たった一つの願いを叶えるために
呼び出し(拉致)
翌日、俺は豪華な馬車に乗っていた。
……縄で拘束された状態で。
「お主には聞きたいことが山ほどある。大人しく私についてきてもらう」
対面に座る初老の女性が言った。
今日は記念すべき開店初日になるはずだったのに……。
「……どうしてこうなった」
◆ ◆ ◆ ◆
遡ること1時間前ーー
店に来た俺は、商品の最終チェックを済ませたあと、いよいよ店をオープンさせた。
ただ、冒険者に知り合いなんておらず、ましてや人通りが少ない場所でオープンした店に人が来るはずもなく、カウンターでのんびりしていた。
たまに店の外の通りに人を見かけるが、入店してくるお客さんはいなかった。
「人も来ないし、ポーションでも作ろうかな?」
そう思い立ってカウンターを出て店の奥へ行こうとしたとき、店に慌てて駆け込んでくる人がいた。
「ああ!良かった。いらっしゃった!」
その人物は、冒険者ギルドの受付嬢のロンナさんだった。
なんとなく昨日の出来事を思い出すが、気にせず話しかける。
「おや、ロンナさん。そんなに慌ててどうしました?」
「すいません。ちょっと冒険者ギルドまで一緒に来てください!」
「え、でも、店を空けるわけには…」
「緊急なんです!お願いします!」
「わ、わかりました」
ロンナさんのあまりの必死なお願いに頷いてしまう。
するとすぐに手を掴まれ、連れていかれる。
「あの、店まだ閉めてないんですけどぉ」
「そんなことより急いでください!」
店の戸締りすらできず、ギルドに連れてかれた。
人が来なかったとはいえ、誰もいない店を開けっぱなしにするのは、盗んでくださいと言っているようなものである。
ロンナさんは焦っているのか、とにかく一刻も早くテルを連れて行きたいようだ。
〈店の立地に関してはこの際置いておくとして、オープンして数十分で店主不在ってどうなんですか?〉
(いや、俺にそう言われても…)
〈それにまた「そんなこと」って言われてましたね〉
(きっと急いでたからで、本意ではないはずだよ………たぶん)
夢というほど大げさなものではないとはいえ、二度も言われるのは地味に傷つく。
テルが落ち込んでいるのにロンナは不思議そうにするが特に聞いてきたりはしなかった。
冒険者ギルドに向かうと何やらギルドの目の前にたくさんの騎士がいて、野次馬もたくさん集まっていた。
ギルドで何かあったのか?う〜ん、すっごい嫌な予感がする。
「ロンナさん、やっぱりギルドに行かなくていいですか?」
「何を言ってるんですか?ダメに決まっています」
ですよねー。手を振り切るのは簡単だがそれをするとさらに面倒なことになりそうだな。大人しくついていくしかないかぁ。
ギルドの目の前に着き、騎士に道を開けてもらい中へ入る。
「戻りました、ギルドマスター!」
「おお!連れてきたか、ロンナ」
「ふむ、そやつがガインズが言っておった青年か?」
中に入り、ロンナさんがギルドマスターを呼ぶとガインズともう一人、貴族のような服装の女性がきた。
「はい、そうです」
「そうか。こやつを連れて行け」
「はっ!」
その女性は護衛であろう騎士たちにそう指示した。
「ええ?!ちょっ、まっ!」
指示を受けた護衛は俺を縄で拘束し、豪華な馬車に乗せた。
先ほどの女性も乗り、馬車は出発した。
そして、冒頭に戻る。
◇ ◇ ◇ ◇
「ええと、これから私は牢屋にでも入れられるのでしょうか?」
相手は貴族と思われるので、敬語で質問をしてみる。
「いいや、牢屋に入れないぞ。お主は犯罪者ではないであろう」
「ではなぜ拘束されているのですか?」
そう聞くと、女性は思い出したかのように言う。
「おお、そうだった。そうだった。少々逃げられたくなかったのでな」
理由を答えた後、護衛の騎士に指示し拘束を解いた。
「聞きたいことについてはとりあえず、目的地に着いてからにしよう」
しばらくすると目的地に着いたようで馬車が停止した。
馬車を降りると目の前には見覚えのある建物があった。
目的地って、城?
「ほれ、ボーッとしてないで行くぞ」
声を掛けられ、慌てて着いていく。
「今からわたしの研究室に案内する」
そう言って城に隣接する、かなりの大きさの建物に入った。
広い建物内を歩いて行き、1つの広めの部屋に入る。中には研究に使う機材が所狭しと置かれており、資料やら何やらが少し散らかっていた。
女性は椅子を持ってきてテルに座るように勧めて、自分も座った。
「さて、まずは自己紹介からしようかの。わたしはクリシュテット公爵家現当主、カーラ・ノア・クリシュテットだ」
……縄で拘束された状態で。
「お主には聞きたいことが山ほどある。大人しく私についてきてもらう」
対面に座る初老の女性が言った。
今日は記念すべき開店初日になるはずだったのに……。
「……どうしてこうなった」
◆ ◆ ◆ ◆
遡ること1時間前ーー
店に来た俺は、商品の最終チェックを済ませたあと、いよいよ店をオープンさせた。
ただ、冒険者に知り合いなんておらず、ましてや人通りが少ない場所でオープンした店に人が来るはずもなく、カウンターでのんびりしていた。
たまに店の外の通りに人を見かけるが、入店してくるお客さんはいなかった。
「人も来ないし、ポーションでも作ろうかな?」
そう思い立ってカウンターを出て店の奥へ行こうとしたとき、店に慌てて駆け込んでくる人がいた。
「ああ!良かった。いらっしゃった!」
その人物は、冒険者ギルドの受付嬢のロンナさんだった。
なんとなく昨日の出来事を思い出すが、気にせず話しかける。
「おや、ロンナさん。そんなに慌ててどうしました?」
「すいません。ちょっと冒険者ギルドまで一緒に来てください!」
「え、でも、店を空けるわけには…」
「緊急なんです!お願いします!」
「わ、わかりました」
ロンナさんのあまりの必死なお願いに頷いてしまう。
するとすぐに手を掴まれ、連れていかれる。
「あの、店まだ閉めてないんですけどぉ」
「そんなことより急いでください!」
店の戸締りすらできず、ギルドに連れてかれた。
人が来なかったとはいえ、誰もいない店を開けっぱなしにするのは、盗んでくださいと言っているようなものである。
ロンナさんは焦っているのか、とにかく一刻も早くテルを連れて行きたいようだ。
〈店の立地に関してはこの際置いておくとして、オープンして数十分で店主不在ってどうなんですか?〉
(いや、俺にそう言われても…)
〈それにまた「そんなこと」って言われてましたね〉
(きっと急いでたからで、本意ではないはずだよ………たぶん)
夢というほど大げさなものではないとはいえ、二度も言われるのは地味に傷つく。
テルが落ち込んでいるのにロンナは不思議そうにするが特に聞いてきたりはしなかった。
冒険者ギルドに向かうと何やらギルドの目の前にたくさんの騎士がいて、野次馬もたくさん集まっていた。
ギルドで何かあったのか?う〜ん、すっごい嫌な予感がする。
「ロンナさん、やっぱりギルドに行かなくていいですか?」
「何を言ってるんですか?ダメに決まっています」
ですよねー。手を振り切るのは簡単だがそれをするとさらに面倒なことになりそうだな。大人しくついていくしかないかぁ。
ギルドの目の前に着き、騎士に道を開けてもらい中へ入る。
「戻りました、ギルドマスター!」
「おお!連れてきたか、ロンナ」
「ふむ、そやつがガインズが言っておった青年か?」
中に入り、ロンナさんがギルドマスターを呼ぶとガインズともう一人、貴族のような服装の女性がきた。
「はい、そうです」
「そうか。こやつを連れて行け」
「はっ!」
その女性は護衛であろう騎士たちにそう指示した。
「ええ?!ちょっ、まっ!」
指示を受けた護衛は俺を縄で拘束し、豪華な馬車に乗せた。
先ほどの女性も乗り、馬車は出発した。
そして、冒頭に戻る。
◇ ◇ ◇ ◇
「ええと、これから私は牢屋にでも入れられるのでしょうか?」
相手は貴族と思われるので、敬語で質問をしてみる。
「いいや、牢屋に入れないぞ。お主は犯罪者ではないであろう」
「ではなぜ拘束されているのですか?」
そう聞くと、女性は思い出したかのように言う。
「おお、そうだった。そうだった。少々逃げられたくなかったのでな」
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「聞きたいことについてはとりあえず、目的地に着いてからにしよう」
しばらくすると目的地に着いたようで馬車が停止した。
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