異世界転生(仮題)
序曲(プレリュード)
「失礼します!クリシュテット卿!王女殿下のご容態が急変いたしました!!」
「何!…くっ、間に合わんか。すぐに行く!」
入ってきた騎士にそう伝え、上着だけ着替えて王宮へと向かう。
扉を出るときに彼女と目が合う。
「…お主もついてきてくれるか?」
「え、は、はい」
言葉は質問だったが、有無を言わさぬ迫力に思わず返事をしてしまう。
「クリシュテット卿。この者は?」
「わしの客人だ。一応こやつも連れて行くが、よいな」
「わかりました」
え、いいの?自分で言うのもなんだけどこんな得体の知れない人物を王族のいる城に連れて行っていいの?
そんなことを思いながら騎士の方を見てると、視線に気づいたのかこちらに目を向け、少し苦笑した。
ああ、苦労してるんだな。
なんとなく親近感が湧いた。
どちらにせよついて来いとのことなので、さすがに走ることはないがかなり急いで向かうカーラについて行った。
◇ ◇ ◇ ◇
「こちらです」
案内された部屋の前に着き、騎士の人がノックする。
コンコン
「クリシュテット卿をお連れいたしました」
「入れ」
中に入ると、高級感あふれる広い部屋に結構な人が集まっていた。全員、ベッドに横たわる王女殿下に悲愴な面持ちを向けていた。
天蓋付きのベッドの側でアリスが横たわる王女殿下の手を握っており、その傍らで涙を浮かべて椅子に座るおそらく王妃であろう女性とその女性に、おそらく国王であろう人物が沈痛な面持ちで寄り添っていた。ベッドの反対側で白衣を着た老人と白のローブを着た魔法士が悔しげに立っていた。少し離れた位置には、グランさんとミッシェル、見知らぬ三人の人物が同じく悲愴な面持ちで王女殿下を眺めていた。
「テル!お主なぜここへ?」
部屋に入ってきた俺に気づき、グランさんは目を見開いて聞いてくる。隣にはディレーネさんもいて、驚いたようにこちらを見ていた。
「む?グラン殿はこやつのことを知っておるのか?」
「ええ、今私の屋敷に迎えている家族同然の人物だ」
何を言ってるんですかね、この人は?
しれっと家族同然と言ってるよ。嬉しいけどさ。
「そうなのか!チッ、グラン殿に先を越されたか」
悔しそうにカーラさんが呟くが、聞かなかったことにする。
「グラン、そやつは?」
王がこちらを見て怪訝そうに聞いてきた。
「こやつは以前話した、アリスとミッシェルが賊に襲われた際に救ってくれた、テル・ウィスタリアという者だ」
「おお、こやつがか……。してカーラ、なぜ連れてきた?」
「勘かのう?」
「お主の勘はよく当たるとはいえ、部外者を連れてくる者でもなかろう」
王の問いに脱力しそうになる返答を返すカーラに対して、見知らぬ人物の一人が、叱るように言ってくるが当の本人は全く聞いていなかった。ベッドに近づき、白衣を着た老人に問うた。
「王女殿下の容体は?」
その問いに老人は瞼を閉じ、答えた。
「衰弱が激しく、回復魔法もほとんど効いていない状態です。……保って1日でしょう」
「そんな……!」
その答えに涙を流しながら、王妃はベッドにすがりつく。
そのとき、王女殿下が弱々しい声で口を開いた。
「お、かあ…様……お父様…アリス………ミッシェル」
「フィーリア!」
「フィーリア!」
「フィー!」
「フィーリア様!」
その声に反応する。あまりの弱々しさにその時が刻一刻と迫ってることを感じさせられた。
「わたし……幸せ、だったよ。………お母様と……お父様………アリス…ミッシェルに…出会えて……幸せ…だった、よ」
「何を言う!これから先まだまだたくさん幸せなことが待ってるぞ!」
そう国王が返すが、王女は困ったように微笑むだけだった。
「たった…14年しか、生きられなかった……けど………こんなにも…愛されて、たくさん…の人に……泣いて、もらえて幸せだった」
「ダメだよ、フィー!生きてよ!」
「アリ、ス……ミッシェル………友達になって…くれて……ありが、とう」
その言葉にミッシェルが泣き崩れる。
「お母…様………お父様……大好きです」
王女の言葉にこの場にいる全員が涙を流し、悔しそうに拳を握る。
「何弱気なこと言ってんのよ、フィー!!」
アリスの声にグランさんが止めようとするが、アリスは続けた。
「このまま死ぬなんて許さない!ずっと一緒にいるって約束したじゃない!!」
「…………」
「これから先、笑ったり泣いたり怒ったりした時、フィーやミッシェルのどちらかがいないなんて、嫌だよ」
……………。
「わたしを……私たちを置いていかないでよ」
………………………。
「…………嫌、だ」
…………………ああ。
「いやだよう。怖いよ……まだみんなと一緒にいたいよう……」
……………なんなんだ。
王女が泣きながら怯えたように訴える。
「………死にたくない」
泣き崩れていたミッシェルがその言葉を聞き、立ち上がりこちらへ向かってくる。
目の前まで来るといきなり土下座をした。
「厚かましいお願いだと言うことは重々承知です!ですが!どうか、どうか!フィーリア様を救っていただけないでしょうか!」
なんなんだ、これは。
「何!…くっ、間に合わんか。すぐに行く!」
入ってきた騎士にそう伝え、上着だけ着替えて王宮へと向かう。
扉を出るときに彼女と目が合う。
「…お主もついてきてくれるか?」
「え、は、はい」
言葉は質問だったが、有無を言わさぬ迫力に思わず返事をしてしまう。
「クリシュテット卿。この者は?」
「わしの客人だ。一応こやつも連れて行くが、よいな」
「わかりました」
え、いいの?自分で言うのもなんだけどこんな得体の知れない人物を王族のいる城に連れて行っていいの?
そんなことを思いながら騎士の方を見てると、視線に気づいたのかこちらに目を向け、少し苦笑した。
ああ、苦労してるんだな。
なんとなく親近感が湧いた。
どちらにせよついて来いとのことなので、さすがに走ることはないがかなり急いで向かうカーラについて行った。
◇ ◇ ◇ ◇
「こちらです」
案内された部屋の前に着き、騎士の人がノックする。
コンコン
「クリシュテット卿をお連れいたしました」
「入れ」
中に入ると、高級感あふれる広い部屋に結構な人が集まっていた。全員、ベッドに横たわる王女殿下に悲愴な面持ちを向けていた。
天蓋付きのベッドの側でアリスが横たわる王女殿下の手を握っており、その傍らで涙を浮かべて椅子に座るおそらく王妃であろう女性とその女性に、おそらく国王であろう人物が沈痛な面持ちで寄り添っていた。ベッドの反対側で白衣を着た老人と白のローブを着た魔法士が悔しげに立っていた。少し離れた位置には、グランさんとミッシェル、見知らぬ三人の人物が同じく悲愴な面持ちで王女殿下を眺めていた。
「テル!お主なぜここへ?」
部屋に入ってきた俺に気づき、グランさんは目を見開いて聞いてくる。隣にはディレーネさんもいて、驚いたようにこちらを見ていた。
「む?グラン殿はこやつのことを知っておるのか?」
「ええ、今私の屋敷に迎えている家族同然の人物だ」
何を言ってるんですかね、この人は?
しれっと家族同然と言ってるよ。嬉しいけどさ。
「そうなのか!チッ、グラン殿に先を越されたか」
悔しそうにカーラさんが呟くが、聞かなかったことにする。
「グラン、そやつは?」
王がこちらを見て怪訝そうに聞いてきた。
「こやつは以前話した、アリスとミッシェルが賊に襲われた際に救ってくれた、テル・ウィスタリアという者だ」
「おお、こやつがか……。してカーラ、なぜ連れてきた?」
「勘かのう?」
「お主の勘はよく当たるとはいえ、部外者を連れてくる者でもなかろう」
王の問いに脱力しそうになる返答を返すカーラに対して、見知らぬ人物の一人が、叱るように言ってくるが当の本人は全く聞いていなかった。ベッドに近づき、白衣を着た老人に問うた。
「王女殿下の容体は?」
その問いに老人は瞼を閉じ、答えた。
「衰弱が激しく、回復魔法もほとんど効いていない状態です。……保って1日でしょう」
「そんな……!」
その答えに涙を流しながら、王妃はベッドにすがりつく。
そのとき、王女殿下が弱々しい声で口を開いた。
「お、かあ…様……お父様…アリス………ミッシェル」
「フィーリア!」
「フィーリア!」
「フィー!」
「フィーリア様!」
その声に反応する。あまりの弱々しさにその時が刻一刻と迫ってることを感じさせられた。
「わたし……幸せ、だったよ。………お母様と……お父様………アリス…ミッシェルに…出会えて……幸せ…だった、よ」
「何を言う!これから先まだまだたくさん幸せなことが待ってるぞ!」
そう国王が返すが、王女は困ったように微笑むだけだった。
「たった…14年しか、生きられなかった……けど………こんなにも…愛されて、たくさん…の人に……泣いて、もらえて幸せだった」
「ダメだよ、フィー!生きてよ!」
「アリ、ス……ミッシェル………友達になって…くれて……ありが、とう」
その言葉にミッシェルが泣き崩れる。
「お母…様………お父様……大好きです」
王女の言葉にこの場にいる全員が涙を流し、悔しそうに拳を握る。
「何弱気なこと言ってんのよ、フィー!!」
アリスの声にグランさんが止めようとするが、アリスは続けた。
「このまま死ぬなんて許さない!ずっと一緒にいるって約束したじゃない!!」
「…………」
「これから先、笑ったり泣いたり怒ったりした時、フィーやミッシェルのどちらかがいないなんて、嫌だよ」
……………。
「わたしを……私たちを置いていかないでよ」
………………………。
「…………嫌、だ」
…………………ああ。
「いやだよう。怖いよ……まだみんなと一緒にいたいよう……」
……………なんなんだ。
王女が泣きながら怯えたように訴える。
「………死にたくない」
泣き崩れていたミッシェルがその言葉を聞き、立ち上がりこちらへ向かってくる。
目の前まで来るといきなり土下座をした。
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