前のエピソード

ゴブリンから頑張る神の箱庭～最弱からの成り上がり～

リーズン

人形如きに苦戦するとはーーー

　カーチスカの攻撃を回避出来ないと悟ったエレオノは、目をやられない様に閉じながら【魔闘技】と【闘気】を全開に、何とかカーチスカの攻撃を持ちこたえ様と身を縮め衝撃に備える。

　ドゴォォオォオ！

　しかし、轟音が鳴り響く中幾ら待ってもエレオノの身体に衝撃は来なかった。不思議に思いながらも目をそっと開けると、そこにはヘルの後ろ姿が見えた。

「何とか間に合いましたね」

　ヘルは【結界】と、その身体を使いカーチスカの攻撃を何とか受けきる。しかし、カーチスカの攻撃は凄まじくヘルの【魔道鋼殻】をもってしてもダメージは大きく、膝を付いてしまう。そんなヘルに向いカーチスカは更なる追撃を掛け様と、もう一度先と同じ攻撃を放とうとする。だが、その攻撃は空から飛来したフレイムブラストにより中断される。

「ちっ！」

　ドゴォオオ！舌打ちと共に魔法を避けたカーチスカ。だが、その避けた先の地面からは先端の尖った石の槍が襲い掛かる。しかし、カーチスカは風魔法で自身を浮かせ石槍を避けると、鞭を振るいその石槍を根本から鞭で切断する。同時に、もう一本の鞭で石槍を掴み、上空を飛ぶ魔法を放った人物ーーーアリシアとアクアにその槍を投げ付ける。

　いきなりの攻撃に焦りはしたものの、アクアは素早く飛ぶのを止め、重力による落下で石槍を避ける。そして、再び羽を動かし滑空しながらエレオノ達に近付いて来る。

「エレオノ遅くなりました」

「お待たせゴブ」

「ハクア達は？」

「マスターと澪は後からです。足の早い我々が先行して帰って来ました」

「わかった」

　それだけ聞いたエレオノは簡単に今の状況を説明する。とはいえ言う事は「るりがフロストの変わりを勤めてる！」の一言だ。それだけで状況を理解したヘル達は、こちらに向かって来る姿を見付けて降りて来たクーをコロの援護に回し、それと同時にヘルが傷付いた戦闘服等を【魔創】のスキルや回復系スキルで修復しながら「ガーゴイルは空中戦が出来る私とアクアが引き受けます」と、言うのでガーゴイルを任せ。当初の計画通りアリシア、エレオノでカーチスカと戦う事になったのだった。

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
　ヘル達が帰還した事で自由になったクーは、コロと二人で敵の対処に当たる。当初の計画では、HPが無く回復の要らないクーとヘルで組む予定だったが、敵の勢力に飛行型のモンスターが居た為、急遽編成を変え空中戦闘が出来る二人にガーゴイルを任せ、コロと二人フードの男を見据える。

「コロ、あやつとやってみてどうじゃった？」

「・・・・ボク的には魔法も厄介ではあるけど、それ以上にあの身体能力の方が厄介かな」

　コロの言う通り、フードの男の筋肉はオーガの様に膨れ上がっている。この世界ではステータスに敏捷の項目も在るため、行動が阻害されそうな筋肉や、体の大きな者もステータスさえあればひたすら速い者が居る。早く言ってしまえばこの世界では恐竜でも、アクションゲーム並の速さで行動出来るため、大きさ＝脅威度と言う簡単な目安にもなる。目の前に居るローブの男は正にそのタイプで在り、大型モンスター並の力と動物の様な俊敏性に加え、多種多様な魔法とデバフまで使いこなしていた。

「少しやりあった感じだと、あの目と体は別々で動いてる見たいかな？魔法はあの目が撃ってるみたい」

「了解じゃ」

　それだけ言うと、コロは向かって来た火球を切り裂き接近していく。再び接近してくるコロに向い、ローブの男は剣技【乱れ撃ち】を放とうと構える。だがその攻撃を放つ直前、コロの後ろからクーの放ったダークボールが、コロの事を追い抜きフードの男の目の前で弾ける、すると弾けたダークボールはそのまま黒い霧の様になり視界を隠す。

　それでも、慌てた様子も無くフードの男はバックステップでコロとの距離を取り、霧の中から何かが出て来る様に霧が動いた瞬間、剣技【乱れ撃ち】を放つ。だが、霧の中から現れ【乱れ撃ち】が攻撃したのは、クーがダークボールの直ぐ後に放った、ダークネスアローだった。空中でダークネスアローと【乱れ撃ち】が激突し、双方の攻撃が相殺し合う。

　【乱れ撃ち】を放った直後の硬直したタイミングで、ダークボールの霧に紛れ後ろに回り込んだコロは斧技【蒼天破斬】を大剣で放つ。しかし、その攻撃が当たる瞬間、ローブの男の腹から覗く目が紅く光る。その瞬間、コロは金縛りにあったかの如く一瞬動きを阻害される。そして、ローブの男の剣が霞む程の速さでコロへと迫る。

　しかし、その攻撃はいつの間にか近付いて来ていたクーの【魔法拳】の一撃で、軌道を逸らされコロの肩を浅く切り裂くに留まる。

　そして、コロは振り抜いた直後にフードの男の顔を蹴技【豪脚】で蹴り抜きその反動を堪える事無く、推進力にして吹き飛ぶ事で何とか間合から抜け出す。しかし、コロの【豪脚】で首が中程で引きちぎれ皮で垂れ下がって要るだけにも関わらず、その直後にまたも目が紅く光りコロに向い六つの火球が迫る。反動で吹き飛びながらも【疾風刃】で、火球を四つ迄は切り裂く、同時にクーが一つだけ何とか間に合い叩き落とすが、二つ目は迎撃が間に合わずコロへと向かう。

　ドゴォ！避けられないと判断したコロは、咄嗟に大剣を盾に火球を受け止めるが、その衝撃に空中に在った体は更に吹き飛ばされ地面をバウンドしながら転がって行く。

「コロ！」

　コロが魔法を喰らい吹き飛ばされ、ローブの男から目を離してしまうクー。その一瞬に巨体とは思えぬ俊敏性で、クーとの間合いを一気に詰め、その突進力をそのまま力に変え、剣技【パワースイング】がクーを襲う。

　それに気が付いたクーは何とか【結界】による防御に間に合うーーーが、パリィイ！硬質な何かが砕ける様な音と共に【結界】は砕けてしまう。だが、それも想定の内だったクーはその僅かな隙に、何とか体と剣との隙間に杖を潜り込ませる。が、バキッ！という音と同時に【パワースイング】がクーの体の左側を撃ち据えコロの方へと吹き飛ばす。攻撃が杖に当たる瞬間に、衝撃を逃がすように自ら跳んだクーだったが、その余りの威力に左腕は一瞬で粉々に砕けてしまった。

「クー・・・大丈・・夫？」

「コロこそ平気か？しかし、つくづく弱さを実感するのじゃ。まさか、人形如きに苦戦するとはーーー」

　【高速再生】で、腕を修復しつつローブの男を見るクーは、自嘲気味に呟く。コロとしては何とも言えず、何時もの様に苦笑いで返す。

「しかし、それぞれは強力じゃが同時には動かん様じゃな」

「うん。それに魔法で視界を塞いだ時は、反応が少し遅れたけど。ボクが顔を攻撃した時は直ぐに攻撃してきたかな」

「うむ。どうやら本体はあの目で間違いない様じゃな。恐らくは人間の身体に寄生している感じなのじゃろう。頭が無くても行動出来る事から体を攻撃しても、あの目をどうにかせん限り戦闘は終らんのじゃ」

「だね」

　話している最中にもローブの男は、皮だけで繋がっていた首を完全に引きちぎり捨て去っていた。そして、またも目が紅く光り今度は辺りを霧が包み込もうとする。

　クーは霧が辺りを全て包み込む前に、地面へとダークネスブラストを放ち、その爆風で辺りの霧を散らして行く。だが、そのせいで位置が判明してしまったクーに向い、ローブの男の剣技【閃光】が放たれる。しかしその瞬間、クーは確かにその口をニィ！と歪め嗤うのをローブの男は見た。それもその筈、このローブの男の攻撃はクーが自らを囮にする事で、攻撃するように仕向けた物だったからだ。そして、そのタイミングでコロは、クーの事を攻撃してきたローブの男を横から大剣技【烈空】を放ち攻撃する。

「えっ？」

「なんじゃと！？」

　しかし、コロの【烈空】がローブの男に当たると思われた瞬間、技の発動中にも関わらず目が紅く光り【結界】とウインドカッターの二つで威力を殺し、コロの【烈空】を防ぎきる。

　その今までと違う対応に多少動揺しながらも、クーは後ろに飛びダークネスブラストを二つ放つ。その内の一つは・・・・・・・、ローブの男の顔の脇を・・・・・・・・・・霞め後方の・・・・・空に飛んでいき・・・・・・・。もう一つは迫るローブの男の、正面に当たりその爆風でお互いの距離を無理矢理稼ぐ。

(まさか、同時に使えたとは油断したのじゃ)

　至近距離の爆風に晒され至る所に傷を負いながらも見詰める先では、同じく吹き飛んだローブの男に向い、コロが大剣技を駆使しながらローブの男と切り結んで居る。

(さて、どうやって攻略するかじゃな？に、しても気持ち悪いのじゃ)

「ゴブリンから頑張る神の箱庭～最弱からの成り上がり～」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメントを書く