ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
私は弱い……でもだからこそ相手を喰らい尽くせ
銀線が煌めく。
規格外の力で振るわれる暴風の様な攻撃は、常人ならば既に幾つもの傷を負っていても不思議では無い。
上下左右、縦横無尽に振るわれるハルバートは、ハクアの速さを超える速度で今も振るわれ続けている。
(すげぇ)
それがラインの心に浮かぶただ一つの気持ちだった。
避けられる攻撃は避け、受け流せる攻撃は受け流す。
言葉にすれば酷く単純で簡単なものだ。
しかしそれを完ぺきに実行しろと言われれば十人が十人無理だと答えるだろう。
だが現実にハクアはそれを完璧にこなしていた。
横凪の攻撃を屈んで掻い潜り、上段からの切り落としを僅かなステップで速度を落とさず進む。
最初期でさえその程度で回避されていた行動は、攻撃を重ねる毎にその精度を増していく。
飛び退っていた回避は数歩の移動に、数歩の移動は一歩の距離へと、一歩の距離は身体を僅かにズラすだけへと、そして今となってはミリ単位の見切りへとその動きは昇華されていた。
戦闘を有利にするステータスはラインの方が明らかに高い。
素の速度では当初の予想通りハクアの方が上だが、スキル込みで考えればハクアと同等かそれ以上、その他のステータスに関しては明らかにラインに軍配が上がる。
だが、ハクアは経験値から来る技術という一点のみで、その猛攻を全て凌ぎきる。
その神業とも言える圧倒的な技術に、戦いの最中とは言えラインは敵とも言えるハクアに感動を覚えた。
それはライン自身、この強さを手に入れるまで相当の死線を超えた自負があったからだ。
ハクアの一挙手一投足、その全てに狂おしい程の狂気と研鑽、そして大樹の様に身体に根付く数多の致死の攻撃を受けて来た経験。
それら全てを戦い通してラインは感じ取っていた。
魔装の中には装備品その物だけに留まらず効果を及ぼす品もある。
ラインの持つ武器にはそんな効果は無いが、それを知らないハクアは、あるかも知れない効果も視野に入れ、ラインの放つ攻撃の衝撃で自身に襲い掛かる土塊や石礫までも全て処理していた。
攻撃を逸らす際にも決して生身では触れず、武器や【結界】を使って必ず処理する念の入れように、ラインは感動すら覚える程の技術だった。
ラインの持つ魔装のハルバートはその見た目に反して使用者には羽の様に軽く、受ける者には超重量を感じさせる。
それ故にラインの攻撃はハルバートと言う大型武器にも関わず、大型武器の威力を有しながら双剣並の手数を実現するデタラメな攻撃を可能にしていた。
数ミリ、もしもハクアがそれよりも多くの回避行動が必要なら、この全ての攻撃を避け逸らす事は出来なかっただろう。
だが同時にハクアはラインに牙を届かせるが出来無い。それが分かっているからこそ、ラインは防御を考える事も無く攻撃に全てを傾けている。それは確固たる自信から来る行動だった。
(もっとだ……もっと……)
確かにハクアはラインに攻撃する暇など欠片も無い。相手は格上、避ける事すら精一杯で一度でも攻撃が当たれば詰む様な状況だ。
だからこそラインの、この無茶苦茶にも思える一切の防御を考え無い攻勢は、無謀にも見えるがその実理にかなった行動であり、ハクアもそう自覚していた。
ハクアとて魔法をまだ使っておらず、一見余裕を残した戦闘に見えるが、正確には魔法を使う暇すら無いと言うのが正しい。
そして、今までの相手はハクアの力を見くびっていたか、見る事に主眼を置いていた。
しかし、ラインは一切の遊び等無く、ハクアの命を全力で刈り取りに来ている。それが今までの戦闘との大きな違いだった。
全力を出して尚、格上の相手。
一度のミスで死んでしまうプレッシャー。
だが、ハクアにとってそんなものはどうでもいい事だった。かつての世界でもハクアにとってそれは常に日常のもの、運動すればすぐに息が切れてしまうほどの体力しか無かった地球。
そしてこのまま世界でも、ミニゴブリンと言う最弱の個体として生まれ、様々な強敵と戦い生き抜いてきた。
普通なら動きを制限してしまう様なプレッシャーの中、無理な挙動で体が悲鳴を上げ呼吸が乱れても尚、ハクアは嗤う。
その姿はまるで噛み合っていなかった歯車が漸く噛み合って来た様な、体に繋がれていた重りを一つづつ外して自由になっていく様な、そんな言い知れないプレッシャーをラインに与えていた。
だがそれと同時にまったく逆の印象。
全体にヒビが入ったガラス細工の様な、コップになみなみと注がれた液体、その触れれば零れ落ちて仕舞いそうな印象もラインは同時に感じていた。
(そうだ。私は弱い……でもだからこそ相手を喰らい尽くせ)
攻撃を避ける為に今までよりも深く身を屈ませる。ラインからすればそれ絶好の好機とも言える様な行動。
しかし、ラインの行動は距離を開けるという選択肢だった。
その瞬間、ハクアから魔力の奔流が溢れ出す。
今までコップの淵から溢れ出さない様、ギリギリのバランスで扱われていた力。
その明らかに制御能力を超えているチカラのすべてをハクアは解き放つ。
辺り一帯を魔力の奔流が暴れ回り、普通なら見えない筈の魔力が可視化される程の力が地面を抉る。
だがその直後、魔力の奔流はまるで凪だ海の様に静まり、一瞬前までが嘘の様に静寂に包まれる。
「全てを殺せ! 鬼殺害!」
最初とは違い先に動いたのはラインだ。
魔装にキーワードを唱えると、ハルバートは二対のダブルアクスへと姿を変える。 
ハクアには鬼の特性が無かったとしても、一撃当てれば勝てる。ここまでの戦闘でそう確信したラインは、リーチを犠牲にする代わりに手数を更に上げる選択を選ぶ。
「オオォオォ!」
裂帛の気合いに殺意を乗せてハクアへ迫るライン、ハクアもそれを待ち構える様に腰を落とし、どんな攻撃にも対処出来る体勢を取る。
しかしそれを見たラインはニヤリと笑い、慣性を無視する様に急停止すると、二本の斧を持つ両手を広げ声を張り上げた。
「鬼力解放! 布都御魂剣!」
声に反応した鬼殺害が光を放つ。
するとその光は斧から飛び出し離れると、一瞬でハクアの元へ辿り着き、光が幾重にも分裂してハクアを包む様に全方位で取り囲む。
これこそがラインの奥の手。
ダブルアクスの状態でのみ使えるこの奥の手は、ハルバート状態で倒した鬼種の鬼術を奪う事が出来る。
ラインは最大三つまでストックする事が出来る、その鬼術の内の一つをハクアへと使ったのだ。
ハクアをドーム状に包む光の玉は、いつの間にか光の剣へとその姿を変え、その全てが切っ先をハクアへ向け標準を定めている。
「行け!」
慢心は無い。油断とて微塵も感じさせ無いラインは、一切の手加減も躊躇も無く攻撃を開始した。
規格外の力で振るわれる暴風の様な攻撃は、常人ならば既に幾つもの傷を負っていても不思議では無い。
上下左右、縦横無尽に振るわれるハルバートは、ハクアの速さを超える速度で今も振るわれ続けている。
(すげぇ)
それがラインの心に浮かぶただ一つの気持ちだった。
避けられる攻撃は避け、受け流せる攻撃は受け流す。
言葉にすれば酷く単純で簡単なものだ。
しかしそれを完ぺきに実行しろと言われれば十人が十人無理だと答えるだろう。
だが現実にハクアはそれを完璧にこなしていた。
横凪の攻撃を屈んで掻い潜り、上段からの切り落としを僅かなステップで速度を落とさず進む。
最初期でさえその程度で回避されていた行動は、攻撃を重ねる毎にその精度を増していく。
飛び退っていた回避は数歩の移動に、数歩の移動は一歩の距離へと、一歩の距離は身体を僅かにズラすだけへと、そして今となってはミリ単位の見切りへとその動きは昇華されていた。
戦闘を有利にするステータスはラインの方が明らかに高い。
素の速度では当初の予想通りハクアの方が上だが、スキル込みで考えればハクアと同等かそれ以上、その他のステータスに関しては明らかにラインに軍配が上がる。
だが、ハクアは経験値から来る技術という一点のみで、その猛攻を全て凌ぎきる。
その神業とも言える圧倒的な技術に、戦いの最中とは言えラインは敵とも言えるハクアに感動を覚えた。
それはライン自身、この強さを手に入れるまで相当の死線を超えた自負があったからだ。
ハクアの一挙手一投足、その全てに狂おしい程の狂気と研鑽、そして大樹の様に身体に根付く数多の致死の攻撃を受けて来た経験。
それら全てを戦い通してラインは感じ取っていた。
魔装の中には装備品その物だけに留まらず効果を及ぼす品もある。
ラインの持つ武器にはそんな効果は無いが、それを知らないハクアは、あるかも知れない効果も視野に入れ、ラインの放つ攻撃の衝撃で自身に襲い掛かる土塊や石礫までも全て処理していた。
攻撃を逸らす際にも決して生身では触れず、武器や【結界】を使って必ず処理する念の入れように、ラインは感動すら覚える程の技術だった。
ラインの持つ魔装のハルバートはその見た目に反して使用者には羽の様に軽く、受ける者には超重量を感じさせる。
それ故にラインの攻撃はハルバートと言う大型武器にも関わず、大型武器の威力を有しながら双剣並の手数を実現するデタラメな攻撃を可能にしていた。
数ミリ、もしもハクアがそれよりも多くの回避行動が必要なら、この全ての攻撃を避け逸らす事は出来なかっただろう。
だが同時にハクアはラインに牙を届かせるが出来無い。それが分かっているからこそ、ラインは防御を考える事も無く攻撃に全てを傾けている。それは確固たる自信から来る行動だった。
(もっとだ……もっと……)
確かにハクアはラインに攻撃する暇など欠片も無い。相手は格上、避ける事すら精一杯で一度でも攻撃が当たれば詰む様な状況だ。
だからこそラインの、この無茶苦茶にも思える一切の防御を考え無い攻勢は、無謀にも見えるがその実理にかなった行動であり、ハクアもそう自覚していた。
ハクアとて魔法をまだ使っておらず、一見余裕を残した戦闘に見えるが、正確には魔法を使う暇すら無いと言うのが正しい。
そして、今までの相手はハクアの力を見くびっていたか、見る事に主眼を置いていた。
しかし、ラインは一切の遊び等無く、ハクアの命を全力で刈り取りに来ている。それが今までの戦闘との大きな違いだった。
全力を出して尚、格上の相手。
一度のミスで死んでしまうプレッシャー。
だが、ハクアにとってそんなものはどうでもいい事だった。かつての世界でもハクアにとってそれは常に日常のもの、運動すればすぐに息が切れてしまうほどの体力しか無かった地球。
そしてこのまま世界でも、ミニゴブリンと言う最弱の個体として生まれ、様々な強敵と戦い生き抜いてきた。
普通なら動きを制限してしまう様なプレッシャーの中、無理な挙動で体が悲鳴を上げ呼吸が乱れても尚、ハクアは嗤う。
その姿はまるで噛み合っていなかった歯車が漸く噛み合って来た様な、体に繋がれていた重りを一つづつ外して自由になっていく様な、そんな言い知れないプレッシャーをラインに与えていた。
だがそれと同時にまったく逆の印象。
全体にヒビが入ったガラス細工の様な、コップになみなみと注がれた液体、その触れれば零れ落ちて仕舞いそうな印象もラインは同時に感じていた。
(そうだ。私は弱い……でもだからこそ相手を喰らい尽くせ)
攻撃を避ける為に今までよりも深く身を屈ませる。ラインからすればそれ絶好の好機とも言える様な行動。
しかし、ラインの行動は距離を開けるという選択肢だった。
その瞬間、ハクアから魔力の奔流が溢れ出す。
今までコップの淵から溢れ出さない様、ギリギリのバランスで扱われていた力。
その明らかに制御能力を超えているチカラのすべてをハクアは解き放つ。
辺り一帯を魔力の奔流が暴れ回り、普通なら見えない筈の魔力が可視化される程の力が地面を抉る。
だがその直後、魔力の奔流はまるで凪だ海の様に静まり、一瞬前までが嘘の様に静寂に包まれる。
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裂帛の気合いに殺意を乗せてハクアへ迫るライン、ハクアもそれを待ち構える様に腰を落とし、どんな攻撃にも対処出来る体勢を取る。
しかしそれを見たラインはニヤリと笑い、慣性を無視する様に急停止すると、二本の斧を持つ両手を広げ声を張り上げた。
「鬼力解放! 布都御魂剣!」
声に反応した鬼殺害が光を放つ。
するとその光は斧から飛び出し離れると、一瞬でハクアの元へ辿り着き、光が幾重にも分裂してハクアを包む様に全方位で取り囲む。
これこそがラインの奥の手。
ダブルアクスの状態でのみ使えるこの奥の手は、ハルバート状態で倒した鬼種の鬼術を奪う事が出来る。
ラインは最大三つまでストックする事が出来る、その鬼術の内の一つをハクアへと使ったのだ。
ハクアをドーム状に包む光の玉は、いつの間にか光の剣へとその姿を変え、その全てが切っ先をハクアへ向け標準を定めている。
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