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ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

私何かやっちゃいました?

 大会から数日、二位という好成績を残したレリウスは、午前中のみの制限付きとはいえ、おばあちゃんの特訓を受ける権利を獲得し、一緒に訓練するようになった。

 これは特別措置らしく、おばあちゃんが玉石混交試合の勝者に修行を付けるということはない。
 それでも何故おばあちゃんがレリウスの面倒をみるかと言えば、曰く、火龍の功法よりも水龍の功法の方が向いているからだそうだ。

 ちなみに一位と三位は火龍王が時間を取り自ら教え、それ以下の勝者も部族内のかなり高位の力を持つ者が修行を付けるらしい。

 その際に火龍王は待ちに待った息子への指導をおばあちゃんに取られ、しかも私の返答でレリウスは優勝するものと勝手に思っていたらしく、恨みがましい目で見れた。

 いやいや、漫画やアニメじゃないんだから、高々一週間の修行で最下位から二位まで行けただけでも奇跡的なんだよ?
 そもそもそれだってレリウスの下地があったかは出来ただけで、他の奴ならこの結果もなかったはずだ。

 まあそれだけじゃなく、おばあちゃんがレリウスに朝だけとはいえ修行を付ける事になって、予定よりも多く修行を付ける時間を長くしなければいけなかったのも理由だろう。

 何故おばあちゃんが訓練を付けると修行の時間が長くなるかと言えば、一言で言うとおばあちゃんの修行は特別だからだ。

 通常おばあちゃんは次期龍王候補、またはそれに近い気に入った者しか直接的な指導はしないらしい。

 だからこその私に修行を付けると言った時の、最初の皆の驚きようであり、私が里内でよく思われていない原因だったりする。

 そんなおばあちゃんの指導だからこそ、午前中だけの指導だけでも私の想像以上に価値があるのだとか。

 だが何故おばあちゃんの指導はそこまで価値を見出されているのか?

 それは何もおばあちゃんが指導に向いているからというだけではない。

 その一番の理由は水龍の武功だ。

 龍族はそれぞれの部族、属性毎に得意な事、目指す形がある。

 火龍は一撃の破壊力と力。

 地龍は圧倒的な防御力と持久力。

 風龍は素早さと飛空能力。

 そして水龍は魔法と技術力に秀でている。

 他のものと魔法は先天的な才能に左右されるが、技術力は理論を踏まえ、踏襲すれば本来誰でも扱えるものだ。
 だからこそおばあちゃんのみならず、水龍による指導は強さの根幹部分を支える能力として、その指導に価値が見出されているのだ。

 まあ、当然ながらおばあちゃんはその最高峰。

 だからレリウスが二位でありながらおばあちゃんの指導を受ける事になると、他の順位から不満が出ないように、その指導時間も相応に長くしなければいけないという訳だ。

 うん。やっぱ私のせいじゃねぇわ。

 さて、そんな風に朝だけレリウスが参加するようになった以外、特に変わり映えしない毎日を送っていた私は現在何をしているかと言うと……。

「チキンベアーの串焼き、四人前です」

「ハクアー。焼きそば三人前追加っす」

「こっちはオークステーキなの」

「はいよ、りょーかい。ポテト出来たからこれよろしく。ミコトこっち頼む。トリスはユエとじゃがいもの皮剥き」

「わかったのじゃ」

「何故……何故……妾がこんな事を……」

 はい。わたくし現在ドラゴン相手に屋台を切り盛りしております。

 うん。なんでこうなったかと言うと、深い事情があったりなかったり?

 事は数日前、大会が終わりお疲れ様会と称して、里の広場でバーベキューをする事になった。

 天気も良いし、どうせならパーティーっぽく外で食べようという話になったからだ。

 そんなこんなで広場に移動してバーベキューをしていると、こちらに向かって放たれる視線が一つ、二つどころではない数。
 しかも何故かギラつくような視線が向けられている事に気が付いた。

「なぜに?」

「そりゃこんな所でこんないい匂いさせてたらああなるっすよ」

「そうなの。タレに付けられたお肉の焼ける匂いは凶悪なの。もう焼けた?」

「まだ。なるほどそれでか」

「わしもハクアの飯を食べるようになってからというもの、用意される飯が物足らないのじゃ。これは大丈夫か?」

「そっちはOK。んー、でもなんで見てるだけなんだ?」

「それはそうだろう。ここに居るのはミコト様を含めそれなりの地位だからな。それにお前に近付きたくないと言うのもあるだろう」

「酷くね!?」

 確かに私は遠巻きに見られてる事がよくあるけど、近付きたくないとか言われるのは酷いと思うの。

「何より、作っているのがお前だからな。お前から施しを受けるなんてプライドが許さないんだろう」

「いや、飯の匂いに釣られてガン見してる段階でプライドも何もないと思うけど?」

「それでもだ」

 そんなもんかね?

 見られていようが来ないのならばわざわざ私が何かをする必要はない。そう割り切ってバーベキューを続けていると、不意に小竜が近付いて来た。

 大きさは柴犬の成犬くらいの大きさの地竜だ。

 そんな小竜が近いて来て肉をガン見している。

 どうするべきか視線を皆に向けると苦笑いだ。

(やっていいの?)

(いや待て、幼いとはいえ竜だ。お前からの施しは受けないぞ)

(めんどくせぇなドラゴン様。じゃあどうしろと?)

(せめて何か代わりがあればいいのじゃが)

 ふーむ。代わりねぇ?

 そう思って少し考え良い案を思い付いたので言ってみる。

「おーい。欲しいなら素材くれ」

「素材?」

 私の言葉に反応した小竜が首を傾げながら聞き返す。

「そう素材。鱗や爪なんかで良いよ。つっても生えてるもん取れって言ってじゃなくて、欠け落ちた爪や生え変わった鱗で良いよ」

「じゃあこれでも良い?」

 それを聞いた小竜はヒビ割れてボロボロの鱗を一枚差し出して来た。
 お世辞にも良い物とは言えないそれを受け取った私は、ちょうど焼き終わったチキンベアーの串焼きを渡してやる。

 それを受け取るや否や、小竜は思い切り一口でかぶりつき美味そうにモグモグしている。

 うーむ。このペット感よ。

 そんな風に和んでいると、それを見た他の奴も我先にと爪や鱗、牙などを差し出し料理をせがんできた。

「しゃーない」

 もう終わりに近付いていたバーベキューだったので、その場の勢いで食材を使い、一時間ほど労働奉仕に勤しみその場に集まったドラゴン達を満足させた。

 そうしてお疲れ様会のバーベキューが終わったのだが……。

「えっ、昼だけで良いからしばらく屋台をやって欲しい?」

「ええ、そうなのよ」

 その日の夜、おばあちゃんから話があると言われて聞いた内容はそんなものだった。

 なんでも私の料理を食べた奴らが、おばあちゃんにこれからも営業時間するようわざわざ陳情に来たのだそうだ。
 その数と熱意たるやおばあちゃんおも怯ませる程だったらしい。

 こうして、龍の里に思わず食テロを起こしてしまった私は、昼限定で屋台をする事に決まったのだった。

 はっ、これが私何かやっちゃいました? か! って、これは私の求めてたのとなんか違うよ!?

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