ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
なろう系の主人公っぽい生い立ち
「アースバインド!」
「後鬼召喚!」
「ウインドフォール!」
アルムがマナビーストの四肢を封じ、ユエの後鬼が上から押さえ、更にフィードが全てを補助する形で空気の圧力を持って大地に縛り付ける。
「行くぞハクア!」
「了解!」
動きを封じた事を確認した二人はマナビーストの背に飛び乗る。
「グッウウァ!」
「エッグィ……」
マナビーストの動きを封じる事だけに力を集中した三人に、ハクアとアトゥイを気遣う余裕はない。
必然、接触する必要がある二人もその背に飛び乗ることで、その影響を受けることとなる。
「「ハアアアァァ!」」
だがそれを承知で飛び乗ったハクア達は、羽を広げると全力でマナを注ぎ込み始めた。
周囲からマナを吸収して送り込む。
言葉にすれば簡単な事だが実際にやるとなると簡単なことではない。
ドラゴンはその背に生える羽からマナを取り込む。
しかしそれには極度の集中を要し、またそれを送り込むには相手の抵抗力を突破しなければならない。
抵抗力は誰にでも存在する。
特段、格上の相手にマナを注ぎ込むには、全力でブレスを放つよりも力を要するのだ。
そして更にハクア達がする取り込むと同時にマナを送り込むというのは、自分の限界を超えてマナを取り込み続けるのと同義、それは血管の中を刃物が流れるのに等しい痛みが、常に全身を駆け巡るようなものだ。
「ガァァゥアア!!」
「クッウウゥ……」
「ウッ……ク……」
マナビーストが苦しそうに呻き暴れ回り、ハクアとアトゥイも苦悶の声を上げながら必死に耐える。
マナビーストを押さえる三人も全力で押さえるが、それでも完全に封じることが出来ないほどの暴れぶりだ。
これはなんだ?
だが、そうして耐えるハクアの脳裏に不意になにか映像のようなものが浮かび上がる。
それは何者でもなかった一匹の動物の過去。
この世界は理不尽だ。
人は不思議な力を使い、おそろいし魔獣も跋扈する。そんな世界にただの動物が生き残るのがどれほど過酷な事か。
そしてソレ・・もそんな過酷な世界に生きる一匹の動物に過ぎなかった。
だがソレが居た群れに一匹の魔獣が現れ、群れは抵抗する事も出来ずほとんどのものが殺された。
ソレは逃げた。
逃げて逃げて逃げ延びた先にも、脅威は幾らでも存在した。
そこで悟った。
 この世界に自分達を守るものは何もない───と、だから願った。
この理不尽な世界に抗う力を、大切な家族を仲間を守れる力を。
かくしてその願いは果たされる。
ただ狩られるだけの動物を憂いた神の思惑か、大地が世界がその思いに応えたのかは定かではない。
しかし現実にマナはソレに力を与え、望むものを護るための力を得ることとなった。
ソレは与えられた力を存分に使い、家族を仲間を守り続けた。
数年……数十年……数百年。
時が経ち、親しい家族や仲間が死んでも、ソレは同胞の為に世の理不尽な暴力に抗い続けた。
抗い、抗い、抗い、その時は遂に訪れる。
限界を超え使い続けた力は、その身体を段々と枯れ木のように朽ちさせて行った。
死期を悟ったソレは、若く才能のある者にその力を譲る事で、あとはゆっくりと朽ちていくだけだのはずだった。
だが───ソレの夢を、願いを長年叶え続けたその力は突如として牙を剥く。
初めからそういったモノだったのか、それとも長年使い続けた事で変質したのか、それは誰にも分からない。
だが事実、その力はときおり暴走し、ソレがなによりも守りたいと思っていたものに牙を剥こうとした。
だからソレは群れを離れた。
大切なものを傷付けるくらいなら、最後は一人で朽ちようと考えたからだ。
暴走の度に身体が朽ちていく。
だがしかしその力は日に日に大きくなるばかりだった。
また月日が流れた。
まだ死なない。
まだ動く。
いつまで動く。
まだ死ねない……。
死を願い歩き続けるソレの身体は朽ちては再生を繰り返す。ソレの願いを叶え続けた力は、今やソレを無理矢理生かし続け、いつしか祝福は呪いと化していた。
延々と続く破壊と再生。
その果ては今だ見えずただ歩き続ける。
数年、数十年、数百年のような気もすれば、数分、数秒、刹那の時のような時間を過ごす。
歩き、歩き、歩き、気が付けばそれが目の前に居た。
黒いナニカだ。
黒く、巨大で、途方もない力を持つナニカが手を伸ばし、この身体に触れ───。
「───ア、───ハク、───ハクア!」
「───っ!?」
「大丈夫か!?」
「平……気……」
その声にハクアが気が付くと、ホッとした空気を出しながらアトゥイがそうかと答える。
今のはなんだ?
あの映像は恐らくマナビーストのもの。しかもそれはアトゥイの様子を見る限り、ハクアにだけ起こった現象のようだった。
力の運用方法の違いか、はたまた感応能力の違いか。
理由は分からないが今は気にする時ではないと断じる。
力を求めた理由も分かる。
その生き方に、行動に尊敬もする。
だが、今はその面影はなく、ただ暴れるだけの獣と化している。
襲い来る敵ならば倒すしかないのだ! と、思っているのも本音だが、なろう系の主人公っぽい生い立ちに、勝てるかとても不安になるハクアさんだった。
だってこのマナビースト、とっても主人公なのだ。
「クオオオオオォォン!!」
そんなハクアの決意に反応するように、マナビーストが拘束を引きちぎり暴れ回り、必死にしがみつきながらマナを注ぎ込むハクアとアトゥイ。
だが、マナビーストは壁に向かい突進を繰り返し、身体を擦り付け自身も傷付けながら二人をふるい落とそうとする。
くっ、もう限界か……。
ハクアの考えた通り、ここまでの戦いとマナビーストの拘束に、全ての力を使い尽くした三人は倒れている。
ハクアもアトゥイももう長くは持たないだろう。
お互いに状況を察知した二人は一瞬視線交錯させると、送り込むマナの量を限界を超えて更に注ぎ込む。
「「オオオォォオォ!」」
暴れ回るマナビーストとハクア達。
「クッ!」
「うわっ!?」
何度目かの突進でアトゥイが運悪く壁との間に挟まれ落ち、ハクアもまた必死に移動しながらしがみつくが、痛みに一瞬気を取られた隙に砕けた璧の破片が激突し、弾き飛ばされた。
「ハクア!」
「あるじ!」
投げ出されたハクアは竜化も解け、衝撃で動けずにいたが、アトゥイとユエが間一髪、地面に激突する前になんとか受け止める。
「やっぱりダメだった!?」
「くっ、やはり無謀な賭けだったか……」
ハクア達三人の元に駆け付けたフィードとアルムは、暴れ回り、怒りの感情でこちらを睨みながら突進しようとするマナビーストの、次の攻撃に備えて【結界】で防御を固め、諦めの感情を滲ませる。
だが───
「いいや。賭けは……私達の勝ちだ」
瞬間、ハクアの言葉を証明するようにバキッ! と何かが砕け散る音がダンジョンに鳴り響く。
それはマナビーストの身体が砕ける音。
ハクア達の攻撃により、遂にマナの力に耐えきれなくなったマナビーストの身体は砕け、それは足から全体へ蝕むように広がり、自身の身体を支える事が出来なくなったマナビーストは倒れ込だ。 
「助かった……?」
「やっ……たのか?」
「そのようだな」
「「「ウオォォォ!!」」」
信じられないものを見たように呟くフィードとアルムの言葉にアトゥイが同意する。
するとそれを聞いていた治療中だった集団から歓声が上がる。
圧倒的な敵の存在。
感じたことのなかった命の危機から脱したことで、緊張の糸が切れたのだろう、何人かは涙ながらに喜んでいる。
「あっ……」
その光景にハクアもまた、張り詰めていた緊張の糸を解くが、誰かが発したそんな言葉にすらならない声が静かに、だが確実に全員の鼓膜を震わせ、ハクアを嘲笑うかのように立ち上がろうとするマナビーストの舞台を調えた。
「後鬼召喚!」
「ウインドフォール!」
アルムがマナビーストの四肢を封じ、ユエの後鬼が上から押さえ、更にフィードが全てを補助する形で空気の圧力を持って大地に縛り付ける。
「行くぞハクア!」
「了解!」
動きを封じた事を確認した二人はマナビーストの背に飛び乗る。
「グッウウァ!」
「エッグィ……」
マナビーストの動きを封じる事だけに力を集中した三人に、ハクアとアトゥイを気遣う余裕はない。
必然、接触する必要がある二人もその背に飛び乗ることで、その影響を受けることとなる。
「「ハアアアァァ!」」
だがそれを承知で飛び乗ったハクア達は、羽を広げると全力でマナを注ぎ込み始めた。
周囲からマナを吸収して送り込む。
言葉にすれば簡単な事だが実際にやるとなると簡単なことではない。
ドラゴンはその背に生える羽からマナを取り込む。
しかしそれには極度の集中を要し、またそれを送り込むには相手の抵抗力を突破しなければならない。
抵抗力は誰にでも存在する。
特段、格上の相手にマナを注ぎ込むには、全力でブレスを放つよりも力を要するのだ。
そして更にハクア達がする取り込むと同時にマナを送り込むというのは、自分の限界を超えてマナを取り込み続けるのと同義、それは血管の中を刃物が流れるのに等しい痛みが、常に全身を駆け巡るようなものだ。
「ガァァゥアア!!」
「クッウウゥ……」
「ウッ……ク……」
マナビーストが苦しそうに呻き暴れ回り、ハクアとアトゥイも苦悶の声を上げながら必死に耐える。
マナビーストを押さえる三人も全力で押さえるが、それでも完全に封じることが出来ないほどの暴れぶりだ。
これはなんだ?
だが、そうして耐えるハクアの脳裏に不意になにか映像のようなものが浮かび上がる。
それは何者でもなかった一匹の動物の過去。
この世界は理不尽だ。
人は不思議な力を使い、おそろいし魔獣も跋扈する。そんな世界にただの動物が生き残るのがどれほど過酷な事か。
そしてソレ・・もそんな過酷な世界に生きる一匹の動物に過ぎなかった。
だがソレが居た群れに一匹の魔獣が現れ、群れは抵抗する事も出来ずほとんどのものが殺された。
ソレは逃げた。
逃げて逃げて逃げ延びた先にも、脅威は幾らでも存在した。
そこで悟った。
 この世界に自分達を守るものは何もない───と、だから願った。
この理不尽な世界に抗う力を、大切な家族を仲間を守れる力を。
かくしてその願いは果たされる。
ただ狩られるだけの動物を憂いた神の思惑か、大地が世界がその思いに応えたのかは定かではない。
しかし現実にマナはソレに力を与え、望むものを護るための力を得ることとなった。
ソレは与えられた力を存分に使い、家族を仲間を守り続けた。
数年……数十年……数百年。
時が経ち、親しい家族や仲間が死んでも、ソレは同胞の為に世の理不尽な暴力に抗い続けた。
抗い、抗い、抗い、その時は遂に訪れる。
限界を超え使い続けた力は、その身体を段々と枯れ木のように朽ちさせて行った。
死期を悟ったソレは、若く才能のある者にその力を譲る事で、あとはゆっくりと朽ちていくだけだのはずだった。
だが───ソレの夢を、願いを長年叶え続けたその力は突如として牙を剥く。
初めからそういったモノだったのか、それとも長年使い続けた事で変質したのか、それは誰にも分からない。
だが事実、その力はときおり暴走し、ソレがなによりも守りたいと思っていたものに牙を剥こうとした。
だからソレは群れを離れた。
大切なものを傷付けるくらいなら、最後は一人で朽ちようと考えたからだ。
暴走の度に身体が朽ちていく。
だがしかしその力は日に日に大きくなるばかりだった。
また月日が流れた。
まだ死なない。
まだ動く。
いつまで動く。
まだ死ねない……。
死を願い歩き続けるソレの身体は朽ちては再生を繰り返す。ソレの願いを叶え続けた力は、今やソレを無理矢理生かし続け、いつしか祝福は呪いと化していた。
延々と続く破壊と再生。
その果ては今だ見えずただ歩き続ける。
数年、数十年、数百年のような気もすれば、数分、数秒、刹那の時のような時間を過ごす。
歩き、歩き、歩き、気が付けばそれが目の前に居た。
黒いナニカだ。
黒く、巨大で、途方もない力を持つナニカが手を伸ばし、この身体に触れ───。
「───ア、───ハク、───ハクア!」
「───っ!?」
「大丈夫か!?」
「平……気……」
その声にハクアが気が付くと、ホッとした空気を出しながらアトゥイがそうかと答える。
今のはなんだ?
あの映像は恐らくマナビーストのもの。しかもそれはアトゥイの様子を見る限り、ハクアにだけ起こった現象のようだった。
力の運用方法の違いか、はたまた感応能力の違いか。
理由は分からないが今は気にする時ではないと断じる。
力を求めた理由も分かる。
その生き方に、行動に尊敬もする。
だが、今はその面影はなく、ただ暴れるだけの獣と化している。
襲い来る敵ならば倒すしかないのだ! と、思っているのも本音だが、なろう系の主人公っぽい生い立ちに、勝てるかとても不安になるハクアさんだった。
だってこのマナビースト、とっても主人公なのだ。
「クオオオオオォォン!!」
そんなハクアの決意に反応するように、マナビーストが拘束を引きちぎり暴れ回り、必死にしがみつきながらマナを注ぎ込むハクアとアトゥイ。
だが、マナビーストは壁に向かい突進を繰り返し、身体を擦り付け自身も傷付けながら二人をふるい落とそうとする。
くっ、もう限界か……。
ハクアの考えた通り、ここまでの戦いとマナビーストの拘束に、全ての力を使い尽くした三人は倒れている。
ハクアもアトゥイももう長くは持たないだろう。
お互いに状況を察知した二人は一瞬視線交錯させると、送り込むマナの量を限界を超えて更に注ぎ込む。
「「オオオォォオォ!」」
暴れ回るマナビーストとハクア達。
「クッ!」
「うわっ!?」
何度目かの突進でアトゥイが運悪く壁との間に挟まれ落ち、ハクアもまた必死に移動しながらしがみつくが、痛みに一瞬気を取られた隙に砕けた璧の破片が激突し、弾き飛ばされた。
「ハクア!」
「あるじ!」
投げ出されたハクアは竜化も解け、衝撃で動けずにいたが、アトゥイとユエが間一髪、地面に激突する前になんとか受け止める。
「やっぱりダメだった!?」
「くっ、やはり無謀な賭けだったか……」
ハクア達三人の元に駆け付けたフィードとアルムは、暴れ回り、怒りの感情でこちらを睨みながら突進しようとするマナビーストの、次の攻撃に備えて【結界】で防御を固め、諦めの感情を滲ませる。
だが───
「いいや。賭けは……私達の勝ちだ」
瞬間、ハクアの言葉を証明するようにバキッ! と何かが砕け散る音がダンジョンに鳴り響く。
それはマナビーストの身体が砕ける音。
ハクア達の攻撃により、遂にマナの力に耐えきれなくなったマナビーストの身体は砕け、それは足から全体へ蝕むように広がり、自身の身体を支える事が出来なくなったマナビーストは倒れ込だ。 
「助かった……?」
「やっ……たのか?」
「そのようだな」
「「「ウオォォォ!!」」」
信じられないものを見たように呟くフィードとアルムの言葉にアトゥイが同意する。
するとそれを聞いていた治療中だった集団から歓声が上がる。
圧倒的な敵の存在。
感じたことのなかった命の危機から脱したことで、緊張の糸が切れたのだろう、何人かは涙ながらに喜んでいる。
「あっ……」
その光景にハクアもまた、張り詰めていた緊張の糸を解くが、誰かが発したそんな言葉にすらならない声が静かに、だが確実に全員の鼓膜を震わせ、ハクアを嘲笑うかのように立ち上がろうとするマナビーストの舞台を調えた。
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