ゴブリンから頑張る神の箱庭~最弱からの成り上がり~

リーズン

「えっと、美味しい?」

「ピチュッ、ピチュッ、チュッ、はぁ、ペロッ、アム、フッ、ピチュチュピ、ん、はぁ」


 熱に浮かされた頬を染め、妖しく光る紅い目で見上げる様に時々視線をやり、長い銀髪を乱しながら、蛇の舌の様にチロチロと腕に舌を這わせ一心不乱に舐め続ける。肌に這わす舌から水音を奏でる様は、とても普段の姿から想像できず、それが一層妖しさに拍車を掛け美しかった。






 はいどうも、士道 白亜です。今自分の目の前で繰り広げられている事を、年齢制限がある小説風に語ってみました!正直訳が分からず混乱中です!誰か教えてこの状況!


 そんな事を心の中で叫んだ所で誰からの答えも在るわけもなく、私の混乱は更に加速して行く。


 落ち着け!落ち着くんだ私!こういう時はアレだ!不可思議な事が起こる前の事を箇条書きしていけば、客観的な視点になって物事が解明できるって黒ちゃんも言ってたしね!流石私の尊敬するお姉ちゃん!異世界だろうが何だろうが的確な助言だぜ!


 私は混乱の余り若干キャラの方向性を間違えながらも【思考加速】を使いながら必死に出来事を並べて行く。


 1.グロスを倒して二人にレベルアップの特性で非難される。


 2.アリシアとエレオノ合流。いきなり疑われる。


 3.話の最中に他の皆も合流。


 4.アクアや皆を治すためにオールフルヒール使う。


 5.血の跡をエレオノが拭いてくれると言うのでお願いする。


 6.手を取ったままエレオノがフリーズ。様子を見てたらハムッ、とされてペロペロされる。




 ・・・・アレ?おかしい?訳が分からない?いやいや、そんな筈無いよね?そうだ!そんな筈無い!もう一回ちゃんと思い出せば・・・何・・だと?これだけ整理したのに訳が分からない!?そんなバカな!


『シルフィン:大分混乱してますね』


 いや、するだろ!どう考えたって!こんないきなりの急展開!


『シルフィン:まあ、確かにそうですね。余りの事態に私もメモ帳に描写する手が止まりません。あっ、そこでちょっと顎クイして砂糖菓子みたいなクソ甘い言葉言ってみません?』


 何をしてるのかな?!そして、描写の手を今すぐ止めろ!


『シルフィン:タイトルはどうします?いけない主従関係とか、吸血騎士の誘惑とかどうでしょう?』


 既にタイトルの心配してやがる!?


『シルフィン:大丈夫任せて下さい。神の力を使ってでも出版にこじつけますから!』


 そんな心配してないよ!そんで神の力をそんな事で使うなよ!


『シルフィン:まあまあ。それよりどうするんですこの状況?』


 どうするって言われてもねぇ?


 私は加速された思考の中、今もスローモーションで私の腕や手に舌を這わせるエレオノを見る。


 ヒャッ!うぉぉぉ!ヤバい!口の中温かい!しかも、エレオノの舌に指舐められる度にゾクゾクする!アレ?これダメじゃね?ダメじゃね?ああ、でもそんな上目遣いで舐めてるのは何かかわいい!何だろこれ?新しい扉?新しい扉に手を掛けちゃってるのか私!このまま流されて良いのか?!ヒャン!アアァア!何か舐められて舌を感じる度に思考が溶けそうだよ!!


 私は蕩けそうになる思考を総動員して何とかエレオノを正気に戻す為の言葉を探す。


 何て、何て言えば良い?考えろ!考えるんだ私!そうだよ!この世界で一番最初に話したアリシアの時は失敗したけど、あれから私だって成長したんだ!前よりも人見知りしなくなったし、喋るの怖くて誰かの後ろにも隠れなくなった!今こそ、今こそあの時の失敗を糧にするんだ!唸れ!私の言語能力!


「えっと、美味しい?」


 って!違ぁーう!言語能力~!どうした言語能力!お前何回ちゃんと仕事しろって言ったよ~!何で?何で感想聞いたの?!何で今感想聞いたよ私~!バカなの?本当バカなの?ああ、クソバカですよ!すいません!!


 私は思わず放った自分の言葉に内心でメッタメタに自分を罵倒する。しかし、その言葉を聞いたエレオノはようやく自分のやっている事に気が付いたらしく、理解と共に一気に顔を真っ赤にして「ちっ、ちが!」と言葉に鳴らない声を発しながら、ズザザザッ!と、後ずさる。そして、その行為に周りの皆もようやく再起動を果たしアリシアと瑠璃の二人が、後ずさったエレオノの肩を同時にポンポンッ!と叩く。


「あぅ、その、ち、ちがっ、ひっ!ごっ!ごめんなさい!」


「ふふ、良いですよエレオノそんなに怖がらないで下さい」


「そうですよエレオノちゃん?ちょっと、お話ししましょ?」


 二人は聖女の様な慈愛の微笑みを浮かべながも、その目は全くと言って良い程笑ってない。いや、笑ってないどころか無だ。その瞳には何の感情も無いようだった。そして、二人に見詰められたエレオノは真っ赤になった顔を真っ青にして、今まで妖艶な光を灯していた瞳に、今度は今にも溢れんばかりの涙が溜まっている。そんなエレオノは二人に手を捕まれ、地面を引きずられながら遠ざかって行く様は、私には生け贄にされた人間の様に写り、助けを求める目に顔を背けるしか無かった。


 すまんエレオノ。それは無理!


 私の心の声が聞こえたのかエレオノは絶望の表情を浮かべて連れて行かれたのだった。


「美少女に汚れを舐めて浄めさせるとはなかなか良い身分だな?次は私がやってやろうか?」


「別に良いけど、次にあの位置に行くのはお前だぞ?」


 私は、仁王立ちしている二人の前に正座させられ、そのまま土下座してしながら必死に謝っているエレオノを見ながらそう言う。


 しかし、この場合謝られるのはあの二人で無く私ではないのだろうか?ペロペロされたのは私だし?まあ、役得だったと思っておこう。今あの二人を止めるのは怖いしね!


「それは怖いな。それで、何が起こったんだ?」


「それは私が知りたい」


 いや、マジで。


 今も必死に土下座するエレオノに「羨まし・・・ではなくはしたない!」とか、「ズルい、じゃなくてとにかくもぉ~」とか、言っているのを眺める。


 何だろうか?一番最初に羨ましいとか、ズルいとか、妬ましいとか、聞こえる気がするんだが?うん。気のせいだね!遠いからそんな風に聞こえるんだよね?そうだよね?!


「主様、あれはおそらく吸血鬼化の影響じゃ」


「「吸血鬼化?」」


「あっ、そうだった!クー詳しく教えてくれないかな!」


「それは我よりも、本人に聞いた方が良いと思うのじゃ」


「確かにね」


 でも、あれは暫く終わらなく無い?


「取り敢えず一旦休息取ろう。このまま行っても足手まといだ」


「そうだな。一度状況を整理するか」


「じゃあ、その前にっと」


 私の提案に澪が乗ったので、私は先に【喰吸.魂】を使いグロスの腕を取り込んでおく。


『シルフィン:あっ!ハクア!待ちなさい!』


 えっ?


 スキルを使い腕を取り込んだ瞬間、駄女神の声が響き私の意識は一気に暗闇の中へと落ちて行った。



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