予備自衛官が戦争に駆り出される惨状

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第5話 〝クーガーの車内にて〟

 司令官の話が終わり、日本海側に派遣はけんするための『チヌーク』が着陸している北宇都宮きたうつのみや駐屯地ちゅうとんちへと向かうため、『96式装輪装甲車』に乗車した。その薄暗い車内では、ほかの予備自衛官らが話をしていた。

「なあ、聞いたか?新国立競技場の爆発、あれロシア製のC4らしいぜ。」

 僕は、決して盗み聞きをしているのわけではないのだが、この話は驚いた。新国立競技場の爆発は、事故ではなく事件。さらに、他国からの攻撃の可能性もあるということだ。そういえば、開会式直前のニュースで何らかの理由で北朝鮮きたちょうせんちゅうごくロシアの首脳が出席出来ない、と言っていた。僕には、あやしいとしか思えない。ただ、作者には推理能力は存在しないし、推理小説に転換する気も無いので、この話はここで終わりにするとしよう。
 ところで、僕は『北宇都宮駐屯地』とはどのような場所か分からなかった。なので、誰とも話していなかったとなりの人に聞いた。

「あの、北宇都宮駐屯地って知ってますか?」
「ん?いや、知らん。」

で、ですよね~。即答そくとうで答えられました…
 すると、その会話を耳にしたのか、向かいに座っていた人が言った。

「私、北宇都宮駐屯地、知ってますよ。知らないですか?教えて差し上げましょう!」

ちょっと、フレンドリーなのは気になるが、教えてくれるなら教えてもらおう。

「え?そうですか?教えて下さい。」
「えっと…北宇都宮駐屯地っていうのは、陸上自衛隊の訓練用ヘリコプターが置かれていて、滑走路かっそうろもある駐屯地です。他には…あっ、SUBARUの機を製造、整備したり修理することができる工場もあります。そんな程度しか知らないですね。」

意外と、詳しいところまで教えてくれた。だが、その人はまだこちらを見ている。まだ、話したいのだろうか。だが、僕にはそうは思えない。なぜかって?その人は、若干だが鋭い目をしているからだ。
 ぼ、僕は何かしただろうか…こ、怖いわわけじゃないよ。あまり、人と関わってないから。今頃だけど、怖そうな人だな…まずい、とりあえず、聞くしかない!

「えっと、えー。何かしました?」
「分かっていないようですね。」

分かっていないとは?僕の記憶にはございません。
 僕は、かなり考えた。だが、やはり浮かんでこない。しびれをきらしたのか、向かいの人が続けた。

「私は、機と言ったのです。ようするに、陸上自衛隊だけでなく、海上自衛隊、航空自衛隊等の自衛隊管轄かんかつのヘリをすべて担当してると言うことを言いたかったのです。」

 あ、文法エラーではなく論理エラーでしたか。つまり、言葉の“あや”というやつですね。

「あ!成程なるほど。いやぁ、気付かなかったぁ。口喧嘩でもしたら勝てないや。」

とりあえず、めておいた。一応、自分なりに褒めたのだがどうだっただろうか。

「ハハハ!今回は、私の勝ちですね。」

 なんか、気付かぬ内に勝負が始まっていたらしい。まあ、丸く収まってよかったと僕は思った。ただ、あの人は負けず嫌いなのかな?とか思ったが、質問するのはもう少し仲が良くなってからでも良いだろうと声には出さなかった。

「そういえば、自己紹介をしていませんでしたね。私は、根岸ねぎし鯖妥せいたです。名前が難しくてですね、魚の“さば”に“妥協だきょう”の“妥”です。よろしく!」

相手が、自己紹介をしてくれた。正直、どのように自己紹介に入れば良いか分からなかったので、とても助かった。恐らく、栃木県が好きなのだろう。住んでいたのか?
そういえば、と僕は自己紹介をしていなかったことを思い出した。

「あ、鯖妥さんですか。僕は鈴宮國雄です。名前は、難しい方の“くに”に高雄たかおの“雄”です。よろしくお願いします。」

一応、予備自衛官小隊しょうたいの中に話をすることができる人が出来た。とりあえずは、退屈たいくつしないだろう。

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