Messiah

嘉禄(かろく)

Of the doll demanded it



-俺は何のために殺したかった?
    俺はどうしてチャーチを潰そうとした?

時々、あの時の自分が未だに甦ろうとする。
その時に決まって浮かぶのはこの疑問だ。


『貴様にメサイアが殺せるのか』
『メサイア?…あいつは、衛は俺が殺す』


あの時、何度も悪夢を見た。
ローブを被った人間に囲まれる。


『お前は一嶋のクローンだ』
『お前の代わりなどいくらでもいる』
『俺たちがお前に取って代わる』


ローブのフードを取ると、全員同じ顔をしていた。
俺の顔だった。


『お前は死んでもいい人間だ』
『いずれ俺たちが衛のメサイアになる』
『衛は俺たちを選ぶ』
『…やめろ、やめてくれ…!!!』


俺に向かって少しずつ距離を詰めながら語りかけてくる。
それが俺には恐怖でしか無かった。


『嫌だ、来るな…助けて…助けて…!!!』


そこで銃声が響き、周りの俺が全員倒れた。
現れたのは、衛。
そのまま俺に近寄り、手を差し伸べる。
衛の手を取ろうとした時、倒れたはずの俺たちがこっちに銃を向ける。
撃たれる、そう思った時…気づいたら衛が全ての銃弾をその身体で受け止めていた。
俺は驚きすぎて声を失う。
二回目の銃声が響き、衛はまた俺を庇いついに倒れる。
俺は衛に這いつくばって近寄る。


『…衛、衛!目を覚ませ、衛!』


そこでハッと目を覚ます。
実際に叫んでいたようで喉が涸れている。
汗もびっしょりかいている。
けど俺は拭くこともせず震える両手を見下ろした。


「…そうだ…俺は…俺を見て欲しかった…代わりなんかいないと言って欲しかった…愛してると言われたかったんだ…」


それに気づいて、俺はメサイアのいない部屋で一人蹲るしかなかった-



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