閃光の勇者 〜転生したら伝説の竜になってました〜

雨猫

第3話 期待の見習い騎士


親父ゲゼルに人間の姿で会って、俺はもう旅立つことを話すと、「他の竜より早くて少し寂しいけど、息子の自立には応援したい親の気持ちだ〜。頑張ってくれ〜」とのことだった。
最後の最後まで威厳のない伝説の竜だったが、俺は本当の親父のように思っていた。
本当の親父で一応合ってるけど・・・。

妹のリーゼルは丁度出掛けてしまっていたようで、親父に伝言を頼んだ。
変に泣かれて行き辛い空気になるのも嫌だしな。
なんだかんだで竜としての生活を満喫していた。







人の少ない場所までは竜の姿に戻って、ネアを乗せて移動した。
城が見え始めた頃に人間の姿で向かった。
竜の巣から人里までは笑えないほど距離があったけど、飛んで行けば早いものだった。

村に入ると、何やら揉め事のようだった。
そこの中心には、揉める男たちを仲介するかつての上官ミレルの姿があった。

「お〜い!ミレル〜!」
「バカ!」

俺の声掛けはネアに制された。

「お前は今かつてのリオンの姿じゃない。なのにミレルのこと知ってるとか変だろ!」

そう、俺は人間にはなれたがレオンに戻ったわけではないのだ。
一度死んだはずのレオンが生き返る、それこそが神の世界で違反なのだ。
突如現れた最強の英雄として君臨しなければならない。だから姿も別人に変えたのだ。

「ん?今俺を呼んだのは君か?」
「あ、すいません。ミレルさんって騎士を目指す中じゃ有名で、ついついお見掛けして声をかけてしまって・・・」

苦し紛れの言い訳のようだったが、ミレルは照れ臭そうにしていたから、信じたようだ。

「そうか、君は騎士を目指しているんだな!ならばあの二人の喧嘩を止めさせてくれ。それが出来たら見習いとして、私から入団を許可させよう」

お、これは上手い具合に話が転んだな。
竜の力ってのもどの程度か知っておきたいしな、腕試しに久々に喧嘩するか!

「おい、力はかなり抑えるんだぞ。お前の今の力は並の人間じゃ一振りで殺すぞ。姿は人間でも、お前は竜だってことを忘れるな」

ネアは俺の耳元で注意を促してきた。
分かってるよそんくらい。伊達に10年間竜になっていたわけじゃない。

「まあ見てろって」

そう言って俺は喧嘩する二人を牽制するため、二人に飛びかかって行った。
その時間わずか1秒。
喧嘩していた二人は息つく暇もなく地面へと突っ伏した。
ミレルは見たこともない驚愕の顔を浮かべていた。

「あれ、俺おかしなことしたかな」
「な、なんだそのスピードは・・・」

スピード?普通だと思ったんだけど・・・。
すると、俺はネアにど突かれた。

「バカ。それこそがリンドブルムの力だ。リンドブルムは閃光竜と呼ばれていて、ものすごい超スピードの移動、攻撃が可能なんだ」

そんなこと理解すらしてなかった。
なんせ俺からしたら"普通のこと"だからだ。

まあ見せたもんは仕方ない。どうせこの力で英雄になるんだし、誰に見せるのが遅いとか早いとか関係ないだろ。
俺はそんな風に開き直っていた。

幸いかは知らんが、喧嘩していた二人も俺に殴られた部分の骨が粉砕しているだけで済んだ。

そして、ミレルは俺に近寄って来て言った。

「さっきは試すような物言いをしたが、是非ともうちの騎士団に来てくれないか」

と。
前世とはまるで対応が違うじゃねえか。
今の自分にヤキモチを焼きつつも、俺は胸を張ってイエスと答えた。







騎士団に入って数日後、ミレルが王に俺のことを報告したのか、俺の情報は城、国、騎士中様々なところに伝達された。

そして、世間から俺は、期待の見習い騎士と呼ばれるようになっていた。

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