ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
ハクアらしいと言えばハクアらしいのじゃ
「んー? アカルフェルに心酔してる奴らを集めたって言ってたっすけど、流石に全員ではないんすね」
「む、そうなのか?」
「はいっす。ミコト様はあんまり知らないと思うっすけど、今映ってるあの髪を束ねた水竜の子。あの子はアカルフェルとは全く無関係っすね」
「ん……後、端っこでビクビクしてる風竜と、無駄に自信満々で腕組んでる地竜もなの。他にも何体か居るけど注目株はその三体なの」
「ほう。そうなのか。ん? そういえば火竜はあまり居らんようじゃが、理由があるのか?」
「火竜はこの間の玉石混交試合に出る為に、一足早く試練を受けました。そうでなければ僕も今回の試練が参加する回でしたし」
「今回の玉石は火龍王に教えを乞えるチャンスだったので、レリウスを含め資格がある者は特例で認められました。まあ、その代わり今回のように一般的な公開はなかったですが……」
「そのせいでレリウスの活躍が観れなかったってトリスが荒れてたから、よーく覚えてるの」
「なるほどのぅ」
ちょっとした疑問を解消しつつ試練の開始を待つ一行。
しかしやはり待てど暮らせどハクア達は現れず時間は過ぎ去っていく。
「えっ、本当にどうしたんっすかハクアは、もう始まるっすよ」
「うーん。全然姿が見えないの」
「確かに……あの小娘、今度は何をやらかす気だ」
シーナ達の心配をよそに一向に姿を現さないハクア。しかも心配していたとおり遂に試練の開始時間になってしまった。
「あらあら、始まっちゃったわね」
「……逃げた?」
「ない。とは言い切れないところが白亜さんですね」
ミコトの言葉にテアが答える。その答えに全員が確かにと考えたが口には出さない。
なぜならその言葉を聞いた瞬間から、あらあらうふふと、笑う水龍王の圧力が一気に増したからだ。
横に居る火龍王などその恐ろしさを知っているからか、ダラダラと冷や汗をかいている。
そうとは知らず映像の中の一行は次々にダンジョンへ足を踏み入れていく。そして全員が入ると同時に何故か画面が切り替わった。
「あっ」
思わず漏れた声。
しかしそれも仕方ない。
なぜなら切り替わった映像の中では、明らかにダンジョンの中と思われる場所で、呑気にレジャーシートを敷き、豪華なお弁当を広げて舌鼓を打つ小鬼が二人。
そう、ハクアとユエだ。
「あいつら、まさか先にダンジョンの中に入ってたのか!?」
「まあ、先に入っちゃダメなんてルールはないものね」
「いやまあ、そうっすけど」
「フックククッ。本当に予想がつかん面白い奴だな」
「父よ喜ぶな。奴が調子に乗る。奴のウザ絡みは本当に面倒だぞ」
「トリスは白亜さんに絡まれていましたから実感がこもってますね」
「……本当にな」
「ハクアらしいと言えばハクアらしいのじゃ」
こうして里中の住人が見守る中、フライング気味にハクアのダンジョン攻略が始まっていた。
▼▼▼▼▼▼
空気が重い。
攻略をする一行の映像を観戦しながらレリウスは冷たい汗を流していた。
だがしかしそれもしょうがないだろう。
まず、自分にとって……いや、この里に住むほとんどの者にとって、上位の存在であるミコトや龍王達の機嫌がすこぶる悪い。
更にはハクアと共に来た元女神、そして風龍王とほぼ同格の力を持つと言われている自身の姉、トリスも同じく不機嫌だ。
ムニやシーナは不機嫌ではないが、それでもやれやれと言った空気を醸し出している。更には会場に集まった面々も、空に浮かぶ映像を観て憎悪を深めている。
「はぁ……」
誰にも気付かれぬよう小さく為息を吐きながら、当初と違い空中に映し出された二つの映像に視線を向ける。
一つはこの試練に挑む自分の同期とも言える若き竜達だ。
今は度重なる襲撃の合間を抜い小休憩を取っている最中だ。映像に映る面々は絶え間ない襲撃に荒い息を吐いている。
その姿を観てレリウスは自分が試練を受けた時の事を思い出す。
この試練が行われるダンジョンの最大の敵は物量だ。
四方八方、一時も気を休める暇すらなく襲い来る敵。それをどう対処するか、どうペース配分をするのかが重要になってくる。
 
自分を含め、この里の者は集団戦よりも個人戦の方が得意だ。このダンジョンの敵は一撃で倒せるほど弱い、仮に一人で攻略するのならばなんの苦労もないだろう。
だがそれが集団となるなら話は別だ。
自分の時もそうだったが、一人でも攻略出来る自信も力もあるばかりに、協力しようという気がない。
そのため仲間に攻撃が当たらないようにする。それだけで動きが鈍り、敵の物量に圧倒されてしまう。
死んでしまう程の強さが敵にないのは幸いだが、疲労は溜まり、段々とギスギスしていく空気にはレリウスも苦労した。
その苦労は自分も分かるからこそ、疲労も相当なものだろうと、荒い息を吐いている同期を不憫に思う。
せめてメンバーがもう少しまともなら少しは違っただろう。
ハクアの邪魔をする為に多く集められたメンバー。
映像を観る限り彼等、彼女等が一番の問題だった。
敵を多く倒し活躍すれば試練を合格出来ると思っているのか、我先に攻撃をしようと協調する姿勢が全くないどころか、協調する為に声をかけている仲間すら邪険に扱っている。
これではまともに戦闘する事さえ出来ないだろう。
映像を見詰めながらそんな風に考えていたレリウスは、自分の時もこうだったのだろうか? そんな事を考えながらもう一つの映像をチラリと観る。
そこに映し出されているのは、もちろんもう一組の攻略者であるハクアとユエだ。
だが、そこに映し出されている映像は、もう片方の映像と比べて全くと言っていい程別物だ。
『ユエー、十秒後にあっちの方から二体来るよー』
『んっ』
先日踏破したダンジョンで仲間にしたケルベロスを呼び出し、その上に寝転がるハクアが、軽い感じでユエに指示を出す。
それに短く答えたユエがハクアの指示した方へ走ると、十秒後、ハクアが言った通り二体の悪魔型モンスター、リトルデーモンが現れる。
しかし事前にその存在を知らされていたユエは、特に苦戦する事もなく一刀の下に切り捨て、戦闘は呆気なく終了した。
その映像を観戦していた観客達から盛大なヤジが飛ぶ。
これが先程から繰り返されている現状だ。
当初、試練を受ける参加者よりも先に入り攻略を始めていると思われたハクア達。
しかし蓋を開けてみれば、ハクア達が居たのは入り口近くの死角になる部分だった。そしてハクア達は他の参加者達が攻略を開始すると、なんとその後を付け始めた。
そうしてハクア達は、大部分の戦闘を他の参加者に押し付け、自分達は後をその追い、楽にダンジョンを進んでいたのだ。
レリウスから見てもハクアのこれは擁護出来ない。
しかも今もまた、ハクアは映像に向かってこちらを馬鹿にするかのように、ピースなどをして挑発するような行為を繰り返している。
こうしてハクアはその映像を観ている観客から憎悪を向けられ、いつも一緒に居る面々も不機嫌にさせているのだ。
「……はぁ」
もう一度レリウスは聞こえない程度に溜息吐く。
「全く、落ちたものですね」
そんなレリウスの耳に言葉が響いた。
その言葉の発信源、テアの方を見ると彼女は映像ではなく、会場に居る者達を蔑むような目で見ている。
「そうですねー。やっぱり永らく強者なんてやってると、自然となまるもんなのかな?」
テアの言葉に応えるように、同じく蔑むような視線を向けながら聡子が言葉を吐き捨てる。
「ええ、お恥ずかしい限りですわ」
「全くだな」
「ああ」
「本当に……」
二人の言葉に水龍王が答え、それに続くように他の龍王達も同意する。
それは一緒に居るミコト達も同じだ。
それに混乱するのはレリウスだ。
てっきりレリウスは、ハクアの行動に怒りをあらわにしているものだと思っていた。
だがどうやら、ここに居るメンバーが怒っていたのは、少なくともハクアにではなく、会場に居る観客達だったらしい。
「レリウス。貴方もよ」
とても良い笑顔で水龍王からいきなり名指しされたレリウスは、さっきまでとは違った意味で冷や汗が流れた。
「む、そうなのか?」
「はいっす。ミコト様はあんまり知らないと思うっすけど、今映ってるあの髪を束ねた水竜の子。あの子はアカルフェルとは全く無関係っすね」
「ん……後、端っこでビクビクしてる風竜と、無駄に自信満々で腕組んでる地竜もなの。他にも何体か居るけど注目株はその三体なの」
「ほう。そうなのか。ん? そういえば火竜はあまり居らんようじゃが、理由があるのか?」
「火竜はこの間の玉石混交試合に出る為に、一足早く試練を受けました。そうでなければ僕も今回の試練が参加する回でしたし」
「今回の玉石は火龍王に教えを乞えるチャンスだったので、レリウスを含め資格がある者は特例で認められました。まあ、その代わり今回のように一般的な公開はなかったですが……」
「そのせいでレリウスの活躍が観れなかったってトリスが荒れてたから、よーく覚えてるの」
「なるほどのぅ」
ちょっとした疑問を解消しつつ試練の開始を待つ一行。
しかしやはり待てど暮らせどハクア達は現れず時間は過ぎ去っていく。
「えっ、本当にどうしたんっすかハクアは、もう始まるっすよ」
「うーん。全然姿が見えないの」
「確かに……あの小娘、今度は何をやらかす気だ」
シーナ達の心配をよそに一向に姿を現さないハクア。しかも心配していたとおり遂に試練の開始時間になってしまった。
「あらあら、始まっちゃったわね」
「……逃げた?」
「ない。とは言い切れないところが白亜さんですね」
ミコトの言葉にテアが答える。その答えに全員が確かにと考えたが口には出さない。
なぜならその言葉を聞いた瞬間から、あらあらうふふと、笑う水龍王の圧力が一気に増したからだ。
横に居る火龍王などその恐ろしさを知っているからか、ダラダラと冷や汗をかいている。
そうとは知らず映像の中の一行は次々にダンジョンへ足を踏み入れていく。そして全員が入ると同時に何故か画面が切り替わった。
「あっ」
思わず漏れた声。
しかしそれも仕方ない。
なぜなら切り替わった映像の中では、明らかにダンジョンの中と思われる場所で、呑気にレジャーシートを敷き、豪華なお弁当を広げて舌鼓を打つ小鬼が二人。
そう、ハクアとユエだ。
「あいつら、まさか先にダンジョンの中に入ってたのか!?」
「まあ、先に入っちゃダメなんてルールはないものね」
「いやまあ、そうっすけど」
「フックククッ。本当に予想がつかん面白い奴だな」
「父よ喜ぶな。奴が調子に乗る。奴のウザ絡みは本当に面倒だぞ」
「トリスは白亜さんに絡まれていましたから実感がこもってますね」
「……本当にな」
「ハクアらしいと言えばハクアらしいのじゃ」
こうして里中の住人が見守る中、フライング気味にハクアのダンジョン攻略が始まっていた。
▼▼▼▼▼▼
空気が重い。
攻略をする一行の映像を観戦しながらレリウスは冷たい汗を流していた。
だがしかしそれもしょうがないだろう。
まず、自分にとって……いや、この里に住むほとんどの者にとって、上位の存在であるミコトや龍王達の機嫌がすこぶる悪い。
更にはハクアと共に来た元女神、そして風龍王とほぼ同格の力を持つと言われている自身の姉、トリスも同じく不機嫌だ。
ムニやシーナは不機嫌ではないが、それでもやれやれと言った空気を醸し出している。更には会場に集まった面々も、空に浮かぶ映像を観て憎悪を深めている。
「はぁ……」
誰にも気付かれぬよう小さく為息を吐きながら、当初と違い空中に映し出された二つの映像に視線を向ける。
一つはこの試練に挑む自分の同期とも言える若き竜達だ。
今は度重なる襲撃の合間を抜い小休憩を取っている最中だ。映像に映る面々は絶え間ない襲撃に荒い息を吐いている。
その姿を観てレリウスは自分が試練を受けた時の事を思い出す。
この試練が行われるダンジョンの最大の敵は物量だ。
四方八方、一時も気を休める暇すらなく襲い来る敵。それをどう対処するか、どうペース配分をするのかが重要になってくる。
 
自分を含め、この里の者は集団戦よりも個人戦の方が得意だ。このダンジョンの敵は一撃で倒せるほど弱い、仮に一人で攻略するのならばなんの苦労もないだろう。
だがそれが集団となるなら話は別だ。
自分の時もそうだったが、一人でも攻略出来る自信も力もあるばかりに、協力しようという気がない。
そのため仲間に攻撃が当たらないようにする。それだけで動きが鈍り、敵の物量に圧倒されてしまう。
死んでしまう程の強さが敵にないのは幸いだが、疲労は溜まり、段々とギスギスしていく空気にはレリウスも苦労した。
その苦労は自分も分かるからこそ、疲労も相当なものだろうと、荒い息を吐いている同期を不憫に思う。
せめてメンバーがもう少しまともなら少しは違っただろう。
ハクアの邪魔をする為に多く集められたメンバー。
映像を観る限り彼等、彼女等が一番の問題だった。
敵を多く倒し活躍すれば試練を合格出来ると思っているのか、我先に攻撃をしようと協調する姿勢が全くないどころか、協調する為に声をかけている仲間すら邪険に扱っている。
これではまともに戦闘する事さえ出来ないだろう。
映像を見詰めながらそんな風に考えていたレリウスは、自分の時もこうだったのだろうか? そんな事を考えながらもう一つの映像をチラリと観る。
そこに映し出されているのは、もちろんもう一組の攻略者であるハクアとユエだ。
だが、そこに映し出されている映像は、もう片方の映像と比べて全くと言っていい程別物だ。
『ユエー、十秒後にあっちの方から二体来るよー』
『んっ』
先日踏破したダンジョンで仲間にしたケルベロスを呼び出し、その上に寝転がるハクアが、軽い感じでユエに指示を出す。
それに短く答えたユエがハクアの指示した方へ走ると、十秒後、ハクアが言った通り二体の悪魔型モンスター、リトルデーモンが現れる。
しかし事前にその存在を知らされていたユエは、特に苦戦する事もなく一刀の下に切り捨て、戦闘は呆気なく終了した。
その映像を観戦していた観客達から盛大なヤジが飛ぶ。
これが先程から繰り返されている現状だ。
当初、試練を受ける参加者よりも先に入り攻略を始めていると思われたハクア達。
しかし蓋を開けてみれば、ハクア達が居たのは入り口近くの死角になる部分だった。そしてハクア達は他の参加者達が攻略を開始すると、なんとその後を付け始めた。
そうしてハクア達は、大部分の戦闘を他の参加者に押し付け、自分達は後をその追い、楽にダンジョンを進んでいたのだ。
レリウスから見てもハクアのこれは擁護出来ない。
しかも今もまた、ハクアは映像に向かってこちらを馬鹿にするかのように、ピースなどをして挑発するような行為を繰り返している。
こうしてハクアはその映像を観ている観客から憎悪を向けられ、いつも一緒に居る面々も不機嫌にさせているのだ。
「……はぁ」
もう一度レリウスは聞こえない程度に溜息吐く。
「全く、落ちたものですね」
そんなレリウスの耳に言葉が響いた。
その言葉の発信源、テアの方を見ると彼女は映像ではなく、会場に居る者達を蔑むような目で見ている。
「そうですねー。やっぱり永らく強者なんてやってると、自然となまるもんなのかな?」
テアの言葉に応えるように、同じく蔑むような視線を向けながら聡子が言葉を吐き捨てる。
「ええ、お恥ずかしい限りですわ」
「全くだな」
「ああ」
「本当に……」
二人の言葉に水龍王が答え、それに続くように他の龍王達も同意する。
それは一緒に居るミコト達も同じだ。
それに混乱するのはレリウスだ。
てっきりレリウスは、ハクアの行動に怒りをあらわにしているものだと思っていた。
だがどうやら、ここに居るメンバーが怒っていたのは、少なくともハクアにではなく、会場に居る観客達だったらしい。
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