コンビニの重課金者になってコンビニ無双する
43話 饅頭喰おう
来客対応をしていたファスだったが、それ程時間を置かずに戻って来た。
少し表情の硬いファスに聞いた。
「どうした?」
すると、ファスは手に持ったものを差し出しながら言った。
「はい、少々お客様が見えられていた様で、要件をお聞きして来ました」
渡して来たモノを確認しながら、ファスの話を聞いた。
「いらっしゃったのは、以前正巳様と会われた事のある"林道重光"様の代理と言う方でした。その手紙には、少々遠回しに書いてありますが、どうやら掛かっている病の"治療薬"が欲しいという事の様です」
……ファスの話を聞きながら手紙を読んでみたが、何故ファスがわざわざ説明をしたのかが、良く分かった。手紙には、こう書いてあった――
『久しいが、元気にしているか。どうやら、かなり評判な店をやっているみたいだが、皆が『何でもある店だ』と言っていた。前もって来てくれた饅頭は美味かった。また一緒に饅頭を喰おう。』
――と、まあかなり意味訳にはなるが、このような事が書かれてあった。
「……いや、"饅頭喰おう"で"薬が欲しい"が伝わるかよ」
思わず突っ込んでいた。
何にせよ、どうやら正巳が土地を買ったお爺さんは、誰かにコンビニの噂を聞いたらしい。『何でもある店』と言っている事からして、新聞やなんかから情報を得たのかも知れない。
「それで、その薬と言うのはどんな薬なんだ?」
その薬が市販されているモノであれば、当然扱っている。風邪薬や咳止め、頭痛薬かと思っていた正巳だったが、ファスの言った言葉を聞いて言葉を失った。
「はい、"治療薬"ですが、どうやら海外で研究開発されたばかりの"試験薬"らしく、当然認可は取れておらず、保険対象外の薬品のようです」
……お爺さんの欲しいのは、そういう薬だった。
普通では手に入らない薬、それを欲しいからこちらにわざわざ手紙を書いて、代理人を立てて求めて来る。恐らく、『何でもある店』と言う事を聞いての行動だろうが、それにしても……
少し心が締め付けられるのを感じながら、ファスに聞いた。
「その代理人はどんな奴だった?」
すると、ファスが言った。
「雑誌の記者でした」
「……そういう事か」
ファスの言葉を聞いて理解した。
ファスが断定したという事は、裏が取れているという事だろう。そして、何故わざわざ記者が代理人の様な事をしているのか……それは、ひとえに"ネタ探し"に違いない。
もしここで正巳が適当な薬をお爺さんに送りでもすれば、炎上のネタとして使用するのだろう。ここで断りでもすれば、同じ様に"見捨てた"として格好のネタになる。
納得していると、ファスが続けた。
「こちらは関連した内容でのご報告となりますが……裏では、ヒトミ様が以前働かれていたコンビニ店の店主による"入れ知恵"もあったみたいです。こちらは記事になる前に、上からの圧力で止まりましたが……中には正巳様の事を『万引き未遂』等と報じようとしていた事もあった様です」
ファスの言葉を聞いて瞬時に反応したのは、ヒトミだった。
「酷いです! あれは私が間違えただけなのに!」
腕をぶんぶんと振っているヒトミに(いや、それがスキャンダルとしては美味いんだろ)と心の中で突っ込んでいたが、あの"セクハラ店長"には少しだけ頭に来た。
そもそも、店長が今回の件で記者に入れ知恵したのは、こちらが治療薬を用意できるとは考えていないからに違いない。記者としてはネタになれば良いのだろうから、用意出来ても出来なくてもしても良いのだろう。
……流石に頭にくる。
「なぁ、その治療薬って入手するのにどれぐらい経費が掛かるんだ?」
感情に揺さぶられ、声が上ずりそうになるのを抑えながら聞いた。すると、口元に僅かに笑みを作ったファスが言った。
「経費は現在算出させていますが、恐らく直接交渉に出向く必要が出て来ると思います」
ファスの言葉を聞いた正巳は、少し考えて口を開いたのだが、またしてもヒトミの方が早かった。手を上げたヒトミは、言った。
「正巳さん、私の稼いだお金を使って下さい!」
……恐らく、自分が各種メディアに露出した際の"収入"の事を言っているのだろう。ヒトミの気持ちを嬉しく思いながらも、言った。
「いや、これは事業の一環――事業拡大の一つだ。少しぐらい費用が掛かっても、それは必要経費に違いない。今回の事は、全て俺が責任を持つ!」
そう言った正巳に対して、ヒトミが抱き着こうとして来たのだが……生憎、寸前ににゃん太が膝の上に滑り込んで来たので、ヒトミには止まるように言った。
若干不満げなヒトミの頭を撫でていると、ファスが言った。
「宜しいのですか?」
恐らく、ファスが言いたいのは"経営的面"を考えての事なのだろう。そんなファスの心配を感じた正巳は言った。
「品揃えが増えれば、さらに便利になるだろうからな。そもそもが、便利なコンビニを作りたいだけなんだから、金は掛かって当然だろう」
そう言い切った正巳に、ファスは『失礼しました』と答えると一歩下がった。心なしか普段よりも機嫌がよさげなファスを横目に、大きくなって来たにゃん太をヒトミと一緒に撫でていた。
……にゃん太は少し大きくなったものの、手足が短いのは変わらなかった。どうやら、にゃん太は手足の短い種類の猫らしかった。
にゃん太をしばらく撫でた後、ヒノキにコンビニの機械化を依頼した。
すると、ヒノキは――
『了解しました。今の所、商品は全て強化ガラスに入った棚に入れて置き、商品の棚にタッチした上で商品を取ると、取った分だけ請求されるようなシステムにしようと考えています。クレジットカードを持っていない方用には、入り口でお金をカードに入れて貰い、そのカードで商品を購入。帰る際に残高の清算を行う様にすれば良いでしょうね……分かりました。導入の為の準備に入ります!』
――と言って、受注してくれた。
その後、少ししてからファスが『治療薬調達の為の"経費算出"が終わりました』と言って来た。確認すると、どうやら金額的にはこれ迄掛かった金額の中でも、土地購入に次ぐ高額出費となりそうだった。
ヒノキに依頼している"コンビニ建設"に関しては、将来的な費用を入れると恐らく出費としては最高額になりそうではあったが、瞬間出費としては比較にならないだろう。
ファスの『交渉は四日後、通訳は私が行います』と言う言葉を聞きながら、ヒトミに一緒に行くか聞いた。すると、暫く迷っていたが『すみません、シフトが入っているので……』と言っていた。
真面目な様子に感心しながら、『そうか、それじゃあ俺はファスと行ってくるから、その間はよろしくな』と答えた。
ヒトミは、その後しばらく哀しそうな顔をしていたが、正巳が『今度一緒に何処かに行けばよいだろう。それこそ、機械化が進めば余裕が出来るだろうしな』と言うと、元気を取り戻したみたいだった。
その日は、夕方から当番だと言うヒトミと共に早い夕食を食べると、ファスと共に今後の機械化の計画を練り始めた。
課題は『ヒトミや店員目的の客が引いた時の顧客獲得』だった。
「恐らく、今後何処かのタイミングで客が引く事は避けられないだろうから、新たな仕掛けとブランディングが必要になるよな……」
「仰る通りかと思います。考えられる方法としては、"最先端の店舗"としての広告と、広く顧客を取る――配達を始めるという事でしょうか」
「そうだな。広告は兎も角として、配達……機械による配達は考える必要があるだろうな。ファス、お前の知っている中で優秀な"エンジニア"はいないか?」
「優秀な"エンジニア"ですか……少々お待ちください」
その後、ファスが『久し振りだな、以前は世話になった。……いや、今回は兵器の依頼じゃなくて、エンジニアとして雇われるつもりは無いかと言う話なのだが……』――と何やらスカウトを始めたのを横で聞きながら、如何にかなりそうだと少し安心していた。
その後、そう言えば店員の子達から『ファス様と夕食へ是非』と誘われていた事を思い出し、慌ててコンビニの最上階――彼女達の住み込んでいる部屋へとお邪魔した。
……その夜は、食べ過ぎたお腹を擦りながら帰宅する事になったが、正巳以上に沢山食べたにもかかわらず何でも無さそうな顔をしているファスに『運動を少々しておりますので』と聞いて、自分も運動をしようと心に誓ったのであった。
少し表情の硬いファスに聞いた。
「どうした?」
すると、ファスは手に持ったものを差し出しながら言った。
「はい、少々お客様が見えられていた様で、要件をお聞きして来ました」
渡して来たモノを確認しながら、ファスの話を聞いた。
「いらっしゃったのは、以前正巳様と会われた事のある"林道重光"様の代理と言う方でした。その手紙には、少々遠回しに書いてありますが、どうやら掛かっている病の"治療薬"が欲しいという事の様です」
……ファスの話を聞きながら手紙を読んでみたが、何故ファスがわざわざ説明をしたのかが、良く分かった。手紙には、こう書いてあった――
『久しいが、元気にしているか。どうやら、かなり評判な店をやっているみたいだが、皆が『何でもある店だ』と言っていた。前もって来てくれた饅頭は美味かった。また一緒に饅頭を喰おう。』
――と、まあかなり意味訳にはなるが、このような事が書かれてあった。
「……いや、"饅頭喰おう"で"薬が欲しい"が伝わるかよ」
思わず突っ込んでいた。
何にせよ、どうやら正巳が土地を買ったお爺さんは、誰かにコンビニの噂を聞いたらしい。『何でもある店』と言っている事からして、新聞やなんかから情報を得たのかも知れない。
「それで、その薬と言うのはどんな薬なんだ?」
その薬が市販されているモノであれば、当然扱っている。風邪薬や咳止め、頭痛薬かと思っていた正巳だったが、ファスの言った言葉を聞いて言葉を失った。
「はい、"治療薬"ですが、どうやら海外で研究開発されたばかりの"試験薬"らしく、当然認可は取れておらず、保険対象外の薬品のようです」
……お爺さんの欲しいのは、そういう薬だった。
普通では手に入らない薬、それを欲しいからこちらにわざわざ手紙を書いて、代理人を立てて求めて来る。恐らく、『何でもある店』と言う事を聞いての行動だろうが、それにしても……
少し心が締め付けられるのを感じながら、ファスに聞いた。
「その代理人はどんな奴だった?」
すると、ファスが言った。
「雑誌の記者でした」
「……そういう事か」
ファスの言葉を聞いて理解した。
ファスが断定したという事は、裏が取れているという事だろう。そして、何故わざわざ記者が代理人の様な事をしているのか……それは、ひとえに"ネタ探し"に違いない。
もしここで正巳が適当な薬をお爺さんに送りでもすれば、炎上のネタとして使用するのだろう。ここで断りでもすれば、同じ様に"見捨てた"として格好のネタになる。
納得していると、ファスが続けた。
「こちらは関連した内容でのご報告となりますが……裏では、ヒトミ様が以前働かれていたコンビニ店の店主による"入れ知恵"もあったみたいです。こちらは記事になる前に、上からの圧力で止まりましたが……中には正巳様の事を『万引き未遂』等と報じようとしていた事もあった様です」
ファスの言葉を聞いて瞬時に反応したのは、ヒトミだった。
「酷いです! あれは私が間違えただけなのに!」
腕をぶんぶんと振っているヒトミに(いや、それがスキャンダルとしては美味いんだろ)と心の中で突っ込んでいたが、あの"セクハラ店長"には少しだけ頭に来た。
そもそも、店長が今回の件で記者に入れ知恵したのは、こちらが治療薬を用意できるとは考えていないからに違いない。記者としてはネタになれば良いのだろうから、用意出来ても出来なくてもしても良いのだろう。
……流石に頭にくる。
「なぁ、その治療薬って入手するのにどれぐらい経費が掛かるんだ?」
感情に揺さぶられ、声が上ずりそうになるのを抑えながら聞いた。すると、口元に僅かに笑みを作ったファスが言った。
「経費は現在算出させていますが、恐らく直接交渉に出向く必要が出て来ると思います」
ファスの言葉を聞いた正巳は、少し考えて口を開いたのだが、またしてもヒトミの方が早かった。手を上げたヒトミは、言った。
「正巳さん、私の稼いだお金を使って下さい!」
……恐らく、自分が各種メディアに露出した際の"収入"の事を言っているのだろう。ヒトミの気持ちを嬉しく思いながらも、言った。
「いや、これは事業の一環――事業拡大の一つだ。少しぐらい費用が掛かっても、それは必要経費に違いない。今回の事は、全て俺が責任を持つ!」
そう言った正巳に対して、ヒトミが抱き着こうとして来たのだが……生憎、寸前ににゃん太が膝の上に滑り込んで来たので、ヒトミには止まるように言った。
若干不満げなヒトミの頭を撫でていると、ファスが言った。
「宜しいのですか?」
恐らく、ファスが言いたいのは"経営的面"を考えての事なのだろう。そんなファスの心配を感じた正巳は言った。
「品揃えが増えれば、さらに便利になるだろうからな。そもそもが、便利なコンビニを作りたいだけなんだから、金は掛かって当然だろう」
そう言い切った正巳に、ファスは『失礼しました』と答えると一歩下がった。心なしか普段よりも機嫌がよさげなファスを横目に、大きくなって来たにゃん太をヒトミと一緒に撫でていた。
……にゃん太は少し大きくなったものの、手足が短いのは変わらなかった。どうやら、にゃん太は手足の短い種類の猫らしかった。
にゃん太をしばらく撫でた後、ヒノキにコンビニの機械化を依頼した。
すると、ヒノキは――
『了解しました。今の所、商品は全て強化ガラスに入った棚に入れて置き、商品の棚にタッチした上で商品を取ると、取った分だけ請求されるようなシステムにしようと考えています。クレジットカードを持っていない方用には、入り口でお金をカードに入れて貰い、そのカードで商品を購入。帰る際に残高の清算を行う様にすれば良いでしょうね……分かりました。導入の為の準備に入ります!』
――と言って、受注してくれた。
その後、少ししてからファスが『治療薬調達の為の"経費算出"が終わりました』と言って来た。確認すると、どうやら金額的にはこれ迄掛かった金額の中でも、土地購入に次ぐ高額出費となりそうだった。
ヒノキに依頼している"コンビニ建設"に関しては、将来的な費用を入れると恐らく出費としては最高額になりそうではあったが、瞬間出費としては比較にならないだろう。
ファスの『交渉は四日後、通訳は私が行います』と言う言葉を聞きながら、ヒトミに一緒に行くか聞いた。すると、暫く迷っていたが『すみません、シフトが入っているので……』と言っていた。
真面目な様子に感心しながら、『そうか、それじゃあ俺はファスと行ってくるから、その間はよろしくな』と答えた。
ヒトミは、その後しばらく哀しそうな顔をしていたが、正巳が『今度一緒に何処かに行けばよいだろう。それこそ、機械化が進めば余裕が出来るだろうしな』と言うと、元気を取り戻したみたいだった。
その日は、夕方から当番だと言うヒトミと共に早い夕食を食べると、ファスと共に今後の機械化の計画を練り始めた。
課題は『ヒトミや店員目的の客が引いた時の顧客獲得』だった。
「恐らく、今後何処かのタイミングで客が引く事は避けられないだろうから、新たな仕掛けとブランディングが必要になるよな……」
「仰る通りかと思います。考えられる方法としては、"最先端の店舗"としての広告と、広く顧客を取る――配達を始めるという事でしょうか」
「そうだな。広告は兎も角として、配達……機械による配達は考える必要があるだろうな。ファス、お前の知っている中で優秀な"エンジニア"はいないか?」
「優秀な"エンジニア"ですか……少々お待ちください」
その後、ファスが『久し振りだな、以前は世話になった。……いや、今回は兵器の依頼じゃなくて、エンジニアとして雇われるつもりは無いかと言う話なのだが……』――と何やらスカウトを始めたのを横で聞きながら、如何にかなりそうだと少し安心していた。
その後、そう言えば店員の子達から『ファス様と夕食へ是非』と誘われていた事を思い出し、慌ててコンビニの最上階――彼女達の住み込んでいる部屋へとお邪魔した。
……その夜は、食べ過ぎたお腹を擦りながら帰宅する事になったが、正巳以上に沢山食べたにもかかわらず何でも無さそうな顔をしているファスに『運動を少々しておりますので』と聞いて、自分も運動をしようと心に誓ったのであった。
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