Messiah

嘉禄(かろく)

Common love



「…ねえ、伊織」


俺が我儘を言って衛に外に連れ出してもらい、海斗と愛斗と話してから部屋に戻った時のこと。
衛が不意に俺に問いかけた。


「二人に何話してたの?」


何故そんなことを聞くのかは分からないけれど、衛のことなので純粋に気になったのだろう。
隠すことでもないので、俺は正直に答えた。


「…俺に甘えてくれていた、慕ってくれていた頃が好きでしたと伝えました。
海斗も愛斗も、敬語を使って固くなってしまったので」
「…伊織がそれ言うんだ」
「…確かに、盛大なブーメランですね」


苦笑しつつ返すと、衛は不意に俺を後ろから抱きしめた。
抱き締め返しつつ、俺は問いかける。


「衛、どうかしましたか?」
「ううん…なんとなくしたくなった」
「…そうですか」


きっと、衛は俺の心を見透かして抱きしめてくれたんだと思った。
寂しかったのは愛斗と海斗ではなく、俺自身だということに気づいた。
でも、だからこそ何も言わずに抱きしめてくれる。
衛はいつの間にかこんなことまで出来るようになっていた。


「…俺も立ち止まって、後ろばかり向いてはいられませんね」


衛の隣に立ち、衛のメサイアとして誇り高く強くあるために。
俺は衛の腕に手を添わせながら呟いたのだった-



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