Messiah

嘉禄(かろく)

Two other self



ある日、俺と蓮がオフの時のこと。
扉をノックする音が聞こえたと思ったら、返事して開けるより前に百瀬さんが入ってきた。
返事を待たないほど火急なのかと思ったら、百瀬さんは明るい表情で俺の目の前に何かを突き出してきた。


「見て、出来たわよ!
お願いされてた、テディベアのメサイアコート!
可愛いでしょ、作るの大変だったのよ」


その手にあったのは、俺と蓮がお互いに買ったテディベアとそのストラップ(メサイアコート着用)だった。
大変だったと言うだけある、ボタンなど細部まで正確に作ってある。
それを俺の後ろから覗いて見た蓮が、テンションを上げてそれらを手に取った。


「凄い、めっちゃ細かいところまでちゃんと作られてる!
ありがとうございます!」
「いいえ、喜んでくれてよかったわ」
「ありがとう百瀬さん」
「どういたしまして、じゃあ解れたりしたら持ってきて。
直してあげるから」


百瀬さんはそう言うと出ていった。
それを見送った蓮は早速部屋のどこに置くか考えていた。


「千、はいストラップ付けといてね。
テディベアはどこに置こうかな…」


それを俺はただ見つめていた。
結果棚の上、写真立ての横に置くことにしたようだ。
ちなみにその写真立てにはみなとみらいに行った時の蓮のピンと俺たちのツーショットが入っている。


「…よし、ここにした!
かわいーなー」


棚に腕をかけてテディベアを見ている蓮は年相応と言った感じで可愛かった。
人は変わるもんだ、俺がこんな事を思うようになるとは。

…けど、あんまりテディベアに熱を上げられても俺が妬く。

そう思って俺は蓮に後ろから手を回して抱きしめた。
蓮は驚いたようで俺を見上げた。


「なに、どうしたの?」
「…どうもしない」
「ほんとに?
…もしかして妬いた?」
「妬いてない」
「…分かりやすいなー、まあ妬いてくれるのは嬉しいからそういうことにしとく」


…不思議だ、表情は変えてないはずなのに蓮にはバレる。


「…妬いたよ、これでいいか」
「…認めた…いや嬉しいんだよ?
千が妬いてくれるくらい俺を大事に思ってくれてるってことだから。
ありがとね」


そう言って蓮は俺の頬に口付けた。
これで気を良くしてしまう俺は、我ながらチョロい…そう悟らざるを得なかった。



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