コンビニの重課金者になってコンビニ無双する
34話 少し疲れてるだけ
宿に着いた一同だったが、正巳はその駐車場を見て驚いていた。
「……おいおい、こんなモノ停めとくなよ」
そこには、車三台分ほどの大きさのヘリが停まっていた。
普通のヘリと比べると少し羽が多い気がしたが、空を飛ぶ事には変わりない。
少し皴を寄せて『邪魔になるといけないから、早めに退かさないとな』と言うと、ファスが『申し訳ありません』と言って続けた。
「緊急でしたので、今回は"マルチ"で駆け付けました。ただ、普段使いには邪魔かと思いますので、後ほど取りに来させます。直ぐに周囲の安全を確認しますので、安心してこのままお待ち下さい」
そう言って、駐車場の端の方に車を止めたファスを見て、正巳はため息を吐きながら呟いた。
「……どうやって、安心しろって言うんだよ」
ファスは車を止めると外に出てしまったので、正巳の言葉は届いていなかった。
後ろに座っていたヒトミが『どうしたんですか、不安なことが有るんですか~?』と聞いて来たので『あぁ、実はにゃん太の心の声が聞こえてな、どうやら寂しくて死にそうらしいんだ』――とふざけたのだが……どうやらヒトミは、良い意味でも悪い意味でも純粋だったみたいだ。
「ええっ! それは早く部屋に迎えに行ってあげないと!」
慌てたヒトミが、転びそうになりながらも宿へと走って行く姿を見て、少し申し訳なくなった。未だに車の中に居た正巳だったが、ファスが扉を開いたので礼を言って降りた。
どうやら、ファスは周囲の警戒をしていたらしい。
「すまんな、ヒトミが先に宿に入っちゃったが」
「……いえ、私がお守りするのは正巳様ですので」
何処か伺うような表情を見せながら言って来た。
本心なのかは分からないながらも、きっぱりと言い切ったファスに言った。
「もし俺を"護衛"するのであれば、同じ様に俺の仲間に対してもしてくれ。いや、それ以上に仲間には気を使ってくれ」
正巳がそう言っても、首を縦に振らないファスに続ける。
「俺のせいで危険な目に会うのであれば、俺は一人でいなきゃいけなくなるからな。それに、もし人質にでも取られたりしたら、きっと面倒な事になる」
すると、ファスが頷かないまでも言った。
「お考えは分かりました」
そこで一度言葉を切ると、続けた。
「私は正巳様を最優先に考えますが、同じ様にお仲間もお守りする事にします」
何か言おうとした正巳だったが、その表情を見て無駄だと悟った。
「今はそれで良いか……さぁヒトミが先に行ったからな、向かうか!」
そう言って歩き出した正巳に、ファスは『ご用命のままに』と言うと後ろに従った。
――
宿に入ると女将が出て来た。
女将は、正巳とファスを見比べてから『あら、やっぱり……』と呟いていたが、そこから話を広げたらろくでもない事になる気がしたので、聞き流して言った。
「ヒトミ――先に来た女性は中に?」
「はい、そうだと思います」
少し頬を染めている女将に礼を言うと、部屋へと向かった。
その後、長い廊下を抜けて部屋の前まで来たのだが……
「何やってるんだ?」
「シッ! 静かにして下さい」
部屋のドア、下の部分に張り付いているヒトミに声を掛けると、何故か人差し指を口の前に立て、『喋るな!』と言われてしまった。
普段から少し変わった娘だが、部屋の前で何をしているのだろうか。
「……ほら、やっぱり向こうににゃん太が居ます!」
そう言ったヒトミは、ドアを指で"カリカリ"とし始めた。
放っておくと、暫くこのままになりそうだったので、言った。
「このまま外に居ても良いが、俺はこうして外で"カリカリ"するんじゃなくて、にゃん太と触れ合いたいから中に入るぞ」
正巳がそう言うと、ヒトミが一瞬指を口元に持って行きかけるが、正巳の言った言葉の意味が分かったのか口を半開きにして固まった。
可笑しな様子のヒトミを横目にドアのロックを解除すると、それ迄静かに視線を向けていたヒトミが言った。
「なんで早く言ってくれないんですかぁ、正巳さんのあほー!」
勢いよくドアを開こうとするヒトミを抑えながら、『バカっ、内開きだから向こうににゃん太が居たら怪我するだろっ!』と言うと、興奮していたのが一気に冷静になり終いには落ち込んでいた。
ドアの向こうには、確かににゃん太が居た。
にゃん太は、ドアを開くと直ぐに足に飛び付き、そのままよじ登って来た。
「どうしたぁ? なんだ、お腹が空いてるのかぁ?」
にゃん太が手を舐める様子を見た正巳は、部屋の中へと歩いて行き、にゃん太のご飯を確認した。すると、ネコ缶も水も全く手を付けた様子が無かった。
「お前、ご飯食べて無かったのか?」
「みゃぁ」
「ほら、ココに有るんだぞ?」
「みゃぁぁ」
……ご飯の隣ににゃん太を降ろすも、直ぐに正巳の元へとトテトテと歩いて来る。何となく昔の自分を思い出した正巳は、にゃん太に言った。
「なんだ、お前も寂しかったのか。そうかぁ、ごめんな置いて行って」
実際はどうか分からないが……にゃん太が、寂しくて不安で溜まらなかったのでは無いかと思って、その不安を払うべくにゃん太の事を沢山撫でてやった。
数分後、ようやく落ち着いて来たにゃん太は、ご飯の匂いに気が付いたらしく、正巳の手からネコ缶の方へと歩いて行った。
にゃん太がネコ缶を食べている途中、水を新しいものに変えた。
ふと、自分とにゃん太以外に部屋の中に居ない事に気が付いて、入口へと歩いて行った。するとそこには、未だに入り口で座り込んでいじけているヒトミと、何故か部屋の外で廊下へと視線を向けて立っているファスが居た。
「おい、ファスは外に居ても仕方ないから、中に入ってくれ」
「承知しました」
ファスに中で適当に寛ぐように言って、問題の少女に目を向けた。
「ヒトミは、少し落ち着きを持って行動した方が良いと思うぞ?」
「すみません……」
「そうだな、女将を手本にしたら良いかもな」
「女将さんですか?」
「ああ、落ち着いてるし大人の女性だろ?」
「おとなの女性……」
しばらく何か考えていたが、やがて顔を上げて聞いて来た。
「正巳さんは、大人の女性の方が良いですか?」
そう言ったヒトミの意図はよく分からなかったが、子供の女性よりは大人の女性の方が良いに決まっているので、深くは考えずに答えた。
「そうだな」
するとヒトミは『そうですか……』と呟いた後、ゆっくりと一呼吸してから言った。
「それでは、中へと参りましょうぞ。正巳殿」
……一瞬錯乱したかと思ったが、余りに真面目な様子だったので、突っ込めなかった。その後息を吹き返したヒトミは、暫く食事中のにゃん太を優しく撫でていたが、部屋の隅で立っていたファスが音を立てずに近づいて来て耳打ちした。
「正巳様、何か言葉遊びをされているのでしょうか?」
(可笑しな事を聞いて来るなぁ)
――と思いながら、『そんな事はしてないが、何でだ?』と聞き返した。
「いえ、不思議な話し方になったヒトミ様を見て、具合が悪いのではと……」
どうやら、口調の可笑しな事になっているヒトミを、心配していたらしい。
「大丈夫だ、少し疲れてるだけなんだ」
その後正巳とファスは、『あら、あんよがお上手ね、ねこちゃんさん』とか『あらぁ、お腹沢山なのかしらぁ?』とか言っているヒトミを、少し離れて見守っていた。
「……おいおい、こんなモノ停めとくなよ」
そこには、車三台分ほどの大きさのヘリが停まっていた。
普通のヘリと比べると少し羽が多い気がしたが、空を飛ぶ事には変わりない。
少し皴を寄せて『邪魔になるといけないから、早めに退かさないとな』と言うと、ファスが『申し訳ありません』と言って続けた。
「緊急でしたので、今回は"マルチ"で駆け付けました。ただ、普段使いには邪魔かと思いますので、後ほど取りに来させます。直ぐに周囲の安全を確認しますので、安心してこのままお待ち下さい」
そう言って、駐車場の端の方に車を止めたファスを見て、正巳はため息を吐きながら呟いた。
「……どうやって、安心しろって言うんだよ」
ファスは車を止めると外に出てしまったので、正巳の言葉は届いていなかった。
後ろに座っていたヒトミが『どうしたんですか、不安なことが有るんですか~?』と聞いて来たので『あぁ、実はにゃん太の心の声が聞こえてな、どうやら寂しくて死にそうらしいんだ』――とふざけたのだが……どうやらヒトミは、良い意味でも悪い意味でも純粋だったみたいだ。
「ええっ! それは早く部屋に迎えに行ってあげないと!」
慌てたヒトミが、転びそうになりながらも宿へと走って行く姿を見て、少し申し訳なくなった。未だに車の中に居た正巳だったが、ファスが扉を開いたので礼を言って降りた。
どうやら、ファスは周囲の警戒をしていたらしい。
「すまんな、ヒトミが先に宿に入っちゃったが」
「……いえ、私がお守りするのは正巳様ですので」
何処か伺うような表情を見せながら言って来た。
本心なのかは分からないながらも、きっぱりと言い切ったファスに言った。
「もし俺を"護衛"するのであれば、同じ様に俺の仲間に対してもしてくれ。いや、それ以上に仲間には気を使ってくれ」
正巳がそう言っても、首を縦に振らないファスに続ける。
「俺のせいで危険な目に会うのであれば、俺は一人でいなきゃいけなくなるからな。それに、もし人質にでも取られたりしたら、きっと面倒な事になる」
すると、ファスが頷かないまでも言った。
「お考えは分かりました」
そこで一度言葉を切ると、続けた。
「私は正巳様を最優先に考えますが、同じ様にお仲間もお守りする事にします」
何か言おうとした正巳だったが、その表情を見て無駄だと悟った。
「今はそれで良いか……さぁヒトミが先に行ったからな、向かうか!」
そう言って歩き出した正巳に、ファスは『ご用命のままに』と言うと後ろに従った。
――
宿に入ると女将が出て来た。
女将は、正巳とファスを見比べてから『あら、やっぱり……』と呟いていたが、そこから話を広げたらろくでもない事になる気がしたので、聞き流して言った。
「ヒトミ――先に来た女性は中に?」
「はい、そうだと思います」
少し頬を染めている女将に礼を言うと、部屋へと向かった。
その後、長い廊下を抜けて部屋の前まで来たのだが……
「何やってるんだ?」
「シッ! 静かにして下さい」
部屋のドア、下の部分に張り付いているヒトミに声を掛けると、何故か人差し指を口の前に立て、『喋るな!』と言われてしまった。
普段から少し変わった娘だが、部屋の前で何をしているのだろうか。
「……ほら、やっぱり向こうににゃん太が居ます!」
そう言ったヒトミは、ドアを指で"カリカリ"とし始めた。
放っておくと、暫くこのままになりそうだったので、言った。
「このまま外に居ても良いが、俺はこうして外で"カリカリ"するんじゃなくて、にゃん太と触れ合いたいから中に入るぞ」
正巳がそう言うと、ヒトミが一瞬指を口元に持って行きかけるが、正巳の言った言葉の意味が分かったのか口を半開きにして固まった。
可笑しな様子のヒトミを横目にドアのロックを解除すると、それ迄静かに視線を向けていたヒトミが言った。
「なんで早く言ってくれないんですかぁ、正巳さんのあほー!」
勢いよくドアを開こうとするヒトミを抑えながら、『バカっ、内開きだから向こうににゃん太が居たら怪我するだろっ!』と言うと、興奮していたのが一気に冷静になり終いには落ち込んでいた。
ドアの向こうには、確かににゃん太が居た。
にゃん太は、ドアを開くと直ぐに足に飛び付き、そのままよじ登って来た。
「どうしたぁ? なんだ、お腹が空いてるのかぁ?」
にゃん太が手を舐める様子を見た正巳は、部屋の中へと歩いて行き、にゃん太のご飯を確認した。すると、ネコ缶も水も全く手を付けた様子が無かった。
「お前、ご飯食べて無かったのか?」
「みゃぁ」
「ほら、ココに有るんだぞ?」
「みゃぁぁ」
……ご飯の隣ににゃん太を降ろすも、直ぐに正巳の元へとトテトテと歩いて来る。何となく昔の自分を思い出した正巳は、にゃん太に言った。
「なんだ、お前も寂しかったのか。そうかぁ、ごめんな置いて行って」
実際はどうか分からないが……にゃん太が、寂しくて不安で溜まらなかったのでは無いかと思って、その不安を払うべくにゃん太の事を沢山撫でてやった。
数分後、ようやく落ち着いて来たにゃん太は、ご飯の匂いに気が付いたらしく、正巳の手からネコ缶の方へと歩いて行った。
にゃん太がネコ缶を食べている途中、水を新しいものに変えた。
ふと、自分とにゃん太以外に部屋の中に居ない事に気が付いて、入口へと歩いて行った。するとそこには、未だに入り口で座り込んでいじけているヒトミと、何故か部屋の外で廊下へと視線を向けて立っているファスが居た。
「おい、ファスは外に居ても仕方ないから、中に入ってくれ」
「承知しました」
ファスに中で適当に寛ぐように言って、問題の少女に目を向けた。
「ヒトミは、少し落ち着きを持って行動した方が良いと思うぞ?」
「すみません……」
「そうだな、女将を手本にしたら良いかもな」
「女将さんですか?」
「ああ、落ち着いてるし大人の女性だろ?」
「おとなの女性……」
しばらく何か考えていたが、やがて顔を上げて聞いて来た。
「正巳さんは、大人の女性の方が良いですか?」
そう言ったヒトミの意図はよく分からなかったが、子供の女性よりは大人の女性の方が良いに決まっているので、深くは考えずに答えた。
「そうだな」
するとヒトミは『そうですか……』と呟いた後、ゆっくりと一呼吸してから言った。
「それでは、中へと参りましょうぞ。正巳殿」
……一瞬錯乱したかと思ったが、余りに真面目な様子だったので、突っ込めなかった。その後息を吹き返したヒトミは、暫く食事中のにゃん太を優しく撫でていたが、部屋の隅で立っていたファスが音を立てずに近づいて来て耳打ちした。
「正巳様、何か言葉遊びをされているのでしょうか?」
(可笑しな事を聞いて来るなぁ)
――と思いながら、『そんな事はしてないが、何でだ?』と聞き返した。
「いえ、不思議な話し方になったヒトミ様を見て、具合が悪いのではと……」
どうやら、口調の可笑しな事になっているヒトミを、心配していたらしい。
「大丈夫だ、少し疲れてるだけなんだ」
その後正巳とファスは、『あら、あんよがお上手ね、ねこちゃんさん』とか『あらぁ、お腹沢山なのかしらぁ?』とか言っているヒトミを、少し離れて見守っていた。
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