ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
これは……推せる!
「お待たせー。はい、どうぞ」
ほとんどの物は大皿に盛った為、この人数で一気に運び早速料理を振る舞う。
「「「いただきます!」」」
全員が席に着くと、お馴染み食べる前の掛け声を唱和する。
しかしそれに疑問を浮かべ首を傾げる者が一人。もちろん風龍王ことシーフィードだ。
「それは何かの儀式?」
「あー、うん、いや、なんだろ? 食材やそれを作った奴への感謝的な?」
いや、改めて聞かれると説明しにくいな。
「人間は皆そんなことをするの?」
「うーん。どうだろ? いや、多分しねぇな」
一般家庭は知らんが、酒場ではお疲れ、乾杯、そのまま食うの三ターンがほとんどだった気がするし。
教会とかなら食べる前の祈りの言葉があった気がするが、生憎と駄女神への感謝の祈りなど、一言一句海馬に記憶に残っていないのだ。うん、しょうがない。
「一般的ではないかも。まあ、私の元居た所では一般的だったけど」
「そうなのか? じゃが食べる前のいただきますも、食べ終わった後のごちそうさまもわしは好きじゃぞ。生憎、動植物への感謝とやらはないが、美味い飯を作ってくれるハクアへの感謝はあるからな」
うーん。真っ直ぐな好意が照れますな。いや、マジで。
「そうねぇ。ハクアちゃんが来てから食事の時間が楽しみだのも」
「いやー。おばあちゃんにもそう言って貰えると嬉しいよ……って! いつの間にか普通に参加しとる!? さっきまで居なかったよね!?」
「あらあら。食事中に騒いじゃダメよハクアちゃん」
私!? この状況で叫ぶ私が悪いと!? あっ、でもまた、あらあらうふふと笑ってらっしゃる。うるさいんですね。はい、わかりました。もう騒ぎません。
若干、ほんとーに若干納得のいかないものを抱えながら食事再開。うん、本当にちょっとだよ?
食べ進めながら考えるのは風龍王であるシーフィードの事だ。
当初、パッと見ではシーナと印象は重ならなかった。その理由は今ならハッキリと表情の差だと分かる。
シーナはどちらかと言うと感情表現豊かで、表情がコロコロと変わるのに対して、シーフィードは感情表現に乏しく表情があまり変わらないのだ。
その違いが二人の印象を変えていた。
「ほら、姉さん、これも美味いんっすよ。んで、こっちは私も手伝ったっす」
「うん、両方美味しい。シーナこんなの作れるようになったなんて凄いね」
しかし今目の前にある光景はどうだろう。
シーナが次々に勧めるモノを食べては、その味に表情を緩ませふにゃりとする。
そして褒めてくれと言わんばかりのシーナの頭を、これまた優しげな表情で撫でるさまとったらもう。
えっ、何この姉妹。かっわ、これは……推せる!
えっ? 何言ってるかわからない? 馬鹿野郎! 頭じゃなく心で理解しろ! 考えるな感じるんだ! それでもわからない奴とは友達になれません!!
目の前の光景に癒されながら、これだけで飯を作った甲斐があったと一人満足する。
そうして時間が進み、山ほどあった料理が全て無くなった頃、シーフィードが私に話しかけて来た。
「さて、料理ありがとう美味しかった」
「どういたしまして。シーフィードが気に入ってくれたなら良かった」
「……私の事もシフィーで良い。流石に水龍王様のように公の場でもは困るけど、こういう時ならその方が私も嬉しい」
無表情ながらもちょっと頬を染めながら言う感じやはり推せる。
「そっか。じゃあよろしくシフィー」
そんな考えをおくびにも出さずにそう受け応えすると、いつの間にやら空気は真剣なものへと様変わりしていた。
どうやら本当に飯を食いに来ただけではなく、ここからが本題らしい。
「水龍王様から試しの儀を受けるのはもう聞いていると思うけど、ハクアにはその後、双竜の儀を受けてもらう事が先程決定した」
「「「えっ!?」」」
どうしよう。なんか皆驚いてるけど、知らない単語が出て来て一気に会話の迷子になっているんだが。
「えーと、聞きたいことは多々あるがまず一つ。私その試しの儀とかって話も今聞いたんだけど?」
そう言いながらおばあちゃんを見るとうふふ。と、ものすごくいい笑顔で微笑んでらっしゃる。
うん。忘れてたけど聞くなって事ですね。
「そう。ならまずは試しの儀の説明から」
空気を察したシフィーも特に気にする事なく話しを進める。
試しの儀とはその名の通り、竜体である低竜が受ける試験のようなものらしい。
その内容は、低竜になったばかりの竜が、その年同じく低竜になった他部族の者達と協力してダンジョンをクリアする事なのだとか。
戦えるようになったばかりとはいえ、複数のドラゴンが協力してダンジョン攻略すれば楽勝なのでは?
と、思うかもしれないが、そこは試練。
全員で一丸となって協力するだけではなく、様々なことが評価項目になるらしい。
因みに評価方法は内緒。
正確性は確かと言っていたけどそこは別にどうでも良いのだが……。
「ほうほう。つまりそれを受けるのは元から決定してたんだ?」
「そう」
「へぇー。因みになんで?」
「試しの儀を受ける事でドラゴンコアの覚醒が促されるのじゃ。それに足る者でなければ次の年に受ける事になる」
つまり再試験もあると。
「因みにだけどハクアがこの前攻略したダンジョンは、戦竜へと至る為の試練っすね」
「なんかすっ飛ばして受けさせられてる!?」
「だからムー達もびっくりしたの」
「それびっくりて済ませる事じゃなくない!?」
「龍王は皆、ハクアに試しの儀から順に受けさせるつもりだったのだけど……」
「ハクアちゃんなら出来ると思って、おばあちゃん頑張ってゴリ押ししちゃった」
「Wow……」
文句を言いたいが、可愛らしくやっちゃったポーズをしているおばあちゃんの目は、文句なんて無いわよね? と、私を威圧している。
くっ、私はそんな圧力なんかに!
「何か問題あったかしら?」
「ありません!」
ええ、屈しますとも、だってやられる未来しか見えないしな!!
「双竜の儀はわしが受ける予定だったものじゃ」
「ミコトが?」
「うむ。その名の通り二人一組で受ける試練なのじゃが、普通は龍王達を除く、里の中で優秀な者と組んで執り行う試練なのじゃ」
「いや、それってかなり重要な試練っぽいのでは?」
「そう。ハクアにはそれに参加してもらう」
私の予想を肯定するようにシフィーが続ける。
「だが双竜の儀に竜族ではないハクアを受けさせるとは、元老院の長老達がよく許したな?」
「トリスの言う通り反発はあった」
「でも大丈夫よ。それは龍神様から口添えを戴いて黙らせたから平気よ」
「父上が!?」
「ええ、そもそもこれは元々龍神様がお決めになった事だもの」
うーむ。何か裏があるのか?
「とにかく、ハクアちゃんにはミコト様と共に双竜の儀に参加してもらう事が決定したの」
「まあ、わしとしてはハクアとならば良いのじゃが」
「拒否権はどうせないから了解」
「うふふ。物分りが良くて助かるわ」
いや、これは物分りが良いとかではなく諦めの境地ですよ。
「とりあえずハクアには試しの儀までいつも通り訓練を続けて貰う。まあ、あのダンジョンを既に攻略ししているハクアなら気負う事は何もない」
「うんまあ、そうなんだろうね」
一人で潜らされた所よりも難易度低いならそうだろうね! まあ、向き不向きもあるから油断はしないが。
こうして、いきなり重要なことを聞かされる事となった食事会は、終わりを告げたのだった。
因みにこの後から、暇な時はシフィーもご飯を食べに来るようになったのはご愛嬌。
そして二日後。
「貴様を拘束する」
私は屋台の前で元老院の長老達と相対する事になった。
ほとんどの物は大皿に盛った為、この人数で一気に運び早速料理を振る舞う。
「「「いただきます!」」」
全員が席に着くと、お馴染み食べる前の掛け声を唱和する。
しかしそれに疑問を浮かべ首を傾げる者が一人。もちろん風龍王ことシーフィードだ。
「それは何かの儀式?」
「あー、うん、いや、なんだろ? 食材やそれを作った奴への感謝的な?」
いや、改めて聞かれると説明しにくいな。
「人間は皆そんなことをするの?」
「うーん。どうだろ? いや、多分しねぇな」
一般家庭は知らんが、酒場ではお疲れ、乾杯、そのまま食うの三ターンがほとんどだった気がするし。
教会とかなら食べる前の祈りの言葉があった気がするが、生憎と駄女神への感謝の祈りなど、一言一句海馬に記憶に残っていないのだ。うん、しょうがない。
「一般的ではないかも。まあ、私の元居た所では一般的だったけど」
「そうなのか? じゃが食べる前のいただきますも、食べ終わった後のごちそうさまもわしは好きじゃぞ。生憎、動植物への感謝とやらはないが、美味い飯を作ってくれるハクアへの感謝はあるからな」
うーん。真っ直ぐな好意が照れますな。いや、マジで。
「そうねぇ。ハクアちゃんが来てから食事の時間が楽しみだのも」
「いやー。おばあちゃんにもそう言って貰えると嬉しいよ……って! いつの間にか普通に参加しとる!? さっきまで居なかったよね!?」
「あらあら。食事中に騒いじゃダメよハクアちゃん」
私!? この状況で叫ぶ私が悪いと!? あっ、でもまた、あらあらうふふと笑ってらっしゃる。うるさいんですね。はい、わかりました。もう騒ぎません。
若干、ほんとーに若干納得のいかないものを抱えながら食事再開。うん、本当にちょっとだよ?
食べ進めながら考えるのは風龍王であるシーフィードの事だ。
当初、パッと見ではシーナと印象は重ならなかった。その理由は今ならハッキリと表情の差だと分かる。
シーナはどちらかと言うと感情表現豊かで、表情がコロコロと変わるのに対して、シーフィードは感情表現に乏しく表情があまり変わらないのだ。
その違いが二人の印象を変えていた。
「ほら、姉さん、これも美味いんっすよ。んで、こっちは私も手伝ったっす」
「うん、両方美味しい。シーナこんなの作れるようになったなんて凄いね」
しかし今目の前にある光景はどうだろう。
シーナが次々に勧めるモノを食べては、その味に表情を緩ませふにゃりとする。
そして褒めてくれと言わんばかりのシーナの頭を、これまた優しげな表情で撫でるさまとったらもう。
えっ、何この姉妹。かっわ、これは……推せる!
えっ? 何言ってるかわからない? 馬鹿野郎! 頭じゃなく心で理解しろ! 考えるな感じるんだ! それでもわからない奴とは友達になれません!!
目の前の光景に癒されながら、これだけで飯を作った甲斐があったと一人満足する。
そうして時間が進み、山ほどあった料理が全て無くなった頃、シーフィードが私に話しかけて来た。
「さて、料理ありがとう美味しかった」
「どういたしまして。シーフィードが気に入ってくれたなら良かった」
「……私の事もシフィーで良い。流石に水龍王様のように公の場でもは困るけど、こういう時ならその方が私も嬉しい」
無表情ながらもちょっと頬を染めながら言う感じやはり推せる。
「そっか。じゃあよろしくシフィー」
そんな考えをおくびにも出さずにそう受け応えすると、いつの間にやら空気は真剣なものへと様変わりしていた。
どうやら本当に飯を食いに来ただけではなく、ここからが本題らしい。
「水龍王様から試しの儀を受けるのはもう聞いていると思うけど、ハクアにはその後、双竜の儀を受けてもらう事が先程決定した」
「「「えっ!?」」」
どうしよう。なんか皆驚いてるけど、知らない単語が出て来て一気に会話の迷子になっているんだが。
「えーと、聞きたいことは多々あるがまず一つ。私その試しの儀とかって話も今聞いたんだけど?」
そう言いながらおばあちゃんを見るとうふふ。と、ものすごくいい笑顔で微笑んでらっしゃる。
うん。忘れてたけど聞くなって事ですね。
「そう。ならまずは試しの儀の説明から」
空気を察したシフィーも特に気にする事なく話しを進める。
試しの儀とはその名の通り、竜体である低竜が受ける試験のようなものらしい。
その内容は、低竜になったばかりの竜が、その年同じく低竜になった他部族の者達と協力してダンジョンをクリアする事なのだとか。
戦えるようになったばかりとはいえ、複数のドラゴンが協力してダンジョン攻略すれば楽勝なのでは?
と、思うかもしれないが、そこは試練。
全員で一丸となって協力するだけではなく、様々なことが評価項目になるらしい。
因みに評価方法は内緒。
正確性は確かと言っていたけどそこは別にどうでも良いのだが……。
「ほうほう。つまりそれを受けるのは元から決定してたんだ?」
「そう」
「へぇー。因みになんで?」
「試しの儀を受ける事でドラゴンコアの覚醒が促されるのじゃ。それに足る者でなければ次の年に受ける事になる」
つまり再試験もあると。
「因みにだけどハクアがこの前攻略したダンジョンは、戦竜へと至る為の試練っすね」
「なんかすっ飛ばして受けさせられてる!?」
「だからムー達もびっくりしたの」
「それびっくりて済ませる事じゃなくない!?」
「龍王は皆、ハクアに試しの儀から順に受けさせるつもりだったのだけど……」
「ハクアちゃんなら出来ると思って、おばあちゃん頑張ってゴリ押ししちゃった」
「Wow……」
文句を言いたいが、可愛らしくやっちゃったポーズをしているおばあちゃんの目は、文句なんて無いわよね? と、私を威圧している。
くっ、私はそんな圧力なんかに!
「何か問題あったかしら?」
「ありません!」
ええ、屈しますとも、だってやられる未来しか見えないしな!!
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「うむ。その名の通り二人一組で受ける試練なのじゃが、普通は龍王達を除く、里の中で優秀な者と組んで執り行う試練なのじゃ」
「いや、それってかなり重要な試練っぽいのでは?」
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私の予想を肯定するようにシフィーが続ける。
「だが双竜の儀に竜族ではないハクアを受けさせるとは、元老院の長老達がよく許したな?」
「トリスの言う通り反発はあった」
「でも大丈夫よ。それは龍神様から口添えを戴いて黙らせたから平気よ」
「父上が!?」
「ええ、そもそもこれは元々龍神様がお決めになった事だもの」
うーむ。何か裏があるのか?
「とにかく、ハクアちゃんにはミコト様と共に双竜の儀に参加してもらう事が決定したの」
「まあ、わしとしてはハクアとならば良いのじゃが」
「拒否権はどうせないから了解」
「うふふ。物分りが良くて助かるわ」
いや、これは物分りが良いとかではなく諦めの境地ですよ。
「とりあえずハクアには試しの儀までいつも通り訓練を続けて貰う。まあ、あのダンジョンを既に攻略ししているハクアなら気負う事は何もない」
「うんまあ、そうなんだろうね」
一人で潜らされた所よりも難易度低いならそうだろうね! まあ、向き不向きもあるから油断はしないが。
こうして、いきなり重要なことを聞かされる事となった食事会は、終わりを告げたのだった。
因みにこの後から、暇な時はシフィーもご飯を食べに来るようになったのはご愛嬌。
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