龍の魔道士
第四話 『謎の美少女』
 少女が訝しげにリュウキを見る中、リュウキは少女に対して場違いに見惚れていた。
   胸元辺りまで伸びた金髪に整った顔立ち。柔らかな面差しには美少女特有の美しさに加え、幼ささえ漂わせている。輝く空色の瞳は見つめれば吸い込まれそうになるほど神秘的だ。年齢は同じくらいか。身長は平均的で黒と白を主とした仕立てのいい服で身を包んでおり、花の飾り物がより一層彼女の魅力を引き立てている。
   一通りリュウキを観察したのか、少女は立ち会った少年への対応に頭を悩ませているようだった。
「あの……」
   気まずさに耐えきれなかったからか、なんとリュウキから話しかけた。
   この行いに一番驚いたのはリュウキ自身だった。コミュ力レベルは間違いなく最底辺のリュウキだ。しかもこんな美少女。現実なら気持ち悪いほどキョドって悪い汗をかき、美少女を引かせていただろうに。
   リュウキの声に小さく肩を揺らした少女だったが、
「あ、うん。どうしたの?」
   少年と会話することを許したのだろう。        
   表情にも紡がれた声にも安堵が浮かんでいる。
   流石美少女、と思えるほどの美しい声にリュウキは表情がこわばりつつもなお、声を掛ける。
「君がそこに立っていたからどうしたのかなって」
   リュウキがこれまでのコミュ力レベルからは到底思えないほど自然と会話を続ける。心臓はバクバクとやかましく鳴り響いているのに、声に震えはない。
「あ、そういうことね」
   少女は納得の声を上げ、己の髪に触れながら目を伏せた。
「どったの? ここって魔法学校でしょ?」
   君もここに用があってきたんじゃないのか?という言葉を告げる前に少女は彼の言葉に食いつき、
「やっぱりアルタナス学院の場所ってここで合ってるのね!?」
   と、高貴なイメージから一転、年相応の可愛らしさを見せながら声を荒らげた。
「いや、地図見、て来たからこ、ここが正解かはわかんねぇけど……それにアルなんちゃらってのもよく分かんねぇし」
   いきなり美少女に顔を近づけられ、最初こそタジタジになりつつも声の調子を戻しながら答える。
   リュウキは方向音痴ではないし、地図さえあれば目的地には迷わずつくタイプだ。だが、ここは異世界。中世風ともあって細い裏路地なんかも所々あったので、ここが本当に正解かはわからないーーと?
「あれ? 君の言い方だともしかして……」
   リュウキは自分の疑問を口にする。まるで確認するかのように、あるいは自分の間違いを認めたくないがために意地を張るように発していた彼女の言葉。
   その疑問の答えを察したからか少し苦い顔をしながら少女は、
「うん、あなたが考えているとおり、私もアルタナス学院がここかどうかわからないの」
   と、声の調子を弱くして言い放った。
「君もわかんないの!?」
「しょ、しょうがないでしょ ︎ 私ここ初めて来たんだし……あ、あのその……そ、それにあなただってここがアルタナス学院かどうか分からないんでしょ!?」
   少女はリュウキの発言にくってかかって言い訳をする。が、そこに覇気はなく、凛としているという印象は可愛げのあるという印象に塗り替えられてしまった。「あー」とか「うー」と言い訳を悩んでいる所にも可愛げがある。
   そんな彼女の態度にリュウキは毒気を抜かされる。ポンコツ美少女、と言うのだろうか。
コンビニ店員との会話ばかりしていたリュウキには、美少女との会話はかなりハードルの高いものと考えていたが、どうにか話せそうだ。とゆうか、話さないとかなり今後が辛いことを察する。
引きこもりではあるが、そんな重度なものでは無い。コンビニには数回行くし、どちらかと言うと不登校よりなのだろう。とリュウキは心の中で判断する。
「ま、まぁ、それはそうなんだけどもね。ご、ごめん」
「本当に反省してるのかしら」
弱い調子で反省の声を上げるリュウキに、彼女は疑いの目を向けてくる。が、リュウキが本当だと念に言うと、すぐに疑惑の目は消えた。
「それにしてもあなた珍しい格好ね……黒い髪もその服も……私の知り合いにそんな格好の人いないのよ。一体どこから来たの?」
   少女はリュウキの頭から足先まで見ながら問いかける。異世界ファンタジーお決まりの言葉が告げられたことに、リュウキは高揚する。
「テンプレ的には東のちーっちゃい国、だな」
   と、異世界ネタ特有のパターンで返す。しかし、少女はリュウキの答えに眉を上げて驚く。
「この国より東に国なんてないわよ? あったとしても底の見えないって言われてる大峡谷を挟んでいるし……」
「え、うっそ、ここが一番東の国なのかよ!?」
「も、もしかして自分のいる場所もわからないの!?」
   少女は予想外の答えに愕然としている。だが、愕然としているのはリュウキも一緒だ。
「金もねぇし知人もいねぇ……オマケにお決まりの文句も使えねぇと来た……どーすんよこれ」
「ねぇ、待って。今聞いた話だとあなた絶体絶命じゃない?」
   と、少女はそわそわとした態度をとる。見ず知らずの少年にここまで心配をかけてくれる少女に、リュウキは心の中で礼を言う。
「本当に大丈夫? えっと……」
   言葉に詰まった少女の意をリュウキは察した。
「そう言えば名前を名乗ってなかったな。自己紹介しよっか?」
   会話をしているのにお互いに名前を名乗っていなかった。コミュ障にしては多大希なる進歩だ。学生時代の頃のように普通に話せるのかは定かではないが、名前を名乗らないわけにもいかない。
「うん、そう……ね」
   リュウキのニヤついた表情をスルーした少女だが、言葉の歯切れが悪い。 少女はほんの数秒瞑目して口を開く。
「うん、自己紹介しましょ」
   違和感を感じつつもそこに触れないようにした。流石にリュウキもこの状況で雰囲気を乱したりはしない。
「んじゃ、まず俺から。俺はカリヤ・リュウキ。あ、リュウキが名前ね。多分間違われそうだから先に言っとくよ。お察しの通り自分のいる場所もわからず頼れる知人もない。無知無能で無一文さ。てことでよろしくね」
   よくラノベで見る登場人物は名前を先にしていることが多い。このままではカリヤが名前になりそうなので先手で忠告しておいた。
「お察しの通りの所から話すスピードが遅くなってるあたり本当に絶望的なのね……えっと、私の名前は……」
   声のトーンを落とした少女。数秒だけ沈黙が起きる。
「ーーソフィアよ。か、家名はないわ」
   揺れた声音。それは恐怖を持つかのようで、安堵を求めているようにも取れる。しかし、リュウキはそのことに気づかなかった。
「へぇ、いい名前だね。」
「ーーえ」
   少女ーーソフィアは盛大な肩すかしを食らったような表情で目を瞬かせる。
「どうかしたの?」
「え、えっと、私の名前はソフィアよ?」
「お、おう。二度聞かなくてもわかるよ」
   言葉の意図を掴めないリュウキは首を傾げるばかりだ。
   その反応にソフィアは大きく目を開き、リュウキを見つめ、
「そ、そっか。この国の人じゃないんだよね」
   と、リュウキを置いてけぼりにして一人納得していた。
「えっと? 俺なんか置いてけぼりにされてませんかね?」
「え、あ! ううん、違うの。予想が外れてたからびっくりしちゃっただけで……そ、それよりアルタナス学院へ行きましょう! 時間もないわ!」
   少女はリュウキの言葉にビクッと肩を揺らす。しっかりと弁明を入れた上で自身のポケットから時計?を取り出して本来の目的に話の方向を戻した。
「おおお! そうだったそうだった! ソフィア……だよな。早く行かねぇと!」
   リュウキはソフィアの視線の先ーーアルタナス学院に入るための扉へ向けて走り出す。
   振り返った少年に答えるように少女も走り出した。
   胸元辺りまで伸びた金髪に整った顔立ち。柔らかな面差しには美少女特有の美しさに加え、幼ささえ漂わせている。輝く空色の瞳は見つめれば吸い込まれそうになるほど神秘的だ。年齢は同じくらいか。身長は平均的で黒と白を主とした仕立てのいい服で身を包んでおり、花の飾り物がより一層彼女の魅力を引き立てている。
   一通りリュウキを観察したのか、少女は立ち会った少年への対応に頭を悩ませているようだった。
「あの……」
   気まずさに耐えきれなかったからか、なんとリュウキから話しかけた。
   この行いに一番驚いたのはリュウキ自身だった。コミュ力レベルは間違いなく最底辺のリュウキだ。しかもこんな美少女。現実なら気持ち悪いほどキョドって悪い汗をかき、美少女を引かせていただろうに。
   リュウキの声に小さく肩を揺らした少女だったが、
「あ、うん。どうしたの?」
   少年と会話することを許したのだろう。        
   表情にも紡がれた声にも安堵が浮かんでいる。
   流石美少女、と思えるほどの美しい声にリュウキは表情がこわばりつつもなお、声を掛ける。
「君がそこに立っていたからどうしたのかなって」
   リュウキがこれまでのコミュ力レベルからは到底思えないほど自然と会話を続ける。心臓はバクバクとやかましく鳴り響いているのに、声に震えはない。
「あ、そういうことね」
   少女は納得の声を上げ、己の髪に触れながら目を伏せた。
「どったの? ここって魔法学校でしょ?」
   君もここに用があってきたんじゃないのか?という言葉を告げる前に少女は彼の言葉に食いつき、
「やっぱりアルタナス学院の場所ってここで合ってるのね!?」
   と、高貴なイメージから一転、年相応の可愛らしさを見せながら声を荒らげた。
「いや、地図見、て来たからこ、ここが正解かはわかんねぇけど……それにアルなんちゃらってのもよく分かんねぇし」
   いきなり美少女に顔を近づけられ、最初こそタジタジになりつつも声の調子を戻しながら答える。
   リュウキは方向音痴ではないし、地図さえあれば目的地には迷わずつくタイプだ。だが、ここは異世界。中世風ともあって細い裏路地なんかも所々あったので、ここが本当に正解かはわからないーーと?
「あれ? 君の言い方だともしかして……」
   リュウキは自分の疑問を口にする。まるで確認するかのように、あるいは自分の間違いを認めたくないがために意地を張るように発していた彼女の言葉。
   その疑問の答えを察したからか少し苦い顔をしながら少女は、
「うん、あなたが考えているとおり、私もアルタナス学院がここかどうかわからないの」
   と、声の調子を弱くして言い放った。
「君もわかんないの!?」
「しょ、しょうがないでしょ ︎ 私ここ初めて来たんだし……あ、あのその……そ、それにあなただってここがアルタナス学院かどうか分からないんでしょ!?」
   少女はリュウキの発言にくってかかって言い訳をする。が、そこに覇気はなく、凛としているという印象は可愛げのあるという印象に塗り替えられてしまった。「あー」とか「うー」と言い訳を悩んでいる所にも可愛げがある。
   そんな彼女の態度にリュウキは毒気を抜かされる。ポンコツ美少女、と言うのだろうか。
コンビニ店員との会話ばかりしていたリュウキには、美少女との会話はかなりハードルの高いものと考えていたが、どうにか話せそうだ。とゆうか、話さないとかなり今後が辛いことを察する。
引きこもりではあるが、そんな重度なものでは無い。コンビニには数回行くし、どちらかと言うと不登校よりなのだろう。とリュウキは心の中で判断する。
「ま、まぁ、それはそうなんだけどもね。ご、ごめん」
「本当に反省してるのかしら」
弱い調子で反省の声を上げるリュウキに、彼女は疑いの目を向けてくる。が、リュウキが本当だと念に言うと、すぐに疑惑の目は消えた。
「それにしてもあなた珍しい格好ね……黒い髪もその服も……私の知り合いにそんな格好の人いないのよ。一体どこから来たの?」
   少女はリュウキの頭から足先まで見ながら問いかける。異世界ファンタジーお決まりの言葉が告げられたことに、リュウキは高揚する。
「テンプレ的には東のちーっちゃい国、だな」
   と、異世界ネタ特有のパターンで返す。しかし、少女はリュウキの答えに眉を上げて驚く。
「この国より東に国なんてないわよ? あったとしても底の見えないって言われてる大峡谷を挟んでいるし……」
「え、うっそ、ここが一番東の国なのかよ!?」
「も、もしかして自分のいる場所もわからないの!?」
   少女は予想外の答えに愕然としている。だが、愕然としているのはリュウキも一緒だ。
「金もねぇし知人もいねぇ……オマケにお決まりの文句も使えねぇと来た……どーすんよこれ」
「ねぇ、待って。今聞いた話だとあなた絶体絶命じゃない?」
   と、少女はそわそわとした態度をとる。見ず知らずの少年にここまで心配をかけてくれる少女に、リュウキは心の中で礼を言う。
「本当に大丈夫? えっと……」
   言葉に詰まった少女の意をリュウキは察した。
「そう言えば名前を名乗ってなかったな。自己紹介しよっか?」
   会話をしているのにお互いに名前を名乗っていなかった。コミュ障にしては多大希なる進歩だ。学生時代の頃のように普通に話せるのかは定かではないが、名前を名乗らないわけにもいかない。
「うん、そう……ね」
   リュウキのニヤついた表情をスルーした少女だが、言葉の歯切れが悪い。 少女はほんの数秒瞑目して口を開く。
「うん、自己紹介しましょ」
   違和感を感じつつもそこに触れないようにした。流石にリュウキもこの状況で雰囲気を乱したりはしない。
「んじゃ、まず俺から。俺はカリヤ・リュウキ。あ、リュウキが名前ね。多分間違われそうだから先に言っとくよ。お察しの通り自分のいる場所もわからず頼れる知人もない。無知無能で無一文さ。てことでよろしくね」
   よくラノベで見る登場人物は名前を先にしていることが多い。このままではカリヤが名前になりそうなので先手で忠告しておいた。
「お察しの通りの所から話すスピードが遅くなってるあたり本当に絶望的なのね……えっと、私の名前は……」
   声のトーンを落とした少女。数秒だけ沈黙が起きる。
「ーーソフィアよ。か、家名はないわ」
   揺れた声音。それは恐怖を持つかのようで、安堵を求めているようにも取れる。しかし、リュウキはそのことに気づかなかった。
「へぇ、いい名前だね。」
「ーーえ」
   少女ーーソフィアは盛大な肩すかしを食らったような表情で目を瞬かせる。
「どうかしたの?」
「え、えっと、私の名前はソフィアよ?」
「お、おう。二度聞かなくてもわかるよ」
   言葉の意図を掴めないリュウキは首を傾げるばかりだ。
   その反応にソフィアは大きく目を開き、リュウキを見つめ、
「そ、そっか。この国の人じゃないんだよね」
   と、リュウキを置いてけぼりにして一人納得していた。
「えっと? 俺なんか置いてけぼりにされてませんかね?」
「え、あ! ううん、違うの。予想が外れてたからびっくりしちゃっただけで……そ、それよりアルタナス学院へ行きましょう! 時間もないわ!」
   少女はリュウキの言葉にビクッと肩を揺らす。しっかりと弁明を入れた上で自身のポケットから時計?を取り出して本来の目的に話の方向を戻した。
「おおお! そうだったそうだった! ソフィア……だよな。早く行かねぇと!」
   リュウキはソフィアの視線の先ーーアルタナス学院に入るための扉へ向けて走り出す。
   振り返った少年に答えるように少女も走り出した。
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