものはなく、結局このポジションに戻っている。
不満がある訳じゃないけれど、私も何かに全力になりたい。誰かの役に立ちたい。そう思っていた時だった。
私の携帯がリビングのテーブルの上で鳴り始めた。どうやらメールが来たらしい。
手を拭き、テーブルに近づいて携帯を見ると、誠さんからだった。
もしかして、遅くなるという連絡かな?と思いながらメールを開くが、そこには思いもよらない文が書かれていた。

『しばらく家を空けます。少しの間、みぞれと秋風さんに家の留守番を頼むので、探さずに待っていて下さい』

私は、その意味を理解出来なかった。けれど、ほっておいては駄目な気がした。

「……秋風さん、力を貸してくれませんか?」
「……?いいですけど、何かあったんですか?」

私が真剣な表情で話すと、秋風さんは私を心配していた。
私に出来るか分からない。そもそも、本当にこの行動があっているかも分からない。
けれど、動かずにはいられない。しなきゃいけない。この文からは、悲しさが感じたから。
だから、私は──

「誠さんを、探しに行きます」

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