ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~
ふっ、遂にここまで来たな土魔法!
「きゃーーー!?」
ここ数日は実に穏やかに、良い空気吸って過ごしているハクアさんです。
襲われる事も、危ない事も、怪我する事さえ無い平和な日々。
「嘘でしょっ!?」
やりたい事をやって、魔法の研究、武器の研究、錬金術の研究、ヌルの生態調査、ちょっとした勉強等の日々は実に有意義な時間を、私に提供してくれている。
「ちょっ!? まっ!? ひーーー!?」
まあ、実際はアベル達の訓練をしながらだから、言うほど暇では無いがね。
「うぐっ! って、それは無理ーーーー!?」
「おっと、もう終わったか」
先程から私が作った初級編のトラップに尽く引っ掛かり、遂に一番簡単なトラップとして設置した物にも、見事に吹き飛ばされたダリアを冷めた目で見る。
うーん。才能……ってか、やる気がそもそもねぇ。
アベルが言うから私に表面上従ってるけど、本心でなんで自分が。とか、考えてんだろうなぁ。
それに……自分の役割を理解してねぇ。
装備、身のこなしまでマルっとスカウトタイプなのに、その辺の斥候の仕事が一切やる気ねぇからなぁ。
そんな分析をする私の元へとダリアが帰ってくる。
その顔はどう見ても不貞腐れた子供のそれだ。
「なんなのよここは!」
「何って、お前ように作り替えた訓練所だよ」
今、私達が居るのはその名も風雲ハクア城。
前にアイギスが、最近の兵はダンジョンの罠に弱いと愚痴っていた時に善意で(勝手に)作った、トラップ満載の全五階建ての建物だ。
因みに見た目は完璧に日本の城その物です。
まあ、その時の話は今度語るとしよう。語る暇あるかな? まあ、いいや。閑話休題。
「そもそも、入って一歩目に落とし穴とか舐めてんの!?」
「舐めて掛かって舐められただけやん」
「それに何よこの罠の数! 物理トラップから魔法トラップまでこんなの出来る訳無いじゃない!」
「はぁ……出来なきゃお前の仲間が死ぬだけだろ?」
「くっ……、そもそもなんで私がこんな事しなきゃいけないのよ」
「それがお前の役目だからだろ? 何度も何度もそれは説明したが、まだ理解できないのか?」
「うっ……」
「まだ分かっていないようだからもう一度言ってやる。ダンジョンだろうが何処だろうが、斥候がちゃんとしてれば生存確率は飛躍的に上がる。索敵、罠の発見、解除まで。少ない情報からそれらの事を理解する能力は、むしろ必須と言っていい物だ」
「だとしても……」
「それをお前がやる意味も話したよな? アベルが近接戦闘と壁役、ヒストリアが回復と補助、エイラが魔法による遠距離攻撃。それで? お前は何をするんだ」
「……」
「アベル以外は見向きもしないヒーラーも問題だが、斥候のスキルが何も無い斥候役ほど意味の無い物は居ないぞ? 品物の管理から索敵、哨戒までカイルに任せて来たが、それを一番馬鹿にしていたお前が一番のお荷物だ。それが分かったらとっとと続きをやりに行け」
反論は無い。唇を噛みながら俯いて再びトラップに挑む。
それを見ながら私は溜息を吐かずにはいられない。
現在、回避訓練をある程度こなせる様になった面々は、それぞれの長所を伸ばすべく、午前は回避訓練、午後はそれぞれに別れて訓練を行っている。
そんな中、ダリアに課しているのは索敵、罠察知、罠解除の三つを重点的にやらせている。
私としては今はまだ初級編。
痕跡の消し方は雑だし、トラップも解除しやすい様に作っている。これを突破出来ない程度では困るレベルだ。
その後もひたすらトラップに掛かるダリアを見て、その日の訓練は終了した。
▼▼▼▼▼
次の日の訓練はダリア以外の魔力訓練だ。
やる事は簡単。
魔力を魔法に変換せずにひたすら維持する事だ。
魔力をそのまま放出するのは魔物や魔族にしか出来ない。
世間一般ではそれが常識とされているが実はそうでは無い。
確かに魔力を攻撃の域まで高めて使うのは難しいが、威力の無い様なレベルの物ならばその限りでは無い。
そもそも魔力は自然に溶け込む性質がある。
その為、魔力をそのまま放出しても、維持する事が出来なければすぐに霧散してしまうのだ。
その点魔法は、魔力を他の属性に変換する事で霧散しにくくしている。
だからこそ、距離をが長くなればなるほど魔法の威力は落ちてしまうのだ。
そこで今回の訓練方法に戻る訳だが、まず指先に魔力を集め、その先から魔力を放出してピンポン玉ほどの球体にする。
後はひたすらそれを維持してもらう。と、いう大変地味な修行となっている。
だがこれが実は結構きつい。
ピンポン玉ほどの魔力でも常に維持するには、それ以上の魔力で霧散しない様、魔力を放出する必要がある。
因みに属性へと変化させると、維持する為の魔力はずっと少ない。
そして維持するという事は、魔力操作でその場に留め、固定する。そして更にピンポン玉の大きさを保つ事で、魔力の放出も一定に保たなければいけないのだ。
これが、今まで駄女神の作った魔法の恩恵にあずかっていた人間には辛いらしい。
まあ、向こうは必要な魔力を抜き出したら勝手にやってくれる様なもんだからね。
この訓練、最初はアリシアでも苦労したのだから、ここに居る人間にはかなり難しい様だ。一人を除いて。
「やっぱりお前は出来るか」
「まあ、赤子の頃からやっていたからね」
案の定、アベルは転生して生まれた段階から昔の記憶と自我があったらしく、なろう系の主人公よろしく、赤子の頃から密かにこの手の訓練を続けていたのだそうだ。
しかも転生者の特典で全属性持ち。
クソですわー。
「つか。やり方わかってるならさっさと教えてやれよ。そのレベルで魔力が使えりゃ、効率が悪い事くらいはわかっただろうが」
「あーと……正直に言うと、賞賛されるのが嬉しくて……その……」
「はぁ……ハーレムパテの為に俺TUEEEEを維持したかった……と」
「……はい。まじですみませんでした。調子に乗ってました」
「まあ、いいや。予定通りお前は【無詠唱】の習得に励め。それが出来たら戦闘訓練に入る」
「わかった」
「ああ、それと」
「何だ?」
「ダリアとヒストリア以外に手を出そうとしたら去勢するから」
「は、はい……」
その一言で微妙に内股になりながら離れて行くアベルを見送り、私は残った面々の様子を見る。
ヒーラーのヒストリアは、怪我が治るまで常に回復を続けるだけあって、魔力を維持する事は得意な様だ。その代わり、魔力を込める事は苦手らしく球体は二回りほど小さく、欠けている。
逆にエイラは出力自体は大きく、球体は綺麗な丸を保っているが、維持する事は苦手な様で、常にユラユラと揺らめき、動き続けている。
カイルは全体的にまだまだだが、動物と契約する際は、ずっと魔力を維持しているらしいので一番バランスは良さそうだ。
因みにここには土魔法建設の三人も居る。
魔力制御も魔力量のアップも必須な事からついでに鍛える為だ。
そしてこれは今回初めて知った事なのだが……、最近、魔法を使える人間の中で、なりたい職業ナンバーワンが土魔法建設の社員なのだそうだ。
今までは、国お抱えの宮廷魔法使いが、魔法使いの最も安定した職業と言われていたが、ここ最近では週休二日の休みに、高い給料、安全な職場に安定した仕事。
これがどうにも人気らしい。
一緒に訓練させる為、三人を連れて来たら、なんとエイラが握手を求めそんな事を話していたのだ。
その後、びっくりしている私に三人が近況含めて、その事をエイラと共に詳しく教えてくれたのだ。
ふっ、遂にここまで来たな土魔法!
それが分かっただけでも、個人的には今日の収穫としては十分だった。
ここ数日は実に穏やかに、良い空気吸って過ごしているハクアさんです。
襲われる事も、危ない事も、怪我する事さえ無い平和な日々。
「嘘でしょっ!?」
やりたい事をやって、魔法の研究、武器の研究、錬金術の研究、ヌルの生態調査、ちょっとした勉強等の日々は実に有意義な時間を、私に提供してくれている。
「ちょっ!? まっ!? ひーーー!?」
まあ、実際はアベル達の訓練をしながらだから、言うほど暇では無いがね。
「うぐっ! って、それは無理ーーーー!?」
「おっと、もう終わったか」
先程から私が作った初級編のトラップに尽く引っ掛かり、遂に一番簡単なトラップとして設置した物にも、見事に吹き飛ばされたダリアを冷めた目で見る。
うーん。才能……ってか、やる気がそもそもねぇ。
アベルが言うから私に表面上従ってるけど、本心でなんで自分が。とか、考えてんだろうなぁ。
それに……自分の役割を理解してねぇ。
装備、身のこなしまでマルっとスカウトタイプなのに、その辺の斥候の仕事が一切やる気ねぇからなぁ。
そんな分析をする私の元へとダリアが帰ってくる。
その顔はどう見ても不貞腐れた子供のそれだ。
「なんなのよここは!」
「何って、お前ように作り替えた訓練所だよ」
今、私達が居るのはその名も風雲ハクア城。
前にアイギスが、最近の兵はダンジョンの罠に弱いと愚痴っていた時に善意で(勝手に)作った、トラップ満載の全五階建ての建物だ。
因みに見た目は完璧に日本の城その物です。
まあ、その時の話は今度語るとしよう。語る暇あるかな? まあ、いいや。閑話休題。
「そもそも、入って一歩目に落とし穴とか舐めてんの!?」
「舐めて掛かって舐められただけやん」
「それに何よこの罠の数! 物理トラップから魔法トラップまでこんなの出来る訳無いじゃない!」
「はぁ……出来なきゃお前の仲間が死ぬだけだろ?」
「くっ……、そもそもなんで私がこんな事しなきゃいけないのよ」
「それがお前の役目だからだろ? 何度も何度もそれは説明したが、まだ理解できないのか?」
「うっ……」
「まだ分かっていないようだからもう一度言ってやる。ダンジョンだろうが何処だろうが、斥候がちゃんとしてれば生存確率は飛躍的に上がる。索敵、罠の発見、解除まで。少ない情報からそれらの事を理解する能力は、むしろ必須と言っていい物だ」
「だとしても……」
「それをお前がやる意味も話したよな? アベルが近接戦闘と壁役、ヒストリアが回復と補助、エイラが魔法による遠距離攻撃。それで? お前は何をするんだ」
「……」
「アベル以外は見向きもしないヒーラーも問題だが、斥候のスキルが何も無い斥候役ほど意味の無い物は居ないぞ? 品物の管理から索敵、哨戒までカイルに任せて来たが、それを一番馬鹿にしていたお前が一番のお荷物だ。それが分かったらとっとと続きをやりに行け」
反論は無い。唇を噛みながら俯いて再びトラップに挑む。
それを見ながら私は溜息を吐かずにはいられない。
現在、回避訓練をある程度こなせる様になった面々は、それぞれの長所を伸ばすべく、午前は回避訓練、午後はそれぞれに別れて訓練を行っている。
そんな中、ダリアに課しているのは索敵、罠察知、罠解除の三つを重点的にやらせている。
私としては今はまだ初級編。
痕跡の消し方は雑だし、トラップも解除しやすい様に作っている。これを突破出来ない程度では困るレベルだ。
その後もひたすらトラップに掛かるダリアを見て、その日の訓練は終了した。
▼▼▼▼▼
次の日の訓練はダリア以外の魔力訓練だ。
やる事は簡単。
魔力を魔法に変換せずにひたすら維持する事だ。
魔力をそのまま放出するのは魔物や魔族にしか出来ない。
世間一般ではそれが常識とされているが実はそうでは無い。
確かに魔力を攻撃の域まで高めて使うのは難しいが、威力の無い様なレベルの物ならばその限りでは無い。
そもそも魔力は自然に溶け込む性質がある。
その為、魔力をそのまま放出しても、維持する事が出来なければすぐに霧散してしまうのだ。
その点魔法は、魔力を他の属性に変換する事で霧散しにくくしている。
だからこそ、距離をが長くなればなるほど魔法の威力は落ちてしまうのだ。
そこで今回の訓練方法に戻る訳だが、まず指先に魔力を集め、その先から魔力を放出してピンポン玉ほどの球体にする。
後はひたすらそれを維持してもらう。と、いう大変地味な修行となっている。
だがこれが実は結構きつい。
ピンポン玉ほどの魔力でも常に維持するには、それ以上の魔力で霧散しない様、魔力を放出する必要がある。
因みに属性へと変化させると、維持する為の魔力はずっと少ない。
そして維持するという事は、魔力操作でその場に留め、固定する。そして更にピンポン玉の大きさを保つ事で、魔力の放出も一定に保たなければいけないのだ。
これが、今まで駄女神の作った魔法の恩恵にあずかっていた人間には辛いらしい。
まあ、向こうは必要な魔力を抜き出したら勝手にやってくれる様なもんだからね。
この訓練、最初はアリシアでも苦労したのだから、ここに居る人間にはかなり難しい様だ。一人を除いて。
「やっぱりお前は出来るか」
「まあ、赤子の頃からやっていたからね」
案の定、アベルは転生して生まれた段階から昔の記憶と自我があったらしく、なろう系の主人公よろしく、赤子の頃から密かにこの手の訓練を続けていたのだそうだ。
しかも転生者の特典で全属性持ち。
クソですわー。
「つか。やり方わかってるならさっさと教えてやれよ。そのレベルで魔力が使えりゃ、効率が悪い事くらいはわかっただろうが」
「あーと……正直に言うと、賞賛されるのが嬉しくて……その……」
「はぁ……ハーレムパテの為に俺TUEEEEを維持したかった……と」
「……はい。まじですみませんでした。調子に乗ってました」
「まあ、いいや。予定通りお前は【無詠唱】の習得に励め。それが出来たら戦闘訓練に入る」
「わかった」
「ああ、それと」
「何だ?」
「ダリアとヒストリア以外に手を出そうとしたら去勢するから」
「は、はい……」
その一言で微妙に内股になりながら離れて行くアベルを見送り、私は残った面々の様子を見る。
ヒーラーのヒストリアは、怪我が治るまで常に回復を続けるだけあって、魔力を維持する事は得意な様だ。その代わり、魔力を込める事は苦手らしく球体は二回りほど小さく、欠けている。
逆にエイラは出力自体は大きく、球体は綺麗な丸を保っているが、維持する事は苦手な様で、常にユラユラと揺らめき、動き続けている。
カイルは全体的にまだまだだが、動物と契約する際は、ずっと魔力を維持しているらしいので一番バランスは良さそうだ。
因みにここには土魔法建設の三人も居る。
魔力制御も魔力量のアップも必須な事からついでに鍛える為だ。
そしてこれは今回初めて知った事なのだが……、最近、魔法を使える人間の中で、なりたい職業ナンバーワンが土魔法建設の社員なのだそうだ。
今までは、国お抱えの宮廷魔法使いが、魔法使いの最も安定した職業と言われていたが、ここ最近では週休二日の休みに、高い給料、安全な職場に安定した仕事。
これがどうにも人気らしい。
一緒に訓練させる為、三人を連れて来たら、なんとエイラが握手を求めそんな事を話していたのだ。
その後、びっくりしている私に三人が近況含めて、その事をエイラと共に詳しく教えてくれたのだ。
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