世界一の魔術鍛治師〜どんな剣も名剣へ〜

海月結城

決着

戦いはこれで終わり


『私たちよりも強くなった? 笑わせないでくれるかしら。神の名は伊達じゃないわ』
「やればわかる。もう、貴女じゃ、勝てない」
『後悔しながら死になさい!!』

 運命の邪神は、四つの神級魔術と重力魔術を放った。

 それは、マリーとユリーカ、ミカエルに残酷に降りかかる。

 結界を張ろうとするが、重力の強化が施され、口さえ動かせず、重力にされるがままだった。そして、神級魔術が三人に襲った。

 悲鳴をあげることすら許されずに、死んだと運命の邪神は思った。

『ふふふ。なんだ、呆気なかったわね。あっちは終わったかしら?』

 罪の邪神とカナハルムが対峙している。そっちに踏み込もうとした時、大気が揺れた。

『何これ?』

 そこには、無傷のマリー達が立っていた。

「いやー、危なかったですね」
「そうね。あと少し回避が遅れたら死んでたわね」

 ユリーカとミカエルが、可笑しそうに笑う。

『な、んで、貴女たちが生きてるのよ!?』
「そんなことも分からないの? 邪神ってそんな程度だったんだ」

 悪戯っ子な雰囲気を身に纏ったミカエルが、クスクスと嘲笑う。

 それが、頭にきた運命の邪神は火の超級魔術を使った。

「気づいてない?」

 マリーが上を指差しながらそんなことを言った。それにつられ、運命の邪神はそれを見て目を見開いた。

『それは、さっき私が放った魔術?』
「正解よ」

 それは、さっきマリー達が無傷で立っていたことと繋がっている。
 自分が運命の邪神が放った魔術で死んだ運命を書き換え、その魔術は自分が放った魔術に過去を改変させたのだ。

『嘘よ。ただの人間にそんなことができるわけないでしょ!?』
「出来てるんだから。さっさと、ここから居なくなれ!!」

 ユリーカのその言葉とともに、マリーはその魔術を放った。

『そんなもの。運命を変えればいいだけなのよ!』

 そう言って、運命を書き換えた。

 しかし、何も起きなかった。

『何で? 何で、それがまだ私に迫ってきてるのよ!!』
「上書きした。それだけ」
『ありえない。ありえないんだからあぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!』

 運命の邪神は魂ごと、世界から消え去った。




 時は少し戻り、罪の邪神vsカナハルム。

『さて、あちらも始まったことだ。我らも戦うとしよう』
「そうですね。早々に決着をつけたいところです」

 二人とも、互いの強さを測るように円を描きながら、動いている。

「来ないのなら、こっちから行くぞ!!」

 そして、カナハルムは地面を蹴った。

『早い!』

 罪の邪神は、カナハルムの動きを目で追わず、感覚で追う。

『そこだ!!』

 罪の邪神の右後ろ。そこに、剣を振るう。

 剣と剣が交差し、二人の動きがそこで止まる。

「なかなかやるな」
『ふん。そんな余裕なのも今のうちだぞ』

 罪の邪神が剣に力を込めると、カナハルムが後ろに吹き飛んでいく。

『次は我だ!』

 罪の邪神は、構える。

 息を吐く。そして、消えた。

「っ!?」

 カナハルムは反応できなかった。

「ぐあぁぁぁぁ!!」

 背中にいくつもの傷が出来た。

『こんなものに対応できないのでは、我には勝てんぞ』

 カナハルムは地面に血だまりを作る。

『後、数年先だったら、我の方が負けていただろうな。さて、あっちは終わったかな?』

 罪の邪神が運命の邪神とマリー達の戦いを見るために、カナハルムに背を向ける。

『? 背中がヒリヒリする?』

 罪の邪神が背中に手をやり、目の前に持ってくる。そこには、べったりと血が付いていた。

「戦いの最中に後ろを向くとは、余裕だな。邪神!!」

 そこには、剣に血をつけたカナハルムが立っていた。

『何故お前が立っている!?』

 カナハルムは無傷で立っている。

「そんなの、答える義理は無いな。さぁ、ここでお前は終わりだ!!」

 カナハルムは身体強化を自分に施した。それも、自分の魔力ほぼ全てを使った身体強化だ。それは、軽々しく神をも超える。

「この世界から、いなくなれええぇぇぇぇぇ!!」

 カナハルムの絶叫とともに剣を振るう。それを防ぐために剣をかざす罪の邪神。しかし、カナハルムの剣は、罪の邪神の剣をへし折った。

 勢いは消えず、カナハルムの剣は罪の邪神の身体を二つに切り裂いた。

『許さんぞ。カナハルム!! いつか、必ず復讐してやる!!』

 その声は全世界に届いた。

「はぁ、はぁ。倒した……のか?」
「カーーーールーーーー!!」
「ぐへぇ!!」

 ユリーカが全力でカナハルムに抱きついた。

「勝った。勝ったよ、カル!!」
「あぁ、やったんだな。俺たち」

 そして、カナハルム達は、次元の歪みに入り、ダンジョン都市に帰ってきた。


次回エピローグ

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