Messiah

嘉禄(かろく)

Which is the darkness?



一闇には二面性がある。
    一つは絶望。
    ではもう一つは?


「なあ百瀬、神代の名前って不思議だよな」


ある時、任務終わりで報告を上げてきた雛森がふとそう言った。
言葉の意図が掴めず私は首を傾げた。


「不思議?確かに珍しい名前ではあるけれど…」
「え、思わねーか?
なんで万の夜なんだよ?
そんなの嫌じゃね?」
「ああ、そういうことね…」


雛森が言うのは、明けない夜みたいで嫌じゃないかということみたい。
でも、私はそうは思わなかった。


「確かにそういう考えもあるわね…でも、私はいい名前だと思うわよ…例え照る日の杜に付けられた名前でも」


恐らく、神代くん自身も雛森と同じように思っている。
人々に絶望と悲しみをもたらす闇だと。
雛森が首を傾げたので、私は自分の考えを言うことにした。


「私はね、闇には二面性があると思うの。
一つは雛森が言う通り、絶望をもたらすもの。
もう一つは…安らぎ」
「…安らぎ?」


想定外だったようで、雛森がキョトンとする。
これは徹底的に説明するしか無いわね…。


「ほら、光だけだと照らされ続けたら眩し過ぎるし疲れちゃうでしょ?
夜の闇があれば、人々は休息を得ることが出来る。
私は、神代くんの闇は人々に安らぎを与える闇だと思うの」
「…なるほど、安らぎか…」


確かに彼は太陽ではない。
どちらかと言えば、真っ暗な夜…眠る人々を優しく照らす月だと私は思う。


『…人々の幸せを願う闇、いいと思うわよ?』



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