ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

命の方が大事ざます

「な、何かねその顔は……」

 エグゼリアの表情から、何かしらの陰謀を感じた私は、思わず逃げ腰になりながら問い掛ける。
 そんな私をエグゼリアは、両肩に手を置き掴むと逃げられない様にする。そして──。

「じゃ、あのパーティーの強化訓練頼んだわねハクア」
「やっぱりかい! それについてはもう話したよね!?」

 そう、皆にはクエスト帰りにアベル達から、自分達もカイル君やエイラの様に鍛えて欲しい。と、打診され断った事は既に話している。

 それなのに改めて放り投げられましたよ!?
 第一、なんで自分から振った訳でも無いのに、育てなきゃいけないんさ! そこまで抱え込みたくないんよ!?

「ヤッ」
「ヤッて、子供じゃないんだから……。ね? やってくれるわよね?」
「イーヤッ」
「まあ、とりあえず聞くが、どうしてコイツなんだエグゼリア?」
「真面目な話し、今、ウチのギルドに居る指導員では役不足なのよね。どこかの誰かとクエストしたら、邪神討伐に関わってレベル上がったせいで……」
「知らない。私は何も知らない」

 聞きたく無いので、耳を両手で抑えて頭をフリフリする。

「高ランクの人も居るけれど、その人達は指導員をするほど暇がある訳でも無いし。所属している高ランク冒険者に頼む訳にもいかないしね」
「なるほどな。スジは通ってる」
「異議あり! 私の意思が無い!」
「「それは関係ない」」
「なん……だと……」
「ギルドも一つのパーティーに、いつまでも構っていられないのよね。……最近、実力はあったけど、素行の悪かった高ランク冒険者の怪我とか、色々とあってね……」

 ジトッとした目でこちらを見られても困る。私はなにもして無いし、何も悪くない。彼等がたまたま新たな性に目覚めただけの話しだろう。
 顔を背けてるのも、なんか冷や汗が大量に出るのもたまたまだ!

『無理ないですか?』

 黙れ、駄女神。

 エグゼリアの頼みを頑として拒み続けていると、今まで黙っていたアベルが、私の前までやって来て土下座をすると、

「お願いだハクアさん! 俺もカイルの様に鍛えて欲しい」
「そんな事言ったってやらないんだからな! そもそも、そんな事して私になんのメリットがあんのさ! こっちだっていつ……いつ……うん。ふむふむ……。わかった引き受けよう。英雄になりたいとか言ってたよな? 良いだろう相応しくなれる様に育ててやる」

 アベルの熱意に考えを改めた私は、しょうがなく提案を受け入れる事にする。
 そんな私の肩を掴むと、何故か澪が詰め寄ってきた。

「ちょっと待て」
「なんでい!」
「何を思い付いた?」
「何を言っているか分からない」
「正直に話せ。今ならまだ修正出来る」
「……お前、人をなんだと思ってんだよ」
「……そうか。話す気がないか。なら……」

 一言そう言うと、澪は何故か私の考えた【防音結界】を、周りに張る。
 どうやらアベル達だけには聞こえない様にしたようだ。

「これなら言えるだろう。さあ、吐け」
「言い方よ……。まあ、良いか。アベル達の熱意とエグゼリアのお願いを聞き届けようと言う、私の懐の深さの成せるものですよ」
「あ、ハーちゃん。そんな建前はもう良いので本音お願いします」
「ちょっとは信じてくれません!?」
「良いから早く言え」
「ハクアの扱いが雑だなぁ」
「ある意味正しい気もしますけどね」

 ヘルさんも酷くない!?

「……これから魔族関連の問題も何気に増えそうだし、ここらでいっちょ、対魔族用の肉壁でも育成しようかな? と……」

『貴女……わりと最低な事を言ってる自覚あります?』

「だな」
「ですね」
「……あの、ご主人様? それは流石に言い方が……」
「流石主様。元魔王ですら考えない様な悪辣さ」
「ふふっ、これが我が主、ハクア様の本領です」
「その言い方はどうかと思うよ。エルザ」
「まあ、白亜さんらしいですけどね」
「確かにそうだな」
「「まあ、いい考えだから採用だけど(ですけど)」」
「「「採用なんだ!?」」」
「……結局、ミオとルリもあんまりハクアと変わんないかな」
「おい、失礼だぞコロ。人をこんなクズと一緒にするな」
「みーちゃんとハーちゃんは似た者同士ですからね」
「「お前も同類だよ!」」
「いや、三人とも同じだよ」

 エレオノの言葉に全員が頷く。解せぬ。

「まあ、言い方はあれだけど確かに悪くないわね。高位の冒険者が増えるのは素直に国としても嬉しいわ」
「そうですねアイギス王女。ギルドとしても考えは同じです。それじゃあハクア。頼んでも大丈夫かしら?」
「うむ。任せろ。とりあえず私の功績を全部放り投げられる様に強くする。そして私は魔族の目から逃れる!」
「……ご主人様」
「おねちゃん流石ゴブ」

 皆の視線が痛いけど気にしない。命の方が大事ざます。

 話がまとまると澪に【防音結界】を解いてもらい、アベル達に同じく鍛える事を改めて伝える。
 この後エグゼリアとアイギス達は、今回の事を更に細かく相談し、何をすぐに伝え、何を遅らせるかを決めるそうだ。

「きついからって逃げるなよ? まあ、そもそもやるなら逃がさないけど」
「が、頑張るよ」

 こうして、私による私の為の英雄肉壁育成計画が始まったのだった!

『あっ、それで決定なんですね』

 うるさいよ!

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