Messiah

嘉禄(かろく)

Scene of the church



-どうしてこうなった?


今更頭を抱えても、この状況は変わらない。
俺と水無瀬が女装して(絶対水無瀬違和感ないだろ)メサイアに見せてる、なんて。

事の発端は、双子の突撃だった。


「ねーね、梓音兄ちゃん綺麗じゃん?ちょっと女装してよ、俺たち見たい!」
「…は?」


経緯を尋ねたところ、


『梓音兄さんに敵う美女ってそもそもいるの?』
『…いないね、逆に女装させたら似合うタイプだと思う!』


という会話を二人でしたらしくここに来た、とのことだった。


「…断固拒否する」
「えー、なんでだよー」
「…もしかして一人じゃやだとか?じゃあ打って付けの人呼んでくるよ」


そう言って愛斗が出ていく。
…どうしてこの双子は…というかチャーチの面子は人の話を最後まで聞かないのか。
そして、少しして愛斗が戻ってきた。


「連れてきたよ」


愛斗に続いて入ってきたのは、水無瀬と百瀬さんだった。


「…水無瀬はともかく、なんで百瀬さん?やるんですか?」
「話は聞いたけどやらないわよ、宋流くんに愛斗くんが話してるところに丁度通りかかったらメイクその他諸々頼まれたの」
「…なるほど」


本当は納得したら負けなんだろうけど、もう呆れを通り越した。
なるようになれ、だ。
ここまで固められたら逃げられない。
俺は観念して受けることにした。

そして、約一時間後。
水無瀬は青地に金を散らしたドレス、俺は着物地を使った和と洋の混合のようなドレス(?)を着た。
意外にも着心地は悪くない、というのもスカートじゃないからだろうが。
髪もいじられて、簪が刺さっている。


「じゃあちょっと二人とも待っててねー」


そう言って百瀬さんが出ていく。
嫌な予感しかしない。

そしてドアが再び開いたと思ったら、稲川と雪斗が入ってきた。


「…なるほど、綺麗だな」
「…お、似合うじゃん。
百瀬さんにいいから来なさいって言われた時は何事かと思ったけど、そういうことか」


…やられた、メサイアに見せるなんて…。
正直隠れたい、でも隠れる場所が無い。
せめてもの抵抗で顔を伏せると、雪斗が正面に立って俺の顔を上げた。


「俯くなよ、綺麗にしてもらったんだからよく見せろ」
「な…!」


どうして雪斗はそうやっていつもいつも…!
俺の心臓がもたねーよ!
と、内心思いながら雪斗を半ば睨む。
すると雪斗はニヤッと笑った。
こいつ分かってやがる。


「そんなに涙目で睨んだって可愛いだけだ、しーおん」
「うるせーよ…!」


稲川と水無瀬が和やかに話してたり褒めている隣で俺達はそんなやり取りをしていた。
それは俺にとって思い出したくない出来事一位に見事ランクインしたのだった。




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