獣少女と共同生活!?
第二十五話 引越しのお手伝い(後編)
荷物を運び始めて20分程。エレベーターがあるから楽だが、荷物を置いたり持ったりが多い為、結構足腰に疲れがきていた。
「これで最後……っと」
5つ目のダンボールをトラックの荷台に積み込み、運転手に「お願いします」と一言。
運転手が会釈をし、運転席に乗り込んだのを確認したところで、文姉が何処からか帰ってきた。
「おぉー、丁度終わった感じかな?」
「人に手伝わせておいて、何処に行ってたのさ……」
「ちょーっとお仕事をね〜」
そう言って、片手に持っていた携帯をフリフリと振る。
文姉は本来、今働いている会社の社長になれた人なのだが、本人が断ったのだ。
理由は文姉らしく、「今より大変になったら、遊んだりする時間が減っちゃうじゃない?」だそう。
その後、なんだかんだあったらしく会社の中ではだいぶ高い地位にいる。本人曰く、上から5番目くらいには入っているらしい。手際は昔から凄く良かったし、人柄も良いから輪の中心になりやすい人だったっけ?
……功績に似合わず、はしゃいだりふざけたりする人ではあるけど。
「まーくん」
身体を伸ばして休憩しながらトラックを見送っていると、後ろから文姉が真剣なトーンで話しかけてきた。
「なんだよ、そんな真剣な声出して」
「まーくん、何か一人で抱え込んでない?」
その一言を聞いた瞬間、何かが刺さるような痛みを感じた。
確かに、俺は悩んでいる。どうするべきか考えている。それも、誰の力も借りずに。
だって、これは華さんと約束した事だから。誰にも言わない、と。
だから、これは抱え込んでいるのとは違う。俺が一人で解決する問題だと、俺は心の中でずっと思っていた。
だが、文姉はそんな俺の焦りを加速させる様な一言を言った。
「一人で抱え込んでる?何も悩んじゃいないよ」
「ううん、絶対悩んでるよ。だって苦しそうだもん」
グサっと、また俺の心に何かが刺さった。
苦しそう?それは俺にかける言葉じゃない。華さんが一番苦しんでる。
だから、俺は最善策を考えているだけ。何も苦しい事なんてないじゃないか。
しかし、文姉はそんな俺に構わずに続けた。
「まーくんって、頼まれた事とかを誰の力も借りずに一人でこなそうとする。誰かに相談されたら、一人で解決しようとする。自分が助けて欲しくても、自分の事だからって誰にも相談しないで一人で抱え込んじゃう」
「……違う」
「誰かに頼られて、それが自分に出来ない事でも……明らかに難しい事でも、まーくんは一人で頑張ろうとする。今までにそれで何度ケガをしたりしてきたのか分からないくらい」
「違うって、言って──」
「違わないよ」
その否定する文姉は、俺の知ってる文姉の顔じゃなかった。
俺を叱ろうとしている。けれど、その表情には悲しみの感情も混じっている。
……何故?何故そんなに悲しそうにしているんだよ。
「まーくん、頼っちゃダメなんて誰も言ってない。それでまーくんが倒れたら、何人の人が悲しむと思う?何人の人が後悔すると思う?あの時、助けてあげれてればって」
なら、俺が倒れなければいい。俺が辛くても、誰かが幸せになってくれれば、俺はそれでいい。
もし、俺のせいで誰かが辛い思いをするならば、誰も巻き込まない様に一人を選べばいい。
だから、俺は──
「……お母さんの事だって、まだ後悔しているでしょ?」
「それはアンタには関係ないだろッ!!」
ハッと、我に返った時には遅かった。
俺は、文姉に怒鳴っていた。俺が感情的になってしまったせいだ。
文姉の顔は、今にも泣きそうだった。でも、俺が怒鳴って泣きそうになったんじゃないのはすぐに分かった。話してる途中も、声が少し震えていたからだ。
「……ゴメン、文姉」
そう一言、文姉に言った俺はその場を逃げ出した。後ろを振り返ることなく、走った。
適当に走り、着いたのは駅。この時、俺は遠くに行って、文姉が見つけられない様にと考えていた。
ICカードをかざして改札を通り、電車に乗り込む。
それは、俺の家に向かう電車の反対側だった。
家に帰ったら、文姉は恐らくすぐに来てしまう。なら、暫く何処かへ身を隠そう。
みぞれ達にも、メールで暫く家を空けるとだけ伝え、携帯の電源を切った。
……少し、頭を冷やそう。
「これで最後……っと」
5つ目のダンボールをトラックの荷台に積み込み、運転手に「お願いします」と一言。
運転手が会釈をし、運転席に乗り込んだのを確認したところで、文姉が何処からか帰ってきた。
「おぉー、丁度終わった感じかな?」
「人に手伝わせておいて、何処に行ってたのさ……」
「ちょーっとお仕事をね〜」
そう言って、片手に持っていた携帯をフリフリと振る。
文姉は本来、今働いている会社の社長になれた人なのだが、本人が断ったのだ。
理由は文姉らしく、「今より大変になったら、遊んだりする時間が減っちゃうじゃない?」だそう。
その後、なんだかんだあったらしく会社の中ではだいぶ高い地位にいる。本人曰く、上から5番目くらいには入っているらしい。手際は昔から凄く良かったし、人柄も良いから輪の中心になりやすい人だったっけ?
……功績に似合わず、はしゃいだりふざけたりする人ではあるけど。
「まーくん」
身体を伸ばして休憩しながらトラックを見送っていると、後ろから文姉が真剣なトーンで話しかけてきた。
「なんだよ、そんな真剣な声出して」
「まーくん、何か一人で抱え込んでない?」
その一言を聞いた瞬間、何かが刺さるような痛みを感じた。
確かに、俺は悩んでいる。どうするべきか考えている。それも、誰の力も借りずに。
だって、これは華さんと約束した事だから。誰にも言わない、と。
だから、これは抱え込んでいるのとは違う。俺が一人で解決する問題だと、俺は心の中でずっと思っていた。
だが、文姉はそんな俺の焦りを加速させる様な一言を言った。
「一人で抱え込んでる?何も悩んじゃいないよ」
「ううん、絶対悩んでるよ。だって苦しそうだもん」
グサっと、また俺の心に何かが刺さった。
苦しそう?それは俺にかける言葉じゃない。華さんが一番苦しんでる。
だから、俺は最善策を考えているだけ。何も苦しい事なんてないじゃないか。
しかし、文姉はそんな俺に構わずに続けた。
「まーくんって、頼まれた事とかを誰の力も借りずに一人でこなそうとする。誰かに相談されたら、一人で解決しようとする。自分が助けて欲しくても、自分の事だからって誰にも相談しないで一人で抱え込んじゃう」
「……違う」
「誰かに頼られて、それが自分に出来ない事でも……明らかに難しい事でも、まーくんは一人で頑張ろうとする。今までにそれで何度ケガをしたりしてきたのか分からないくらい」
「違うって、言って──」
「違わないよ」
その否定する文姉は、俺の知ってる文姉の顔じゃなかった。
俺を叱ろうとしている。けれど、その表情には悲しみの感情も混じっている。
……何故?何故そんなに悲しそうにしているんだよ。
「まーくん、頼っちゃダメなんて誰も言ってない。それでまーくんが倒れたら、何人の人が悲しむと思う?何人の人が後悔すると思う?あの時、助けてあげれてればって」
なら、俺が倒れなければいい。俺が辛くても、誰かが幸せになってくれれば、俺はそれでいい。
もし、俺のせいで誰かが辛い思いをするならば、誰も巻き込まない様に一人を選べばいい。
だから、俺は──
「……お母さんの事だって、まだ後悔しているでしょ?」
「それはアンタには関係ないだろッ!!」
ハッと、我に返った時には遅かった。
俺は、文姉に怒鳴っていた。俺が感情的になってしまったせいだ。
文姉の顔は、今にも泣きそうだった。でも、俺が怒鳴って泣きそうになったんじゃないのはすぐに分かった。話してる途中も、声が少し震えていたからだ。
「……ゴメン、文姉」
そう一言、文姉に言った俺はその場を逃げ出した。後ろを振り返ることなく、走った。
適当に走り、着いたのは駅。この時、俺は遠くに行って、文姉が見つけられない様にと考えていた。
ICカードをかざして改札を通り、電車に乗り込む。
それは、俺の家に向かう電車の反対側だった。
家に帰ったら、文姉は恐らくすぐに来てしまう。なら、暫く何処かへ身を隠そう。
みぞれ達にも、メールで暫く家を空けるとだけ伝え、携帯の電源を切った。
……少し、頭を冷やそう。
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